2024年の新作から、傑作ドレスウォッチを紹介する。シンプルゆえに各社のセンスや思想が如実に表れるドレスウォッチ。今年も個性が際立ったラインナップがそろった。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年4月18日公開記事]
日常使いに適したモデルからマニア垂涎の復刻モデルまで、今年も豊作なドレスウォッチ
かつて、繊細で取り扱いの難しいというイメージが強かったドレスウォッチ。しかし、昨今においてその流れは徐々に変わりつつある。加工精度の向上や新素材の登場が、薄く上品なドレスウォッチを日常使いするという悲願を叶えてくれたのだ。かくして多くの新作が誕生することとなったドレスウォッチは、再び時計界のメインストリームへと回帰しつつある。
チタンやステンレススティール等の実用的な外装を採用したモデルから、往年の名作を復刻したマニア垂涎のモデルまで、今年も各社より技巧を凝らしたドレスウォッチが発表された。今回はその中からいくつかのモデルをピックアップし、紹介する。
パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス」Ref. 5738/1
ラグのないオーバル型ケースを特徴とする「ゴールデン・エリプス」。黄金分割にインスピレーションを得た縦横比を持つケースは、シンプルなドレスウォッチに独創性をもたらし、1969年の誕生以降、同社のアイコンのひとつとして親しまれてきた。
本作は、大型ケースの5738で初となるブレスレット仕様のモデルだ。しなやかなチェーンスタイルのブレスレットは363個のパーツによって構成されており、そのうち300個以上のリンクに関しては、職人の手によってひとつずつ組み上げられている。両開き式のバックルには彫金が施されており、閉じた状態での一体感のあるデザインも特徴だ。
インデックスと時分針が整然と配されたミニマルなソレイユ仕上げのダイアルは、エボニーブラックに彩られている。ケース素材は18Kローズゴールド。薄型のマイクロローター式自動巻きムーブメントCal.240を搭載することによって、ケースの厚みは僅か5.9mmに抑えられている。華やかなシーンにふさわしい、エレガントなパッケージが魅力だ。
自動巻き(Cal.240)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(縦39.5×横34.5mm)。3気圧防水。951万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル」Ref. SLGW003
グランドセイコーの新型手巻きムーブメント、Cal.9SA4を搭載した新作。このムーブメントは、ベースとなったCal.9SA5と同じく、デュアルインパルス脱進機による毎秒10振動のハイビートと約80時間のロングパワーリザーブを特徴としている。単にローターを取り払っただけではなく、新設計のコハゼとコハゼバネを採用することによって、優れた巻き味も追求されている。
外装のデザインは、「セイコースタイル」を発展させたデザイン文法、「エボリューション9スタイル」にならったものである。審美性、視認性、装着性の3つを進化させつつ、日本の美意識に呼応するデザインを与えられている。加えて本作はドレスウォッチとして仕立てられており、これまでのモデルと比べてインデックスやベゼル、ラグ幅を狭めることで、より繊細かつ優美な印象にまとめられている。手巻きムーブメントを搭載することによって、厚さが約10mmに抑えられている点も魅力だ。
ダイアルには、荘厳な白樺林をモチーフとした型押しパターンが刻まれ、光を受けて立体的なきらめきを放つ。
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ10mm)。3気圧防水。145万2000円(税込み)。2024年8月9日(金)発売予定。(問)グランドセイコー専用ダイヤル Tel.0120-302-61
IWC「ポルトギーゼ・オートマティック 40」Ref. IW358402
今年のIWCは、「ポルトギーゼ」コレクションのラインナップを大幅に拡充した。新しい「ポルトギーゼ・オートマティック 40」では、立体的なアラビア数字インデックスやリーフ型の時分針、6時位置のスモールセコンド等の特徴はそのままに、ボックス型のダブルサファイアクリスタルを用いた新設計のケースを採用し、よりエレガントなフォルムへとアップデートされている。
18Kホワイトゴールドケースを採用したモデルでは、鮮やかなホライゾンブルーのダイアルを組み合わせ、ライトブルーのサントーニ社製カーフレザーストラップを装着している。爽やかなカラーリングは、腕元を優しく彩ってくれることだろう。
ケースバックは4本のネジによって固定され、中央のサファイアクリスタルを通してムーブメントを鑑賞することができる。ムーブメントは、自社製自動巻きのCal.82200を搭載。18Kゴールド製のメダリオンを配したローターと、セラミックパーツによって耐摩耗性を高めたぺラトン自動巻き機構を採用している。
自動巻き(Cal.82200)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWGケース(直径40.4mm、厚さ12.4mm)。5気圧防水。275万円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868
ショパール「L.U.C カリテ フルリエ」Ref. 168631-3001
2005年に登場した初代「L.U.C カリテ フルリエ」に着想を得た新作。カリテ フルリエ財団の定める仕様に則り、精度、耐衝撃、耐磁性、温湿度サイクル試験等の厳格な認定を受けている。
シルバーカラーのダイアルは、中央にサンレイサテン、その外周にサーキュラーサテン、スモールセコンドにはスネイル仕上げが施されている。コレクション初採用であるルーセントスティール製のケースは、従来のモデルからラグとリュウズのデザインを見直すことによって、より上品な印象へと進化を遂げた。ルーセントスティールは、80%以上のリサイクル素材で構成されるステンレススティールであり、抗アレルギー性、耐摩耗性、審美性に優れた同社の独自素材だ。
シースルーバックを通して鑑賞することが可能なムーブメントは、自社製のマイクロローター式自動巻きCal.L.U.C 96.09-Lである。ショパールツインテクノロジーによる約65時間のパワーリザーブを誇り、地板のペルラージュや受けのコート・ド・ジュネーブと面取り等、精緻な仕上げを楽しむことができる。
自動巻き(Cal.L.U.C 96.09-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティールケース(直径39mm、厚さ8.92mm)。30m防水。300万3000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
カルティエ プリヴェ トーチュ
毎年マニアを唸らせる新作が登場する「カルティエ プリヴェ」。今年は、優雅なトノー型ケースが特徴の「トーチュ」を現代的に再解釈したモデルが発表された。トーチュは、1912年に亀の甲羅をモチーフとして、ルイ・カルティエがデザインしたモデルだ。18Kイエローゴールドケースモデル1種とプラチナケースモデル2種の合計3種類がラインナップし、いずれも数量限定で販売される。
レイルウェイミニッツトラックとローマ数字インデックスが配された上品なダイアルには、アップルハンドの時分針が組み合わされ、初代トーチュへのオマージュが見て取れる。ケース素材に合わせてダイアルの仕様を変えており、18Kイエローゴールドケースにはブラックのインデックスにゴールド仕上げのダイアル、プラチナケースモデルにはロジウムコーティングのインデックスにシルバーオパーリン仕上げのダイアルを組み合わせている。
ソリッドバック仕様のため、その姿を見ることは叶わないが、薄型手巻きムーブメントのCal.430MCを搭載している。
手巻き(Cal.430MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KYGケース(縦41.4×横32.9mm、厚さ7.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。469万9200円(税込み)。2024年9月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
手巻き(Cal.430MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。Ptケース(縦41.4×横32.9mm、厚さ7.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。541万2000円(税込み)。2024年9月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
手巻き(Cal.430MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。Ptケース(縦41.4×横32.9mm、厚さ7.2mm)。日常生活防水。世界限定50本。897万6000円(税込み)。2024年9月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
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