WATCH MEDIA ONLINE創設者のa-lsが、“部門別”に1位を選出!【2024年新作時計ベスト5】

2024.04.26

日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は時計ニュースサイト、WATCH MEDIA ONLINEの創設者であるa-lsが、「眼福部門」「我が陣営部門」など、独自の部門別に1位を与えた2024年新作時計を紹介する。


ヴァン クリーフ&アーペル「ブトン ドール オートマタ」

機械と機構に加え、時計にまつわる夢やロマンも詰め込んで、現在でも5年後でも100年後だろうが常にミュージアムピース価値と言える作品。もう2度とお目にかかれないかもしれない「眼福部門」1位が、ヴァン クリーフ&アーペルの「ブトン ドール オートマタ」をはじめとするエクストラオーディナリー オブジェ コレクションの作品だ。

ヴァン クリーフ&アーペル「ブトン ドール オートマタ」

ヴァン クリーフ&アーペル「ブトン ドール オートマタ」
機械式。パワーリザーブ8日間。高さ約27cm、幅約21.5cm。ユニークピース。(問)ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906


フェルディナント・ベルトゥー「クロノメーター FB RES」

今年の特徴として〝カスタマイズ”はひとつのキーだった。350万通りというノルケインの「Wild ONE of 1」と迷ったが、フュゼ・チェーンとルモントワール・デガリテを組み合わせるという超ハイエンド世界から降臨してカスタマイズを受け入れたフェルディナント・ベルトゥー「クロノメーター FB RES」を、「カスタマイズ部門」1位として推したい。

クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー クロノメーター FB RES

クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー「クロノメーター FB RES」
手巻き(Cal.FB-RE.FC)。58石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径44 mm、14.26mm)。30m防水。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922


カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」

今年の特徴という観点からもうひとつ挙げると、“1920~30年代”とか“ドレスの復権”とでもいうべき、古典の中にクールかつシャープなデザインをまとった作品も目立った。誰かとセレクトが被るのは必至だろうけど、その中でも格別な作品、カルティエの 「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」をこの「ニュー・リヴァイヴァル部門」の代表としたい。

カルティエ プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ

カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」Ref.WHTO0007
手巻き(Cal.1928MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。Ptケース(縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。897万6000円(税込み)。2024年10月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00


エルメス「アルソー デュック・アトレ」

例年大きな話題を呼ぶ“鳴り物系"だが、今年は王者PPをはじめ、文字通り“鳴りをひそめる”ブランドが多かった中、エルメス「アルソー デュック・アトレ」は果敢だった。3万6000振動/時で駆動する3軸のセンタートゥールビヨンとミニッツリピーターを搭載、音色もなかなか素晴らしかったので、「リピータ部門」賞を授与したい。

エルメス「アルソー デュック・アトレ」
手巻き(Cal.H1926)。54石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径43mm)。3気圧防水。世界限定24本。予価6288万7000円。(問)エルメスジャポン Tel.03-3569-3300


A.ランゲ&ゾーネ「ダトグラフ・アップ/ダウン」

ラスト5本目は、本当であれば「工芸部門」賞として、パテック フィリップが開発した超絶セッティングによる「アクアノート5268/461」か、尊いばかりの細密ブレスをまとった「ゴールデン・エリプス」を挙げたかったのだが、コネというか……、ま、申し訳ないのだが青ダイアルに弱いもんで、「我が陣営部門」賞という名目で、A.ランゲ&ゾーネ「ダトグラフ・アップ/ダウン」に最後の1席を差し上げてしまう今日この頃であった……。

A.ランゲ&ゾーネ ダドグラフ・アップ/ダウン

A.ランゲ&ゾーネ「ダトグラフ・アップ/ダウン」Ref.405.028
手巻き(Cal.L951.6)。46石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWGケース(直径41mm、厚さ13.1mm)。3気圧防水。世界限定125本。要価格問い合わせ。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845


総評

 Watches&Wonders 2024作品から個人的なベスト5を挙げてほしいということで、「はい、了解」と安請け合いしてしまったものの、いざ選び始めてみるとこれがなかなかに難しい。たとえば、億越えの時計とアンダー100万円の時計を同一線上で比較して順位付けすることって、ジュネーヴの会場で数十分の説明を受けた程度の知識レベルでは、まだまだ絶対的な自信が足りない。そこで、ちょっとズルかもだが、他の選者の方々とはあまり被らないような、勝手に作った部門別の1位を5つ選定することで、なんとかご勘弁していただきたい・・・。

 さてこの数年、非常に好景気に沸いた時計業界だが、そこで得たポピュラリティーやプロフィットを、どのような形で今後につなげていくのか。今年のWatches&Wondersは、各ブランドがそのアプローチの端緒を見せた興味深いものだったと思う。依然として高額限定路線を貫き、購買層を選別せんとするブランドもあれば、客層の裾野を広げるためのデザインや価格に意欲的なブランドや、利益の多くをサービスに振り分けるブランドなど、それらは千差万別ではある。しかし数年先のWatches&Wondersにあって、各々が2024年の現状を維持もしくは拡大できているかどうかの岐路は、振り返ると今年のアプロ―チにあったと言われるような気がするWatches&Wonders 2024ではあった。

 相対的に見ると、ゼンマイ&歯車の新機構開発を模索するハイエンド作品よりも、既存作品の改編・改良や、カラー&デザインなどの直感的アプローチをとった作品が多く感じられたことも今年の特徴ではないだろうか。


選者のプロフィール

KITAMURA(a-ls)

出版社を創業して音楽雑誌の編集発行人をつとめる傍ら、A.ランゲ&ゾーネに出合い時計沼に浸かる。2008年よりドイツ本社からの意向でランゲ・オーナーズ・クラブを日本で運営(~2013年)。16年には非営利の時計ニュースサイト、WATCH MEDIA ONLINEを開設。


2024年 A.ランゲ&ゾーネの新作時計を一気読み!

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2024年 クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー新作時計を紹介

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2024年のカルティエ新作、買えないけど「トーチュ」のモノプッシャークロノは傑作of傑作だ!

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