「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2024」で魅力的だった腕時計を『WatchTime』ドイツ版編集部が選ぶ!

FEATUREWatchTime
2024.07.04

人気モデルからコンプリケーションの新作まで、「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2024」は素晴らしい腕時計のオンパレードだ。スイス・ジュネーブで4月9日(火)から15日(月)まで開催され、54のブランドが参加した。コレクターや愛好家にとっては天国のようなこのイベントで発表された新作の中から、『WatchTime』編集部のメンバーのお気に入りを紹介する。

ウォッチズ&ワンダーズ2024

Originally published on watchtime.net
[2024年7月4日公開記事]


『WatchTime』ドイツ版編集部が選ぶ、お気に入りの腕時計

 「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2024」は、スイス・ジュネーブで4月9日(火)から15日(月)まで開催される腕時計の一大イベントだ。このイベントには54のブランドが参加した。『WatchTime』ドイツ版編集部のメンバーである、ダニエラ・プッシュ、イェンス・コッホ、リュディガー・ブーハー、シャルロッテ・フリース、マルティナ・リヒター、アレクサンダー・クルップ、ヨハネス・ベーアが、「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2024」で展示された腕時計の中から、お気に入りの1本を選んで紹介する。


『WatchTime』ドイツ版編集コンテンツ長、ダニエラ・プッシュのお気に入り時計

ジャガー・ルクルト「デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアル」Ref.Q6202420
手巻き(Cal.388)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KPGケース(直径44mm、厚さ14.7mm)。3気圧防水。要価格問い合わせ。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

 ジャガー・ルクルトの「デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアル」は、今年発表された腕時計の中で、技術的なハイライトのひとつでしょう。この時計のムーブメントには多数の複雑機構が搭載されており、精度面での妥協はありません。

 直径44mmの18Kピンクゴールドケースは、19世紀の懐中時計からインスピレーションを得ています。複雑機構を強調した文字盤も特徴的です。文字盤上のダークブルーのラッカーで彩られた9時位置の部分には、3軸トゥールビヨンが配されています。一方、文字盤上の右側の部分には、ムーンフェイズやパーペチュアルカレンダーなど3つのダイアルが配されています。

 シースルーバック仕様の裏蓋からは、ムーンフェイズと2100年まで調整不要のパーペチュアルカレンダーのメカニズムを担う自社製手巻きムーブメント、Cal.388を鑑賞できます。Cal.388は数多くの複雑機構に加えて、約46時間のパワーリザーブを備えています。


『WatchTime』ドイツ版編集者、イェンス・コッホのお気に入り時計

イェンス・コッホ

チューダー「ブラックベイ」Ref.M7941A1A0NU-0003
自動巻き(Cal.MT5602-U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。200m防水。63万5800円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570

 本作は見た感じ、細かな部分の変更のみに思えます。ただ、前より「ブラックベイ」が好きになりました。直径41mmのサイズは完璧です。クラシックなカラー、200m防水という機能は、前のモデルよりも充実しています。ベゼルだけは、アルミニウムではなくセラミックスだといいなと思いますが。新しい5連のブレスレットは魅力的なオプションですが、個人的にはロレックスの「ジュビリー」ブレスレットに似すぎていると思います。

 デザインに加え、ムーブメントも注目点だと思いますね。ケニッシ供給によるムーブメント、Cal.MT5602-Uがこの腕時計では採用されています。約70時間のパワーリザーブと、METAS認証の耐磁性という点が、Cal.MT5602-Uの特徴です。残念ながら、チューダーの最初のMETAS認証を受けた腕時計である「ブラックベイ セラミック」にはあったシースルーバック仕様ではありません。

 コストパフォーマンスの観点から見れば、ロレックスの姉妹ブランドであるチューダーは、時計業系でもトップクラスでしょう。新しいステンレススティールブレスレットが付属したブラックベイの価格は、63万5800円(税込み)です。


『WatchTime』ドイツ版シニア マネージング エディター、リュディガー・ブーハーのお気に入り時計

リュディガー・ブッハー

IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」Ref.IW505701
自動巻き(Cal.52640)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。Ptケース(直径44.4mm、厚さ15mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。(問)IWC Tel.0120-05-1868

 従来のパーペチュアルカレンダーを搭載した腕時計は、2100年にその訴求力の多くを失うことになるでしょう。2100年の3月1日に、不可避の調整を行う必要があるからです。

 IWCは「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」で、この問題に全面的に向き合った腕時計を提案する、初のメジャーブランドとなりました。セキュラー・パーペチュアル・カレンダーは、クルト・クラウスのパーペチュアルカレンダーをベースに、グレゴリオ歴の例外を制御する400年ホイール搭載の省スペース型モジュールを追加しています。つまり、2100年、2200年、2300年は閏年ではないという例外です。

 このため、ステファン・イーネン率いるIWCの開発チームは、4500年に一度しか調整を必要としない高精度ムーンフェイズを構築しました。これにはコンピューターを使用した何週間もの計算を要しただけでなく、3つの中間歯車の追加が必要でした。

