サファイアクリスタルについて知っておきたい4つのポイント

サファイアクリスタルは、時計の風防やケースバックに使われることが多い素材だ。ケース素材に採用されることもあり、各ブランドが工夫を凝らしている。今回は、サファイアクリスタルについて知っておきたい4つのポイントと、ケース素材にサファイアクリスタルが採用されている3つのモデルを紹介しよう。

サファイアクリスタルとは

　まずサファイアとは、酸化アルミニウムの結晶からなる鉱物コランダムの一種だ。コランダムは結晶に組み込まれる不純物によって色が変わり、赤色のものはルビー、青色など赤色以外のものはサファイアと呼ばれる。また、サファイア（コランダム）を化学式で表すと Al₂O₃となる。

　サファイアクリスタルは、人工的に合成された単結晶のサファイア（コランダム）だ。天然のサファイアと違って不純物を含まないため、無色透明となる。サファイアガラスと呼ばれることもあり、その名前と見た目からガラスの一種だと誤解されることも多い。

　モース硬度9のサファイアクリスタルは、透明な素材としてはダイヤモンドと人工宝石のモアサナイトに次ぐ、3番目の硬度を誇る。風防に使われることの多いミネラルガラスやプレキシガラスに比べ、非常にキズに強いのが特徴だ。

サファイアクリスタルが選ばれる理由

　サファイアクリスタルは熱や圧力、捻じり、スクラッチ、そして酸化に対する耐性がある。このため、主に風防の材料として重宝されている。

　現在では、ミネラルガラスの反射防止加工でもサファイアクリスタルと同じくらいの硬度が出せるようになっている。プレキシガラスはキズがついたら研磨する必要があるが、サファイアクリスタルはメンテナンスフリーだ。

カラフルなサファイアクリスタル

　ウブロは、カラフルなサファイアクリスタルを積極的に開発・採用している時計ブランドだ。

　例えば2022年に発表された「ビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック パープルサファイア」では、パープルのサファイアクリスタルがケースに使用されている。それ以前にも、ビッグ・バンではレッド、ブルー、イエロー、ブラックなどのサファイアクリスタルがケース素材に採用されている。

サファイアクリスタルが使われる時計のパーツ

　サファイアクリスタルは、主に時計の風防やケースバックに採用される。他にもベゼルやケース、文字盤、そして一部に限られるがムーブメントのブリッジにも使われている。

　ドイツの時計ブランド、サーキュラはサファイアクリスタルでカバーされたベゼルを採用し、風防だけでなく時計の正面全体を耐傷性の高いものとした。

　サファイアクリスタルを使ったベゼルのパイオニアはブランパンで、同社のアイコンでもあるダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムズ」で採用されている。

サファイアクリスタル製ケースを採用した腕時計3選

　現在、各ブランドからサファイアクリスタル製のケースを採用したモデルが展開されている。そのなかから、3つのモデルを紹介しよう。

ジラール・ペルゴ「クエーサー ライト トゥールビヨン スリー・ブリッジ」

　2020年に、サファイアクリスタルでできた透明なケースを備えた「クエーサー ライト」を発表したジラール・ペルゴ。

　2024年には、独自の3ブリッジを透明なサファイアクリスタルで作った「クエーサー ライト トゥールビヨン スリー・ブリッジ」を発表した。

MB&F「オロロジカル・マシンN°9 "HM9サファイアビジョン"」

　MB&Fの「オロロジカル・マシンN°9 "HM9サファイアビジョン"」は、サファイアクリスタルと18Kホワイトゴールドでできた、独特なフォルムのケースを備えている。

　ケースは泡のような曲線を描いており、3つの部分が組み合わされて一体化したような、不思議なデザインだ。

アーティア「タイニー ピュアリティ トゥールビヨン カメレオン」

　アーティアの「タイニー ピュアリティ トゥールビヨン カメレオン」は、多結晶分子構造により色が変わるハイテク素材、ナノサファイアをケースに採用している。

　この素材は光によって色が変化する。時計にあたっているのが自然光か、人工照明かによって、グリーンからオレンジの間で色が変わるのだ。