ブラジルのレーシングドライバー、アイルトン・セナが、レース中の事故でこの世を去ってから30年となる2024年。今もF1史を代表するドライバーのひとりとして賞賛されている彼を、オマージュモデルで称え続けている時計ブランドがタグ・ホイヤーだ。歴代のアイルトン・セナ モデルについて紹介しよう。
伝説のレーシングドライバー、アイルトン・セナ逝去から30年
2024年はブラジルのレーシングドライバー、アイルトン・セナが逝去してから30年となる。彼はその強さから「マジック・セナ」と呼ばれ、日本では「音速の貴公子」の愛称で知られていた。運命に翻弄されたセナがF1の舞台で戦ったのはわずか10年だったが、その戦歴は輝かしいものであった。
セナは1988年、1990年、1991年とワールドチャンピオンを3度制覇し、41回のグランプリ優勝と65回のグランプリでのポールポジションを獲得した。
アラン・プロストとの記憶に残る攻防戦を繰り広げたセナは、その類まれな才能に加え、決断力、闘争心、カリスマ性、そして寛大さでも輝きを放っていた。
アイルトン・セナが勝利するたびにブラジル全土が沸いた時代は遠ざかりつつあるが、彼が亡くなって30年が経った今でも、セナは人々の心の中に生き続けている。
アイルトン・セナが活躍していた、1980年代から90年代にかけてF1を観ていたブラジルの若者たちは現在40,50代となり、カーレースへの情熱を子どもたちに伝えている。
ブラジルのインテルラゴス・サーキットで行われるF1グランプリの期間中、若者たちはセナの有名なブルーの「NACIONAL」キャップをかぶり、この伝説的な英雄を偲ぶ歌をレース中に歌っている。
セナが表彰台に立つたびに、ブラジル国民全体が勝利を手にし、厳しい経済状況や社会状況の中に希望の光を見出したのだ。
セナもそれをよく理解しており、ブラジルの若者たちを熱心に支援した。その表れとして、悲劇の事故に見舞われる数カ月前、彼は財団を設立する意向を表明していた。
セナが亡くなってから半年後の1994年11月、アイルトン・セナ財団(IAS)が設立された。彼の妹であるヴィヴィアン・セナによって設立されたこの財団も、2024年末には30周年を迎える。財団は1億ドル近くを、ブラジルの恵まれない若者のための社会的活動や教育に投じている。
財団の資金は主に個人の寄付金によってまかなわれているが、アイルトン・セナのライセンス商品の売り上げによるところも大きい。タグ・ホイヤーやマクラーレン、ドゥカティ、アシックス、ビザ、レゴといった、国際的な大ブランドによって作られてたライセンス商品だ。
タグ・ホイヤーは1988年以来、セナのトレードマークである有名な「S」をモチーフにしたライセンス製品を生み出しており、長年にわたっていくつかの特別な「アイルトン・セナ」シリーズを発表してきた。
タグ・ホイヤーとアイルトン・セナ。歴代のコラボモデルを振り返る
1985年、タグ・ホイヤーはマクラーレンのレーシングチームと、F1史上最も長いパートナーシップを結んだ。1987年に発表された「S/el(セル)」シリーズは「リンク」と呼ばれる二重のS字型ブレスレットを特徴とし、それ以降タグ・ホイヤーのトレードマークとなっている。
1988年、マクラーレン・ホンダの新しいドライバーとなったアイルトン・セナがこのモデルを着用し、タグ・ホイヤーの公式アンバサダーに就任した。
タグ・ホイヤーが最初のスペシャルモデル「タグ・ホイヤー 6000 セナ リミテッドエディション」を発表したのは、セナがこの世を去った1994年のことだった。「アイルトン・セナ × タグホイヤー」シリーズの製作契約は、セナがイモラ・サーキットで亡くなる2日前の1994年4月29日に締結されている。このモデルは「チェッカーフラッグ」の文字盤を備えた6000本のシリーズで、セナの“S”があしらわれたデザインだった。
2000年代には、リンクのクロノグラフモデルをベースに3つの新しいシリーズが開発された。
2001年に発表された最初のモデルは、1991年のセナの最後の勝利に敬意を表して、1991本限定で発表された。この「タグ・ホイヤー リンク セナ クロノグラフ」には、文字盤にさりげなく「SENNA S」のエンボス加工が施され、一定の角度からしか見えないようになっていた。
2002年には「リンク クロノグラフ アイルトン セナ」の3つめのシリーズであるRef.CT2115が発表され、4098本が生産されている。イエローの「S」ロゴと細部に施されたイエローは、セナを象徴するヘルメットの色を想起させるものだった。
