ここ数年の時計業界では、消滅したブランドを復活させ、“代表的な”モデルとともに市場に返り咲かせるという売り出し方が、大きなトレンドとなりつつある。フランスの独立系ブランドであるデパンセル創業者のクレマン・メイニエとそのデザイナーのマチュー・アレグルは、1976年に発表されたアミダ「デジトレンド」を復活させた。「デジトレンド・テイクオフ」である。
自動巻き(Cal.Soprod NEWTON P092)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。SSケース(縦39×横39.6mm、厚さ15.6mm)。5気圧防水。国内未入荷。参考価格15万2900スイスフラン(約52万8000円)。
[2024年6月19日公開記事]
ジャンピングアワーのUFO、21世紀に再び現れる
フランスの独立系ブランドであるデパンセル創業者のクレマン・メイニエとそのデザイナーのマチュー・アレグルは、1976年に発表されたアミダ「デジトレンド」を復活させた。復活モデルの名は「デジトレンド・テイクオフ」である。
アミダ、そして「デジトレンド」とは?
スイスの時計業界において、1970年代は創造性が際立っていた時代であったことは良く知られている。フォルム、カラー、時刻表示の方法など、各ブランドのデザイナー達は腕時計というフィールドで大胆な表現を試みていた。
こういったブランドの中に、ジャンピングアワーを専門としたアミダがある。名前だけでは、現代人は大して気に留めることもないだろう。だが、時計コレクターらにとっては、1976年に開催されたバーゼルワールドの記憶がある。このブランドは、スイスのグレンヘンで1925年に誕生した。その後モントルーに移り、その時期にこの「デジトレンド」を発表した。真上からでなく、腕時計を横から見て時刻を確認する、ユニークなデザインだ。
“未確認飛行物体“とも呼ぶべき、同様の形態をした腕時計は他社からも同じ年に発表されていた。ジラール・ペルゴのデジタルウォッチ「キャスケット」(2022年、ジラール・ペルゴによって復活)がそれである。ブローバの「コンピュートロン」も同じデザインのアプローチだった。
時計業界の“未確認飛行物体“はクォーツ革命による変化を乗り越えられず、アミダは1979年に事業活動を停止してしまった。そして現在、フランスの独立系ブランドであるデパンセルのクレマン・メイニエとそのデザイナーであるマチュー・アレグルが、ほぼオリジナルの形でデジトレンドを復活させたのである。
アミダ「デジトレンド・テイクオフ」が登場
新しく登場したデジトレンド・テイクオフは約40mmの横幅があり、316Lと呼ばれるステンレススティール製のケースでできており、5気圧防水を備える。この特異なケースの形状は、“パイロット向け”と呼ぶにふさわしい。時刻を確認するためには上から時計を見るのではなく、横からのぞき見るのだ。このようなデザインである理由は、パイロットが操縦桿から手を離したり、手首を返したりせずに時間を確認するためだ。パイロットは飛行中に、視線を少しずらすだけで時刻を確認できる。
時刻表示方法がユニークだ。時表示は1時間ごとに時刻が切り替わるジャンピングアワー、分表示もディスクを使って表示させる手法を取っているのだ。ムーブメント上部には、この表示形式のために2枚のディスクが水平に配されている。プリズム機能を持つサファイアクリスタル製風防は、時、分のスケールが記された2枚のディスクを90度反射して垂直に映し、実際よりも大きく見せる。このシステムはLRD(Light Reflecting Display)と呼ばれ、1973年4月5日に特許が取得された。
ムーブメントは2万8800振動/時の自動巻き式で、約44時間のパワーリザーブを保持する。一部がトランスパレント仕様となっている裏蓋から、このムーブメントが鑑賞可能だ。なお、搭載ムーブメントはソプロード社の上位モデルである「ニュートン」だ。新しいパーツを使用したモジュールが、時分表示のためだけに開発された。
付属するストラップは、人工皮革であるアルカンターラ製。アンスラサイトカラーのもので、オレンジカラーの仔牛革で裏打ちされている。「デジトレンド・テイクオフ」はすでに予約開始されており、納品は2024年8月から予定されている。
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