2023年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)において、チャレンジ賞を受賞したレイモンド・ウェイルの「ミレジム」。その実機を携えて、同社CEOのエリー・ベルンハイムが来日を果たした。
鈴木幸也(本誌):取材・文 Edited & Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年5月号掲載記事]
ヘリテージから溢れ出るバリューを引き継いでいく
1982年、スイス生まれ。ブランド創業者、レイモンド・ウェイルの孫。ローザンヌホテルスクールを卒業後、他社でのキャリアを経て、2006年にレイモンド・ウェイルに入社。その後、時計製作、マーケティング、事業経営を幅広く経験した後、14年に父親のオリヴィエ・ベルンハイムからCEOを引き継ぐ。音楽一家でもあるウェイル家の一員である彼は、ピアノとチェロの演奏という趣味を持つ
「今回のハイライトはGPHGを受賞したミレジムです。ミレジムは特定の地域だけでなく、世界中から好評をいただいており、うれしく思っています」
クラシックさとモダンさを併せ持った意匠をコンセプトに、レトロさの中にも現代的な要素が見いだせるようなデザインを作りたかったというベルンハイム。
「毎年、新たなコンセプトのコレクションを作っているわけではありませんが、ビジネストリップからスイスに帰ってきた時、何か新しいものを無性に作りたいと思いました。その時に、クラシックだとかモダンだとか、作っていく中で、約3年という歳月をかけて企画から構成、デザインまで練り上げ、ディテールにも妥協なく取り組んで創り上げたので、今日、ここ東京でお見せできて感無量です」
現在、ミレジムには、センターセコンド仕様が4型、スモールセコンド仕様が2型ラインナップされ、合計6型を数える。ミレジムの最初のステップとしては、この5型からスタートして、さらに認知度を高め、今年から来年に向けて新たなモデルの投入も企画しているという。今後、このシンプルな3針モデルのミレジムに、付加機構を追加する予定はあるのだろうか?
「まだ言えませんが、ミレジムの意匠にふさわしい新たな機構の追加を考えています」
新作への期待もさらに膨らむが、そもそも「ミレジム」とはフランス語で「良い年」を意味するという。
「そこから『良い瞬間』など、喜びを分かち合うときなどに使われることもあります。例えば、ワインの良い年を『ミレジムイヤー』と表現するように、祝福を表現する言葉でもあるのです。CEOになって10年経ちますが、この10年間を振り返ってみると、学ばなかったことは1日たりともありませんでした。あらゆることが日々変化していきますし、新しいことも難しいことも、小さいことから大きなことまで、さまざまなことがありました。すごく幸運なこともありました」
GPHGのチャレンジ賞を受賞した昨年は、レイモンド・ウェイルにとって、間違いなく、ミレジムイヤーであったろう。
「同時に今までの歴史、すなわち、ヘリテージから溢れ出るバリュー。これは引き継いでいかなければいけないという覚悟を決めた年でもあります」
昨年のGPHG2023のチャレンジ賞を受賞した「ミレジム」。ヴィンテージテイストのセクターダイアルを採用した意匠を特徴とするが、活躍するシーンがより広範な現代のドレスウォッチにふさわしいモダンさも兼ね備える。自動巻き(Cal.RW4251)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ10.25mm)。5気圧防水。34万1000円(税込み)。
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