男が身につけられるアイテムは意外と限られている。言うまでもなく、腕時計は数少ない男でも多種多様に楽しむことができるアイテムだ。だが、日本人にはなじみが薄いが、もうひとつ、男でも嗜むべきアイテムがある。それが“香り”だ。目には見えねども、うまく身にまとえば、その効果は絶大。そこで新連載のこのコラムでは、長年女性誌の編集に携わってきた敏腕女性編集者であり、エッセイストでもある麻生綾氏が“男の香り”の事始めを指南する。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
キラキラとした夏の太陽が似合いそうなオードパルファム4種
13世紀より続く世界で最も古い薬局、イタリア・フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ初のオードパルファム。古書を思わせるパッケージまでもが麗しいジェンダーレスの4つの香りは、いずれもメディチ家の歴史と密接に結びついた植物にインスパイアされたもの。(中央から時計回りに)ジャルディーニ メディチェイ ビッザリア、同マグノリア、同ジェルソミーノ、同アイリス。各50ml、2万8600円(税込み)。
「時計と同じく手首につけるもの」として、こうしたフレグランスについての連載の機会を頂戴した。男性に香りについて指南するのは初めてで、少々緊張しているのだけれど、「こうあってほしい」という願いを込めつつ、『クロノス日本版』をお読みの皆さまにおすすめのフレグランスをセレクト&ご紹介していきたいと思う。
さて、前提から少しばかりもの申したいことがある。「手首につける」、うーん、決して間違いではないのだけれど、ややありふれた使い方かも? 確かにパルスポイント、すなわち手首や首筋のような脈打つ場所にひと垂らし、あるいはひと吹きするのは王道の使用法ではある。がしかし、どうせならこれを機会に新しい、よりさりげないつけ方もぜひ覚えてほしい。
まず、アルコール入りの通常のフレグランスの場合、太陽の下に晒されやすい手首や首元につけると、肌にかぶれを起こしたりシミをつくったりする危険がある。なんなら、製品によってはそのリスクを避けるためのアルコールフリーのサマーフレグランスが展開されているくらいだ。また、ご存じの通り、日本の夏は高温多湿。欧米などと違って香りがこもりやすく、下手に上半身にまとうと周囲への迷惑になるだけでなく、つけた当人が酔ってしまうことも。
なのでこれからの季節、圧倒的おすすめは、首は首でもパンツで隠れる足首あたりに吹きつける使い方。体勢を変えたときなどに思い出したようにふわりと香り立つ感じが、こなれ感抜群、かつ、この場所ならうっかり多めにつけてしまっても“香害”になりにくい。せっかく香りをまとうなら、「香水をつけている人」ではなく、「なんだかいつも爽やかな人」「いい匂いのする人」そういう存在になりたいではないか。
そんな香り事始め、あるいは再出発にぴったりなのが、発売されたばかりのサンタ・マリア・ノヴェッラ初のオードパルファム4種。これがどれも軽さとふくよかさが同居した本当にいい香りで、何よりキラキラとした夏の太陽が似合いそうだ。個人的に一番好きなのは、ちょっぴりセンシュアルなジェルソミーノ(ジャスミン)。老若男女、全方位的に受けがよさそうなのはビッザリア(柑橘)だろうか。ちなみに残るマグノリアとアイリスだが、ひと嗅ぎではかなりフェミニンな印象を受けるにもかかわらず、お店の方によると男性人気がとても高いとのこと。時代だなあとつくづく。
麻生 綾
美容編集者/エッセイスト&コピーライター。東京育ち。女性誌の美容ページ担当歴30余年、『25ans』『婦人画報』(ともにハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)各誌で副編集長、『etRouge』(日経BP)で編集長も務めた。趣味も美容、そして美味しいもの探し、鬱アニメ鑑賞、馬の骨活動。