2003年に発表されたRef.CT5114は4000本の限定モデルであり、先代モデルとは異なるホワイトのサブダイアルが目を引く。3時位置の日付の隣にはセナの名前と「S」ロゴが配され、ケースバックにはセナのカラフルなヘルメットが描かれている。
アイルトン・セナ没後10周年に発表された2004本限定のRef.CJF2113は、グリーンのサブダイアル針やセナの“手書き”を再現したサインなどをあしらい、シリーズに大きな変化をもたらした。
2015年に復活したタグ・ホイヤーのセナコレクション
その後の数年間、アイルトン・セナ財団とタグ・ホイヤーのパートナーシップは一旦休止となる。しかし2015年に「カレラ キャリバー16」をベースにした2本の特別モデル(1本はステンレススティール製のRef.CAZ201D、もう1本はチタン製)でパートナーシップは復活を遂げた。続いて、レッドまたはイエローのディテールが特徴の「タグ・ホイヤー カレラ&フォーミュラ1 セナ」が発表された。
2016年にコレクションから発表された「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 セナ」Ref.CAZ1015は、直径43mmサイズのステンレススティールケースモデルだ。この特別モデルは、文字盤とアルミニウム製ベゼルに施された「SENNA」の文字、エングレービングが施されたケースバックといった特徴が見られる。
2017年、タグ・ホイヤーは初めて自社製ムーブメントであるホイヤー01を、セナコレクションのデザインコードと組み合わせた。
直径45mmのステンレススティールケースを採用した「カレラ ホイヤー01 クロノグラフ」は、存在感のあるブラックPVDコーティングのケースに、赤色のアクセントが効いたモデルだ。スケルトン文字盤と、サファイアクリスタル製ケースバックを特徴とする。
2017年にはセナコレクションから他に「フォーミュラ1」のクォーツモデルが2本発表された。そのうちの1本は、クロノグラフモデルの「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 セナ」Ref.CAZ1019である。
2018年には、タグ・ホイヤーの「カレラ」コレクションから、セナにオマージュを捧げた2本の特別モデルが発表されている。スケルトン仕様のクロノグラフモデルと、気品あふれるクロノグラフモデルの「カレラ キャリバー ホイヤー02T(Ref.CAR5A91)」で、どちらもセナの名前とロゴが、文字盤、ベゼル、ケースバックに誇らしげにあしらわれている。
さらに2019年には「タグ・ホイヤー カレラ ホイヤー02 トゥールビヨン セナ」から、2本の特別モデルが発表された。そのうち1本であるRef.CAR5A99は、セナのヘルメットカラーであるイエローを取り入れ、サファイアクリスタル製のケースバックにもプリントが施されている。
2020年と2021年には「フォーミュラ1 セナ スペシャルエディション クロノグラフ」がいくつか発表され、自動巻きムーブメントを搭載したRef.CAZ101AJや、クォーツムーブメントを搭載したモデルが展開された。これらのデザインは、セナコレクションの従来の特徴を踏襲したものだ。
2024年末には新たな限定モデルが登場予定
現行モデルとなる「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ アイルトン・セナ」は、これまでと同様にフォーミュラ1をベースとしながら、2015年、2016年のスペシャルシリーズで採用されたリンクブレスレットを復活させた。
2022年に発表されたモデルは、カラーリングをイエローからマクラーレンのレッドに変更している。クロノグラフムーブメントを駆動させるのは、約42時間のパワーリザーブを保持するCal.16だ。
自動巻き(Cal.16)2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径44mm)。200m防水。55万円(税込み)。
アイルトン・セナ逝去から30年にあたる2024年、アイルトン・セナ財団は彼に敬意を表し、一連のイベントやライセンス製品の発表を準備している。
アイルトン・セナの歴史的なパートナーであるタグ・ホイヤーは、年末に限定モデルを発表する予定だ。この限定モデルは、時計愛好家だけでなく、セナの長年のファンたちをも喜ばせるものとなるだろう。
クォーツ。DLCコーティングSSケース(直径43mm)。200m防水。35万2000円(税込み)。
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