PRXの大ヒットで一躍存在感を増したティソ。CEOのシルヴァン・ドラの語り口が明るいのは、好調な業績を反映すればこそか。
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年5月号掲載記事]
私たちは、スマートウォッチではなくコネクテッドウォッチを作ります
ティソCEO。1972年、フランス生まれ。トゥールーズ・ビジネススクールで修士号を修めた後、通信業界を経て、2004年にスウォッチのハイテク&アクセス部門責任者として時計業界に参画。マイクロソフトとの共同プロジェクト「スウォッチ・パパラッチ」などに携わる。翌年、ハミルトン本社のインターナショナルセールス部門トップに就任。11年にはハミルトンのCEOに着任し、ブランドをさらに発展させる。20年、7月1日より現職。
「今回紹介したいのは新しいファミリーのPR516とT-タッチの新製品ですね」。どちらも魅力的だが、驚かされたのは「T-タッチ コネクト スポーツ」だ。同社はすでにT-タッチをコネクテッド化していたが、ケースサイズはかなり小さくなり、ソーラーセル文字盤も、太陽電池であることをまったく感じさせない。腕時計としてはまるで別物になった印象を受ける。
「このモデルのために、ティソは太陽電池の工場に2000万スイスフランの投資をしました。市場にあるソーラーウォッチは標準的な太陽電池を搭載し、それを文字盤で覆っています。対して私たちは異なるアプローチを選びました。エネルギーの取り入れを最大化したいため、文字盤自体を太陽電池としたのです」。文字盤自体を太陽電池とする試みは日本メーカーにもある。しかし、新しいT-タッチの文字盤は太陽電池であることをまったく感じさせない。これは既存のメーカーにとって、脅威となるのではないか。
「スマートウォッチは、毎日20時間ごとに充電する必要がありますね。対して新しいT-タッチは、普通の接続使用では約6カ月、集中的に使っても3カ月は電池がもちます。そのため、アプリケーションで操作できる機能も通知とワークアウトに限りました」。特に強調するのは、彼が「家電」と呼ぶ、一般的なスマートウォッチとの違いだ。
「私たちが作っているのは、コネクテッドウォッチです。スマートウォッチではない。ティソは年に2000万本や3000万本もの『家電』は作りたくないし、2年ごとに買い替えたり、破棄したりしなければならないスマートウォッチは作りません。ティソは、6年後も使える製品を作りたいのです。仮にブルートゥースによる接続がなくなっても、美しい腕時計は残るのです」
感心させられたのは、使えるサイズという点だ。直径は43㎜だが、腕に置いた感触は、サイズよりもずっと小さく感じる。
「以前のモデルが大きかったことは事実ですね。スイス人は大きな腕時計を好んで身に着けるので、スイスには合っていたのですが。今回はこの腕時計をよりユニセックスにしたかったのです。ですから、女性が使えるような色も加えています。以前より小さいけれど、視認性が良い理由は、エンジニアリングチームの努力の賜物ですね」
「私たちはウォッチメーカー」と言い切るシルヴァン・ドラ。決して得意とは言えないコネクテッドウォッチでも、これほどのモデルを作り上げるとは正直脱帽だ。
スポーツシーンにも使えるコネクテッドウォッチ。時計+付加機能というコンセプトを実現するため、独自のアプリケーションで動く。新技術により、文字盤として使われる太陽電池の見た目は、普通の文字盤に比べても遜色ない。セラミックス製ベゼル搭載。ケース径43mm、厚さ12.8mmとサイズも実用的だ。ソーラー充電式クォーツ。標準接続でのパワーリザーブ約6カ月間。Tiケース(直径43mm、厚さ12.8mm)。5気圧防水。予価14万8500円(税込み)。
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