歴史ある時計ブランド、ブランパンは、機械式時計のみを手掛けることで有名であり、その復興にも尽力してきた歴史がある。世界中に愛好家を持つブランパンの歴史と、その魅力を振り返ってみよう。代表的なコレクションも紹介する。
ブランパンの特徴
ブランパンは、1735年にスイスで誕生した時計ブランドだ。現在に至るまで280年以上もの間、機械式時計を生み出し続けてきた。さまざまな紆余曲折を経て、現在の時計市場でのポジショニングを確立するまでの歴史を、簡単に振り返ってみよう。
歴史ある時計ブランド
35年にジャン=ジャック・ブランパンによってスイスのジュラ山脈に位置するヴィルレで創業されたブランパンは、輝かしい時計製造の歴史を築いてきた。
200年以上にわたる一族経営を経て、1953年にはダイビングウォッチの先駆けである「フィフティ・ファゾムス」、56年にはコンパクトな女性向け腕時計「レディバード」を市場に送り出し、数々の名作時計を生み出してきた。
69年のセイコーによるクォーツ革命の波は、ブランパンの主力であった機械式時計を危機に陥れ、他の多くのスイス時計メーカーと同じく活動を休止せざるを得ない状況に追い込まれた。しかし83年、ジャン-クロード・ビバーとジャック・ピゲの下での買収により、ブランパンは復活を遂げた。
以降、機械式時計の再評価が進む中、ブランパンは既存のモデルの再解釈と新たなコレクションの開発に積極的に取り組み、その分野での地位を確固たるものにしている。
伝統的な機械式時計を製造することへの信念
セイコーによるクォーツ式ムーブメントの登場により、60年代末から70年代にかけて、機械式時計は時代遅れの産物と見なされるようになり、ブランパンは経営危機に陥り、一時的に休業を余儀なくされた。
しかし、ジャン-クロード・ビバー(後にウブロの会長となる)は、休眠状態にあったブランパンを復活させ、あらゆる時計に機械式ムーブメントを搭載することを宣言した。
クォーツ式の大量生産が全盛を極めた時代においても、ビバーは機械式時計の芸術的側面を重視し、その魅力を全面に押し出した。ビバーの指導のもと、ブランパンはラウンドケースの機械式時計のみを製造する方針を採り、複雑機構を搭載した6モデル「シックスマスターピース」や、その技術を集約した「1735」モデルを発表した。
これにより、ブランパンは完全な復活を遂げ、世界最高峰の機械式時計ブランドとしての地位を確立した。
レディース時計のパイオニア
ブランパンはレディース時計のパイオニアとしても、広く知られている。
まずは30年に世界初となる自動巻きのレディースウォッチ「ロールス」を発表。さらに56年にも、当時世界最小となる丸形ムーブメントを搭載した「レディバード」といったコレクションをリリースし、時計好きの多くの女性から好評を得た。
この背景には32年に、時計メーカー初の女性社長として、ベティ・フィスターが就任した点が挙げられる。彼女は、機械式時計の魅力を女性も理解できると確信しており、女性の解放や成功を象徴するシリーズとして「レディバード」を生み出したのだ。
その後も美しい装飾を帯びたデザインで、女性の腕にフィットするサイズとムーブメントの美しさを追求し、ブランドの名を世界的に轟かせることに成功している。
ブランパンが展開する代表コレクション
それでは、ブランパンが展開する代表的なコレクションを紹介しよう。いずれもブランパンを世界的な時計ブランドとして知らしめたシリーズであるため、時計好きならば必ず押さえておきたいところだ。
元祖ダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムス」
まずは、53年に登場したブランドを代表するモデルであり、元祖ダイバーズウォッチとして知られる「フィフティ ファゾムス」コレクションを紹介する。ブランパンの名を知っている人ならば、その名を1度は聞いたことがあるだろう。
開発者であるジャン・ジャック・フィスター自身が、趣味のダイビング中に潜水時間を忘れ、命を危険に晒してしまったことがきっかけとなり、この傑作ウォッチが生み出されたエピソードがある。
耐久性と視認性に優れ、太陽光が届かない水中でも問題なく時刻を確認でき、海軍などにも採用されている。2007年に完全復活したモデルがリリースされた。
歴史的名作の復刻モデル「エアコマンド」
1950年代に発表された軍用時計の復刻モデルだ。当時、アメリカ海軍にダイバーズウォッチを提供していたブランパンが、同時にアメリカ空軍向けのクロノグラフとして製作したものである。
試作品として提供されたものを含めて、当時製作された本数は非常に少なく、現在は時計愛好家でも入手は極めて困難な状況にある。
