サファイアクリスタル、カーボン、セラミックス……。いわゆる異素材、新素材と呼ばれるこれらの外装開発を積極的に手掛けるウブロ。個々の製法について一定のメソッドが確立された現代において、いまウブロが取り組むのは審美性の向上だ。2024年の新作では、オレンジとダークグリーンのセラミックケースで、焼成から仕上げまでの手順を全く変えている。新素材系を導入することの目新しさだけが注目された時代を経て、“外装革命”にも質が問われるようになってきた。
約336時間という超ロングパワーリザーブを誇る7バレルモデル。重ねられた香箱は、輪列に対して直角に配置されるため、駆動にヘリカルウォームギアを介する。新開発の“薄水色”は素晴らしく透明度が高い。手巻き(Cal.HUB9011)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約14日間。ウォーターブルーサファイアクリスタルケース(直径45mm、厚さ14.4mm)。3気圧防水。世界限定50本。2336万4000円(税込み)。
鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
ニューマテリアルを巧みに使いこなすウブロ
2018年に採用されたピンクサファイアケースに、自社開発・製造のムーブメント「ウニコ」を搭載。ウニコを見せることでメカニカルな印象になっているため、淡い色調とムーブメントのメタリックな質感が心地よいコントラストを生む。自動巻き(Cal.1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。サファイアクリスタルケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。5気圧防水。世界限定100本。1657万7000円(税込み)。
“外装革命”を謳った特集タイトルが象徴するように、外装技術の著しい進歩が目立った2024年のW&WG。その先頭グループの一角を走り続けるのはやはりウブロだ。一時期に比べれば、ジュネーブでお披露目される新作数こそ控えめになったものの、その分、ひとつひとつのプロダクトがキッチリと作り込まれている印象でむしろ好ましい。中でもハイライトとなるのはやはり、サファイア、カーボン、セラミックスといった異素材ニューマテリアル系。今やこの分野はウブロの独壇場ともいうべき状況だ。
昨年登場した“サンブルー”モチーフの「スピリット オブ ビッグ・バン」を、初めてサファイアケースで構築。ファセットを組み合わせた複雑な面構成を、難切削材のサファイアで仕上げた技術には脱帽だ。自動巻き(Cal.HUB4700)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。サファイアクリスタルケース(直径42mm、厚さ15.7mm)。5気圧防水。世界限定100本。1959万1000円(税込み)。
まずサファイア系は、淡いトーンのブルーとピンク。新素材をお披露目するキャンバスの役を担ってきた7バレルの「MP-11」には、新開発の独自素材ウォーターブルーサファイアが登場した。透明度の高い“薄い水色”は従来にはない色調だ。また「サンブルー」にもサファイアケースがラインナップされ、より複雑な面構成でも、難なく造形している点に驚かされる。積層カーボン系ではブラックテキサリウムを使用した「MP-13」、鍛造カーボン系ではオレンジのマイクログラスファイバーを用いたケースを発表し、さらに表現の幅を広げている。
鮮やかな発色に目を奪われるオレンジセラミックの「ビッグ・バン ウニコ」。ウブロが独自に開発した新素材で、ケースはブロック材からの削り出し。時分秒針やインデックス、インダイアルのサークルもすべてオレンジで統一。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定250本。405万9000円(税込み)。
興味深いのはセラミックス系だ。今年は対照的な色味の「オレンジセラミック」と「ダークグリーンセラミック」が登場したが、両者は製法がまったく異なる。鮮やかな発色のオレンジは新開発の独自素材をブロック材から削り出し。対してダークグリーンは最初からケースの形状に成型するインジェクションモールディングを採用している。後者はやや色がくすむ傾向があるのだが、ダークグリーンならばそれも許容範囲だ。
ダークグリーンのケースはインジェクションモールディングで成型。オレンジとの価格差は製法の違いによるものだ。リミテッドエディションだが、可能ならオレンジとセットで持ちたい。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定250本。331万1000円(税込み)。
マットに仕上げられたブラックセラミックスのミドルケースに、マジックゴールドのベゼルをトッピング。研磨されたマジックゴールドの表面は、油膜のような独特な質感を見せるため、その対比も実に面白い。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kマジックゴールド×セラミックケース(直径42mm、厚さ14.7mm)。10気圧防水。435万6000円(税込み)。
オンライン限定販売となるリミテッドエディション。2006年初出の「アイス・バン」を復刻させたものだが、デザインに加え、ムーブメントを「ウニコ2」に刷新。マットな質感を強調するが、その分、面取りの美しさが映える造形だ。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックス×タングステンケース(直径42mm)。10気圧防水。世界限定100本。331万1000円(税込み)。
「ビッグ・バン」史上初となる径38mmケースを採用。スモールケースと3針レイアウト(=タイムオンリー)は、ウブロ流の“クラシック”を表現したもの。今年は18Kキングゴールド、Ti、2色のセラミックスのケースで、ダイアルはそれぞれブルーとブラックの2色展開。自動巻き(Cal.HUB1115)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。セラミックケース(直径38mm、厚さ9.4mm)。10気圧防水。210万1000円(税込み)。
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