機械式腕時計の価格帯は非常に幅広い。10万円以下で手に入るリーズナブルなモデルから、数百、数千万円する超高額なモデルまで存在している。今回はそんな機械式時計の中から、50万円前後という価格の縛りを設けて、満足度の高いメンズモデルを5本ピックアップして紹介する。腕時計選びに役立てていただけると幸いだ。
Text by Kento Nii
[2024年6月13日公開記事]
50万円前後で“満足度の高い”機械式腕時計を、定義してみる
機械式腕時計の価格は幅広く、購入の際は予算によって、選択肢が大きく変わってくる。今回設定した50万円前後という予算は、国産の機械式腕時計に加えて、海外ブランドの代表的なモデルも選択肢に加わってくる価格帯だ。長期にわたって愛用できる、満足度の高い腕時計を選びやすい価格帯だろう。
一方で、腕時計の評価ポイントは人によってさまざまであり、機能性、実用性重視の人もいれば、デザインに最も重きを置く人もいる。そのため、満足度の高い腕時計を断定することは難しい。そこで本記事では、「実用性」「ブランド力」「デザイン性」という3つの観点から、満足度の高いモデルをピックアップした。
実用性
着用する機会が限られる腕時計は、「買って良かった」と実感できる機会も少なくなってしまうだろう。そのため、50万円前後というお金を出すのであれば、腕時計としての実用性も重視したいところだ。特に防水性能や、短すぎないパワーリザーブといった機能性が備わっていると、多くのシーンで不便を感じずに着用できるモデルとなってくれる。
防水性については、5気圧防水以上が備わっていれば、デイリーユースでも水濡れを気にせず着用できるだろう。また、パワーリザーブも約2日程度あると、毎日主ゼンマイを巻き上げる必要がなく、時刻調整の回数も抑えられる。デイリーユースの利便性を高めてくれるはずだ。
ブランド力
腕時計を購入する際は、価格帯だけでなく、各時計ブランドが持つ「ブランド力」の吟味も重要となる。広く知られているブランドであれば、腕時計の生産体制が確立されていることが多く、価格と品質のバランスが良い腕時計を見つけやすい印象だ。また、購入ルートが豊富に用意されているブランドであれば、じっくりと時間をかけてモデル選びができるだろう。
さらに顧客に寄り添ったブランドは、国際保証や各種メンテナンスサービスといった、アフターサポートの面も充実している。末永く1本の腕時計と付き合っていきたいのであれば、ブランドの選択は非常に重要となり得るのである。
デザイン性
好みは人それぞれだが、汎用性の高いデザインの腕時計を選べば、満足できる購入につながりやすい。ビジネスからプライベートまで多くのシーンで着用することで、おのずと腕時計にも愛着が湧いてくるだろう。また、ベーシックなデザイン性は飽きがこないのも魅力だ。
もちろん、自分の好みにかっちりとハマるデザインであれば、それだけで満足度が高い。自分の好みやライフスタイルと相談し、長い間着用したいと思えるようなモデルを選ぶことが重要である。
50万円前後で買えて、満足度の高い機械式腕時計5選
「満足度の高い機械式腕時計」を定義したうえで、50万円前後の価格帯の機械式腕時計を5本、ピックアップした。ビジネスやフォーマルシーンにふさわしい3針モデルから、スポーティなモデルに至るまでをセレクトしている。
キングセイコー Ref.SDKA005
国産時計ブランドとして広く知られるセイコーからは、2022年にブランドの復活を果たした「キングセイコー」のRef.SDKA005をピックアップ。ケースシェイプや多列ブレスレット、12時のインデックスに施されたライターカットなど、1965年に誕生したオリジナルにあたる2代目キングセイコー「KSK」の特徴を、色濃く継承したモデルだ。現行キングセイコーのフラグシップモデルにあたり、太く力強い針の採用や、セイコーの現行メカニカル時計では最薄の自動巻ムーブメントを搭載するなど、完成度が高められている。なお、ケースはKSKのフォルムを引き継ぎつつもアップデートされており、オリジナルから0.2mmの薄型化に成功している。
ムーブメントは、Cal.6L35を搭載する。パワーリザーブは約45時間だ。
そのモダンクラシックを体現するダイアルデザインとスリムなシェイプは、“汎用性の高さ”こそが大きな魅力といえるだろう。ビジネスシーンを中心にあらゆる場面に合わせやすい1本だ。また、セイコーの積み上げてきた歴史が体感できる点も、満足度を高めてくれる要素となり得る。
自動巻き(Cal.6L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(直径38.6mm、厚さ10.7mm)。5気圧防水。41万8000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012
ロンジン「ロンジン スピリット ZULU TIME」Ref.L3.802.4.63.6
パイロットウォッチやダイバーズウォッチといったツールウォッチから、クラシカルなドレスウォッチに至るまで、多彩なラインナップを取りそろえる老舗時計ブランド、ロンジン。実用的な機械式腕時計が誠実な価格帯で展開されており、50万円前後で選択肢に加えやすい。
ピックアップした「ロンジン スピリット ZULU TIME」は、空、陸、海の各フィールドで活躍したパイオニアたちの精神が息づく「ロンジン スピリット」コレクションのGMTモデルだ。アンスラサイトカラーのダイアルにアラビア数字インデックス、グリーンのベゼルを組み合わせたフェイスは、味わい深いクラシックなスポーティーテイストを演出している。一方で、ゴールドカラーの差し色によって、華やかさが添えられている点も特徴だ。
