『クロノス日本版』編集長の広田雅将が“オタクの目”で選ぶ【2024年新作時計ベスト5】

FEATURE2024年新作時計
2024.04.27

ジャーナリストをはじめ、時計業界の著名人たちに2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は『クロノス日本版』およびwebChronos編集長であり、時計の“ガチオタ”でもある広田雅将が、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブでの出展ブランドの新作時計から、自身が取材した中でのベスト5を選出した。


1位:グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル」

コレは文句なしの1番。大径高精度のムーブメントを小さなケースに収めるという手法は、往年のゼニス135やオメガの30mmキャリバー搭載機を思わせる。巻き味を追求するため、コハゼを新規開発、そしてリュウズチューブのパッキンもチューニングするという合わせ技も効いている。ゆっくり巻くと重め、早く巻くと軽め、そして今時の手巻き時計にはない手触りは唯一無二ではないか。例えるなら、令和の「ポルトギーゼ・ジュビリー」。

グランドセイコー エボリューション9

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル」Ref.SLGW003
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。145万2000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617


2位:カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」

どうせ買えませんけども。オリジナルをほぼ忠実に再現したケースと、バリバリに気合いの入った新規設計のムーブメント。カルティエがこんな審美的なムーブメントを作るとは予想もしていなかった。印字の厚みを抑えた文字盤の仕上げもどことなくレトロっぽい。価格は高いけど、買える人は是非どうぞ。個人的には、改良版のCal.430MCを載せた、2針のトーチュも推しです。弱点の針飛びも抑えられたし。

カルティエ プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ

カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」Ref. WHTO0007
手巻き(Cal.1928MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。Ptケース(縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。897万6000円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00


3位:チューダー「ブラックベイ 58 GMT」

記事に書いた通りです。新規設計のGMTはどう扱っても壊れそうにないし、値段もワンダフル。しかもマスター クロノメーターというのがいい。ブレスレットと時計部分の重さのバランスが良いため、装着感も良好だ。手の届く価格帯で考えると、これが2024年の1押しかも。ただしそろそろ、モデルごとの違いは見分けにくくなってきたかなあ。

チューダー ブラックベイ58 GMT

チューダー「ブラックベイ 58 GMT」Ref.M7939G1A0NRU-0001
自動巻き(Cal.MT5450-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。64万3500円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570


4位:タグ・ホイヤー「モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ」

カザピ姉さんが魔改造したモナコ。ヴォーシェのエボーシュをコスト度外視で改造、そしてケースも全くの別物だ。例えるなら、量産車の皮を被ったレーシングカー。一見機械風、しかし手作業で施した面取りなど、仕上げもいちいち細かい。タグ・ホイヤーの目指す、モダンなオートオルロジュリーを象徴するモデル。この路線が続くと、タグ・ホイヤーは強いかも。

タグ・ホイヤー モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ

タグ・ホイヤー「モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ」Ref. CBW2182.FC8339
自動巻き(Cal.TH81-00)。3万6000振動/時。パワーリザーブ約65時間。Tiケース(直径41mm、厚さ15.2mm)。30m防水。予価1672万円(税込み)。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054


5位:ショパール「L.U.C カリテ フルリエ」

完全な好みです。ムーブメントは素晴らしい、でも外装はいまいちという印象のあるショパールだが、ここ数年で驚くほどの進化を遂げた。新しいカリテ フルリエは、ジュネーブシールモデルに比肩する仕上げを持ちながらも、ラフに使える基礎体力を持つほか、明らかに良くなったケースと文字盤が目を惹く。コレは本当にツボ。どうせ買えませんけど、2023年の「L.U.C XPS 1860」と迷います。迷いましょう。

ショパール「L.U.C カリテ フルリエ」

ショパール「L.U.C カリテ フルリエ」Ref.168631-3001
自動巻き(Cal.L.U.C 96.09-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティールケース(直径39mm、厚さ8.92mm)。30m防水。300万3000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922


総評

 地味という声もあったウォッチズ&ワンダーズ2024。しかし、オタクの目で見ると、やっぱり発見の多い見本市だった。というわけで、見た時計の中から5本を選ぶことにする。個人的にはブルガリなどを加えたいが、今回のランキングはW&Wで発表されたモノに限った。



選者のプロフィール

広田雅将

1974年、大阪府生まれ。2ちゃんねるのコテハンとして活躍した後、脱サラして時計ジャーナリストに転身。いつの間にやら業界ご意見番に。多くの時計専門誌に寄稿する傍ら、『クロノス日本版』では創刊2号から主筆を務める。2016年より編集長に就任。


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https://www.webchronos.net/blog/113426/