2024年の新作時計ベスト5 ジャーナリスト渋谷ヤスヒトの選んだ“夢と驚きのある時計”

FEATURE2024年新作時計
2024.04.24

ジャーナリストをはじめ、時計業界の著名人たちに2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は時計ジャーナリストの渋谷ヤスヒトが、数ある新作からカルティエやシャネル、エルメスなどを選出。いずれも渋谷が絶賛の拍手を送りたいと称する名作ぞろいだ!

2024年新作時計

ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル ブリゼ デテ ウォッチ」

透明なディスクにセットされたプリカジュールエナメル製の2頭の蝶の1頭が30分単位で時刻を表示。そして8時位置のボタンを押すと、まさに風にそよぐように動く花々の間を蝶が飛び回る。今年、いちばん感動した新作のひとつ。これぞメゾンの真髄!

レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ

ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル ブリゼ デテ ウォッチ」
自動巻き。18KWGケース(直径38mm)。要価格問い合わせ。(問)ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906


シャネル「J12 クチュール ワークショップ オートマタ キャリバー6」

これ以上シャネルらしいテーマはない「クチュール」テーマで展開された今年の新作コレクション。その中でも思わず顔がほころんでしまうのがこのモデル。ガブリエル・シャネルその人が洋裁ハサミをチョキチョキする姿はユーモラスでエスプリたっぷり。

J12 クチュール ワークショップ オートマタ キャリバー6

シャネル「J12 クチュール ワークショップ オートマタ キャリバー6」
自動巻き(Cal.6)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。高耐性ブラックセラミックケース(直径38mm)。50m防水。世界限定100本。参考価格3707万円(税込み)。(問)シャネル(カスタマーケア) Tel.0120-525-51


IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」

西暦の末尾に0がふたつ並び、かつ400で割り切れる年の場合のみ閏年として扱う。グレゴリオ暦の特別な規則を、なんと「400年に1回だけ回転する」歯車機構の搭載で反映させたエターナルカレンダーを搭載。久遠の宇宙を感じる夢のある1本だ。

ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー

IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」Ref. IW505701
自動巻き(Cal.52640)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。Ptケース(直径44.4mm、厚さ14.9mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。(問)IWC Tel.0120-05-186


エルメス「アルソー デュック・アトレ」

年を重ねるごとに実力派のウォッチメゾンに変身を遂げ、しかも、独自の「時の解釈」が魅力のエルメス。今年はついに3軸トゥールビヨン&ミニッツリピーターという超絶モデルが登場した。しかもゴングを「馬の頭」型にするという遊び心も心憎い。

アルソー デュック・アトレ

エルメス「アルソー デュック・アトレ」
手巻き(Cal.H1926)。54石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径43mm)。3気圧防水。世界限定24本。予価6288万7000円。(問)エルメスジャポン Tel.03-3569-3300


カルティエ「リフレクション ドゥ カルティエ」

創業以来、世界を驚かせる独創的なアイデアのハイジュエリーウォッチを展開してきたカルティエ。時計を埋め込んだ贅沢なバングル。しかもその時計の向かい側のバングルに密かに文字盤を反射させる。これほど粋な趣向のシークレットウォッチは他にないでしょう。

カルティエ リフレクション ドゥ カルティエ

カルティエ「リフレクション ドゥ カルティエ」
クォーツ。18KPGケース(縦18.4×横17.5mm、厚さ8.9mm)。日常生活防水。590万400円(税込み)。2024年9月発売予定。


総評

 今年2024年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブはどうだったか。時計業界の景気は世界的に減速気味なせいか、現地で聞いたフェアの評価は「新作が控えめだった」という人が多い。でも筆者は、各ブランドが本領を発揮した新作が充実していた、という感想だ。カルティエを筆頭に、ここ数年のうれしい傾向だが、今年もそのトレンドは変わらなかった。「このブランドが何でこのモデルを?」という、疑問符しか頭に浮かばない新作はほぼ皆無。

 それより「そうそう、よくぞそこまで本領を発揮してくれました!」と絶賛の拍手を贈りたい時計がいくつも出てきて、個人的にはそれが何よりもうれしかった。期待しているスポーツ選手が、期待通りかそれ以上の素晴らしいプレーを披露してくれた。そんな感覚だ。シャネル、ヴァン クリーフ&アーペル、エルメス、カルティエ、ショパール、IWC、タグ・ホイヤー、チューダー、グランドセイコー、そしてパルミジャーニ・フルリエ。

 これ以外にもそんな新作はたくさんある。だからW&WGの「ベスト5」を、しかもできれば順位を付けてほしいという編集部からのリクエストには困った。あれも挙げたい、これも挙げたい。ということで、ここで挙げたのはYouTubeでぜひその動きや機構を観てほしい“夢と驚きのある時計”を優先した。ということで、「個人的には絶賛したい」渋めのウォッチは泣く泣く割愛していることを、読者の皆さんにはぜひご理解頂きたい。



選者のプロフィール

渋谷ヤスヒト

渋谷ヤスヒト

モノ情報誌の編集者として1995年からジュネーブ&バーゼル取材を開始。編集者兼ライターとして駆け回り、気が付くと2019年がまさかの25回目。スマートウォッチはもちろん、時計以外のあらゆるモノやコトも企画・取材・編集・執筆中。


2024年のカルティエ新作時計を一気読み!

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