復刻モデルはヴィンテージスタイルとブランパンの最新技術が融合し、複雑機構のフライバッククロノグラフが搭載されているのが特徴。1度の操作でスムーズに計測を重ねられる。文字盤とベゼルにはディープブルーカラーが採用され、クラシカルな雰囲気と、現代的なスペックの融合が感じられるデザインだ。
正統派ドレスウォッチ「ヴィルレ」
ブランパンの発祥の地である「ヴィルレ」の名を冠した、正統派のドレスウォッチだ。ブランパンが培ってきた伝統と技術、エレガンスさを持つクラシカルなシリーズであり、純粋なシルエットと明瞭な文字盤が共通する特徴となっている。
スレンダーなダブルステップ・ベゼル、セージの葉をかたどった針、独創的なローマ数字のインデックス、随所にブランパンのルーツと美意識が感じられる。
さらにムーブメントの製造分野において、実現してきた最新の開発技術が組み込まれており、アンダーラグコレクターやムーンフェイズなど、美しさに基づいてタイムピースの機能を高める工夫が施されている点にも注目したい。
ブランパンのおすすめメンズ時計
男性におすすめのシリーズもいくつか紹介する。気になるモデルがあれば、デザイン性はもちろん、機能についても詳しくチェックしてみよう。
フィフティ ファゾムス バチスカーフ フライバック クロノグラフ
まずは、2022年に発表された「フィフティ ファゾムス バチスカーフ」の、新バリエーションをチェックしてみよう。最も純度の高いチタンと言われる「グレード23チタン」を採用しており、金属の耐欠損性や耐腐食性を向上させている。控えめな印象のアンスラサイトグレーの文字盤も特徴的だ。
さらに、セラミックス インレイの逆回転防止ベゼルを実装しており、300メートル(30気圧)の防水性能も備えている。ダイアルカラーに応じてNATOストラップと、セイルキャンバスストラップの組み合わせも可能だ。
自動巻き(Cal.F385)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径43mm、厚さ14.9mm)。300m防水。293万7000円(税込み)。
エアコマンド AC02 36B40 63B
1950年代の軍用クロノグラフの流れを踏襲したコレクションで、軍用モデルでありながら上品な雰囲気を漂わせているモデルだ。連続する複数の経過時間を計測できるフライバッククロノグラフと、カウントダウンベゼルの機能を有している。
ケースとバックルに18Kレッドゴールドを使用しており、目を引きやすいブルーの発色と相まって、高級感とモダンな佇まいがうまく融合されている。暗闇での視認性を高める、スーパールミノバを使用したアワーマーカーも特徴的だ。
自動巻き(Cal.F388B)。35石。パワーリザーブ約50時間。18KRGケース(直径42.5mm、厚さ13.7mm)。30m防水。490万6000円(税込み)。
ヴィルレ トラディショナル チャイニーズ カレンダー
2012年にブランパンは初めて、中国の伝統的な暦を搭載したモデルをリリースした。その24年の辰年モデルを紹介しよう。これまで毎年1作ずつ発表しており、該当する年の干支がテーマとなっている。
「グラン・フー エナメル」技法のグリーンダイアルに、通常の日付表示に加えて、太陰太陽暦のカレンダーを確認できる。
ローターにドラゴンの姿が刻まれているなど、細かい部分にも中国風のデザインを感じさせる仕上がりだ。長きに渡るブランパンの時計製作の歴史と、天文学のつながりを想起させるモデルとして注目されている。
自動巻き(Cal.3638)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間。18KRGケース(直径45.2mm、厚さ15.1mm)。30m防水。世界限定50本。1157万2000円(税込み)。
ブランパンで機械式時計の魅力を堪能
ブランパンは、名門時計メーカーとして知られている。1735年にスイスで創業されたこのブランドは、280年以上にわたり機械式時計の製造を続けてきた。
その間、多くの紆余曲折を経験しながらも、現代に至るまで新たなコレクションを発表し続けている。機械式時計を製造することへの信念、そして時計業界での存在感は、世界中に多くのファンを生み出してきた。ブランパンは、これからも新しいシリーズを通じて、時計愛好家たちを魅了し続けるであろう。
参考サイト:https://www.blancpain.com/ja
https://www.webchronos.net/features/77980/
https://www.webchronos.net/features/109758/
https://www.webchronos.net/features/40570/