搭載するムーブメントCal.L844は、C.O.S.C.(スイス公式クロノメーター検定協会)公認の精度を有しており、約72時間のパワーリザーブと相まって、実用的だ。また、ケース径は39mmで、手首が細めの男性でも着用しやすい。そのシックな出で立ちは、プライベートシーンはもちろんのこと、少しフォーマルなジャケットスタイルにも合わせやすい。
自動巻き(Cal.L844.4)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39mm、厚さ13.5mm)。10気圧防水。48万9500円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350
チューダー「ブラックベイ 54」Ref.M79000N-0001
ロレックスのディフュージョンブランドとしての歴史を持つチューダーも、50万円前後の機械式腕時計を選ぶうえで、本命のひとつとなる。この予算であれば、チューダーの代表的なコレクションである「ブラックベイ」がおすすめだ。ピックアップしたのは「ブラックベイ 54」で、チューダー初のダイバーズウォッチとして1954年に登場した「Ref.7922」を踏襲したモデルだ。
そんな本作の魅力は、言わずもがな、ヴィンテージテイストにあふれるダイバーズウォッチスタイルである。日付表示やリュウズガードは無く、逆回転防止ベゼルも最低限のスケールのみが記されるなど、無駄のなさが際立っている。また、ダイアル上ではロリポップ秒針やスノーフレーク針が目を引く、チューダーの伝統を感じさせる仕上がりだ。直径37mmのコンパクトなケースサイズであるため、着用する人を選ばない点も魅力となる。
200m防水をはじめとする高い機能性に、飽きのこない黒主体のカラーリングも相まって、デイリーユースに向いたダイバーズウォッチといえるだろう。搭載するムーブメントは自動巻きCal.MT5400で、C.O.S.C.公認の優れた精度に、約70時間の実用的なパワーリザーブを備えている。
自動巻き(Cal.MT5400)。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径37mm、厚さ11.2mm)。200m防水。54万6700円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570
オリス「ビッグクラウン ブロンズ ポインターデイト」Ref.01 754 7741 3168-07 8 20 01
2024年で創業120周年を迎えるオリスは、機械式時計の魅力を発信し続けるスイスの時計ブランドだ。価格と性能のバランスが良い機械式腕時計がそろっており、もちろん50万円前後のコレクションも数多くラインナップされている。
オリスからは、「ビッグクラウン ポインターデイト」のブロンズケースモデルをピックアップした。ブロンズケースの中で際立つボルドーカラーダイアルが特徴の1本だ。1938年より愛され続けているデザインは健在で、操作性の高い大きめのリュウズや、クラシカルな三日月型のポインターデイト針が存在を主張している。
40mm径のケースは5気圧防水。また、ムーブメントはパワーリザーブ約38時間の、Cal.754を搭載する。なお、ブロンズ製のケースは経年変化によって、使い込むほどに味が出てくる点も魅力となる。長年着用することで風合いが変化する本作は、所有する喜びを感じさせ、毎日着用したい腕時計となってくれるだろう。
自動巻き(Cal.754)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。ブロンズケース(直径40mm)。5気圧防水。47万6300円(税込み)。(問)オリスジャパン Tel.03-6260-6876
モンブラン「モンブラン 1858 アイスシー オートマティック デイト」Ref.MB130793
ドイツ・ハンブルグの銀行家アルフレッド・ネヘミアスとベルリンのエンジニアであるアウグスト・エーベルシュタインが、1906年に立ち上げた「シンプロ・クィラーペン・カンパニー」から歴史をスタートさせたモンブランは、高級筆記具で広く知られる。1997年より時計事業にも参入しており、さらにムーブメント製作の名門であるミネルバを傘下に収めたことで、時計製造の伝統を継承しているブランドでもある。そのクラフトマンシップには定評があり、アルプス山脈の最高峰であるモンブランをオマージュしたブランドエンブレムが、そのアイコンとなっている。
モンブランからピックアップしたのは、ブランド初のダイバーズウォッチとして登場した「1858 アイスシー オートマティック デイト」だ。本作で目を引くのは、「グレーシャーダイアル」と名付けられたダイアル。ひび割れたようなディテールはモンブラン山脈最大の氷河をモチーフとしており、独特の質感は見るほどに新たな発見があるだろう。モノクロカラーゆえの汎用性の高さと、個性の演出を両立した1本だ。
300m防水や逆回転防止ベゼルといった、本格的なダイバーズウォッチとしての仕様も本作の魅力となる。搭載するムーブメントはCal.MB 24.17で、パワーリザーブは約38時間だ。腕時計だけでなく、筆記具やバッグ、財布についてもモンブランに統一することで、さらに所有する満足度を高めることもできるだろう。
自動巻き。26石。SSケース(直径41mm、厚さ12.9mm)。300m防水。48万9500円(税込み)。(問)モンブランお客様サポート Tel.0800-333-0102
50万円前後なら、豊富な選択肢から満足度の高い1本を選べる
機械式腕時計は価格のレンジが極めて広いが、50万円前後となると、一気に選択の幅が広がる印象だ。じっくりと比較検討してからモデル選びをすることで、きっと満足に足る腕時計に出合うことができるはず。実用性やデザイン性に注目し、さまざまなブランドから、自分が満足できる1本をぜひ探してみてほしい。
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