ウォッチズ&ワンダース ジュネーブと会期を合わせ、ジュネーブ・ローヌ通りのパテック フィリップ本店サロンで開催されている「希少なハンドクラフト展」。現代のアルチザンたちが手掛けた手工芸の逸品が展示された。
Text by Hiroyuki Suzuki
[2024年4月19日公開記事]
パテック フィリップ本店サロンで行われる「希少なハンドクラフト展」
大盛況の内に閉幕したウォッチズ&ワンダース ジュネーブ2024。旧SIHHの流れを汲むパレクスポでの「IN THE SALON」と、市内各所のホテルなどで独自開催された「IN THE CITY」を合わせ、ジュネーブ市全体を挙げての「高級時計の祭典」だ。そうした中で筆者が特に楽しみにしていたのが、毎年ローヌ通りのパテック フィリップ本店サロンで行われている「希少なハンドクラフト展」だ。ジェムセッティングや細密彫金、ギヨシェ、エナメル、ウッドマルケトリ(木象嵌)などの伝統技術を組み合わせ、精緻な小宇宙を紡ぎ出す現代工芸の頂点だ。
ハイライトはウッドマルケトリ
今年のハイライトピースは、2点ともウッドマルケトリ。カラトラバのケースに木象嵌(もくぞうがん)のダイアルを載せたRef.5089G-129には「Morning on the beach」のタイトルが冠せられ、ボードを抱えて浜辺を歩くサーファーの姿が描かれた。
ポケットウォッチのRef.995/143G-001「Portrait of a white egret」は圧巻だ。丹念に切り出された53枚の寄せ木を組み合わせて、白鷺の横顔を描き出しているが、着彩の鮮やかさにも心を奪われる。
見事なエナメル作品が取りそろう
筆者が特に感銘を受けたのは、やはりエナメル作品だ。腕時計では12星座を4つのエレメントに分け、3本ずつの連作としたグリザイユ。通常は黒地に白の点描を施すが、この作品では夜空をイメージした濃紺の上にグリザイユを乗せている。
一連のドーム・テーブルクロックは、息を呑むようなクロワゾネを包むエナメルの柚肌が美しく、ショーケースのスポット光の中で、表面の微妙なうねりに反射光を受けて、艶めかしく輝いていた。
今年は特に作品数が多かった印象だが、その中で敢えて1本だけ選ぶとしたら、細密彫金を淡いグリーンのエナメルで封じ込めた、カラトラバ Ref.5089G-119の「Southern brown kiwi」だろうか? ニュージーランドの古い切手をモチーフにしたと思われるこの作品は、細密彫金の冴えもさることながら、重ねられたエナメルの質感が極めて美しいのだ。
今年はプレスデーにご招待いただいたため、特にゆっくりと鑑賞することができたが、このイベントは一般公開もされている。ジュネーブ市を挙げての祭典の中でも、特に文化的な薫りが漂うこのイベント。これを体験し、感銘を受けたジュネーブの若者の中から、次の世代のアルチザンが生まれてくるのかもしれない。
「希少なハンドクラフト展」の概要
稀少なハンドクラフト展は、2024年4月27日(土)まで、パテック フィリップ本店サロンで一般公開されている。入場料は無料だ。“希少”と冠されているように、普段はなかなか目にすることができないパテック フィリップのハンドクラフトの世界。時間が許せば、時計愛好家はぜひ足を運んでみてほしい。
見学希望の際は、事前に公式ホームページで予約することが推奨されている。
住所:Patek Philippe Salons, rue du Rhône 41, 1204 Geneva
営業時間:11時〜18時(最終入場17時)
休業日:日曜日
入場料:無料
また、6月7日(金)から16日(日)まで、ロンドンのボンド・ストリートに位置するパテック フィリップ・サロンでも開催される。
Tel.03-3255-8109
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