【インタビュー】ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEO「ニコラ・ボス」

FEATURE本誌記事
2024.07.17

歴史的にハイジュエラーとしてその名を馳せるヴァン クリーフ&アーペル。同メゾンはジュエリーと時計をどう融合させてきたのか? プレジデント兼CEOのニコラ・ボスは語る。

鈴木幸也(本誌):取材・文
Edited & Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]


“マス”よりも専門誌を読む層へのコミュニケーション

ニコラ・ボス

ニコラ・ボス
ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEO。1992年にカルティエ現代美術財団に参画し、リシュモン グループにおけるキャリアをスタート。2000年にヴァン クリーフ&アーペルに入社、ハイジュエリーメゾンのクリエイティブディレクター兼マーケティング ディレクターを務める。同メゾンのヴァイス プレジデントなどを経て、13年1月より、ヴァン クリーフ&アーペルのプレジデント兼CEOに就任。ハイジュエラーの枠を超えて、複雑機構を詩的に解釈・表現した「ポエティック コンプリケーション」を具現化した数々の傑作時計やオートマタによって、メゾンをさらに飛躍させた。

「我々のスタート地点はあくまでもメゾンのイメージ、そしてメゾンのアイデンティティーです。時計作りとジュエリー作りは、まずは同じストーリーや同じインスピレーション源から始まります。チームの構成に関しても、時計チームとジュエリーチームが分かれているというよりも常に共に仕事をし、デザインスタジオにおいても、ジュエリーと時計のデザインを共に手掛けています。そこから生み出される時計、ジュエリー、そしてオブジェは、すべてメゾンのアイデンティティーを伝えるためのいわば“手段”として考えています」

 すべてのアイテムを同じコンセプトで創造しているということか?

「戦略として最も重要なのは、ジュエリーも時計も、どちらも同じ方向に向かって、同じアイデンティティーを強く持つことだと思っています。同じストーリーを忠実に語りながらも、違う表現の仕方、すなわち時計でしか具現化できない機構を通して表現の在り方を探求し、オブジェの場合はオートマタでしか表現できないようなメカニズム、ジュエリーの場合は動きがないさまざまなかたちで、同じストーリー、同じメゾンの哲学を表現することが重要だと考えます」

 以前、「マーケティングはしない」と語っていたが、その中でこれだけの成功を収めている理由は何だと思うか?

「マーケティングにはいろいろな定義があるが、一般に使われている定義で言うと、我々は確かに市場が期待する商品をスタート地点とはせずに、我々として望む作品を出発点として制作に取りかかります。ここが大量生産品との違いです。しかしながら、このようにウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブという展示会を活用して、我々はより多くの人々にヴァン クリーフ&アーペルが手掛ける作品を紹介するという活動をしています。その活動の意義を理解したうえでの“マーケティング”という仕事は、もちろんしており、それをとても重要だと思っています」

 その結果として、広く知れ渡ることが今の成功につながっているとボスは断言する。「一目見て美しいと思ってもらいたいと同時に、こういった動きのあるアニメーションの効果を多くの時計愛好家に楽しんでもらうことが我々の望むところです。つまり“マス”よりも専門誌を読むような層に気に入ってもらうことが、我々の目指す“マーケティング”なのです」。

レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ

ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ」
ホワイトゴールドとイエローゴールドにプリカジュール エナメルを施して具現化された蝶がオンデマンドモジュールによって飛び立ち、花や茎を揺らしながら時を告げる「ポエトリー オブ タイム(詩情が紡ぎだす時)」の世界観を表現した新作。花や茎が決して一様には揺れない遊び心に〝詩的な複雑機構〟の神髄を見ることができる。自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径38mm)。3気圧防水。2877万6000円(税込み)。10月発売予定。



Contact info: ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906


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