 厚さ15mmのポルトギーゼ・エターナル・カレンダーは「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー」より0.1mmだけ厚く、ケースサイズは同じく直径44.4mmとなっています。プラチナ製のケースに、ホワイトラッカー仕上げの文字盤を備えています。ムーブメントは、約7日間のパワーリザーブを保持する、新しい自社製自動巻きムーブメント、Cal.52640を搭載しています。


ライブコミュニケーション長、シャルロッテ・フリースのお気に入り

Charlotte Frieß

ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル ブリーズ デテ」Ref.VCARPERU00
自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径38mm)。3気圧防水。2996万4000円(税込み)。10月発売予定。(問)ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906

 ヴァン クリーフ&アーペルはその独特なデザインで知られ、それは多くの場合、自然や動物、文化に影響を受けています。このメゾンはジュエリーと結びつけられることが多いですが、詩的にデザインされた腕時計で人々を魅了しており、複雑機構と装飾された文字盤を備えているものも数多く見られます。

「レディ アーペル ブリーズ デテ」は、自動巻きの機械式ムーブメントを搭載し、夏の朝の新鮮さを表現しています。ホワイトゴールドとイエローゴールドにプリカジュール・エナメルを施して表現された蝶が文字盤を飛び回り、ブルーの花を揺らしながら時刻を表示するのです。ブルーとオレンジ、それぞれの蝶が12時間を担い、昼夜がスマートに表示されています。

 シャンルヴェとヴァロネのエナメル、ツァボライトとスペサタイトガーネット、そしてマザー・オブ・パールが細密画と組み合わされ、このメゾンが擁するエナメル職人もしくは画家と時計師が持つ職人技とクリエイティビティを伝えています。この腕時計の輝きは、インデックスとベゼルに配された多くのダイヤモンドで高まり、グリーンのアリゲーターストラップは、花のモチーフとのカラーコーディネートとなっています。


『Uhren Magazin』編集長、マルティナ・リヒターのお気に入り時計

マルティナ・リヒター

ユリス・ナルダン「フリーク S ノマド」Ref.2513-500LE-4A-GUI/1A
自動巻き(Cal.UN-251)。33石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ti×カーボンファイバーケース(直径45mm、厚さ16.65mm)。30m防水。世界限定99本。価格要問い合わせ。(問)ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791

 ユリス・ナルダンの「フリーク・S・ノマド」を完全に理解するには、少々 "フリーク "になる必要があります。2001年に初公開されたこの時計は、ムーブメント全体が回転することで、時刻を表示するという、極めて非凡なものでした。具体的には、近未来的な外観を持つムーブメントが回転し、分針の役割を果たしたのです。そして時はディスクで再現され、それを読み取るためのインデックスが設けられました。

 ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2024では、「フリーク」の特殊な機構を反映した、巨大で非常に印象的なフリークの模型がユリス・ナルダンのブースに掲げられたのです。

 今年、ユリス・ナルダン発表したモデルは、未来的なムーブメントと対をなすように、回転するムーブメントに、歴史的なギョーシェ機械による彫りが施されました。そして分表示は、今までのモデルに同じく、ムーブメントが直接、つまりフライング アワー カルーセルの先端が表示します。

 このカルーセルと対をなすのが、垂直なディファレンシャルギア(差動装置)を経由することで同調する2つのテンプです。これらはシリコン製で、脱進機はダイアモンドコーティングされたシリコン素材のダイアモンシル製です。2001年に、時計メーカーとして初めて、振動と脱進機にシリコンを採用したユリス・ナルダンは、時計産業におけるこういった新素材のパイオニアなのです。

 約72時間のパワーリザーブを備えた未来的なフリークSノマド・ムーブメントは、カーボン製の外殻に収められた45mmのチタン製ケースに収められています。この特別な腕時計は99本の限定生産です。


編集者、アレクサンダー・クルップのお気に入り時計

アレクサンダー・クルップ

オートランス「レトロヴィジョン‘47」Ref.ED20-SP00
自動巻き(Cal.ED20-SP00)。SSケース。(問)ノーブル スタイリング Tel.03-6277-1604

 レトロファンとしては、この“展示”を逃すことはできません。“展示”は適切な言葉です。なぜなら、オートランスは1940年代製のラジオをモチーフとしたこの腕時計をウィンドウディスプレイ用として製作し、自らの創造性を伝えようとしたのですから。

 この腕時計右側、周波数表示に相当する部分には、文字盤があります。もう半分の左側部分には、この腕時計専用のトゥールビヨンが“スピーカー保護カバー”の下から見えています。ラジオのヒスイ色の大理石調ベークライトケースは、手描きによって再現されたものです。リュウズはケースの下部中央に配されています。オートランスがファンの前向きな声に応じて、このモデルを一般販売に向けて生産してくれることを願います!


インターン、ヨハネス・ベーアのお気に入り時計

ヨハネス・ベーア

パルミジャーニ・フルリエ「トリック プティ・セコンド」Ref.PFC940-2010004-300181
手巻き(Cal.780)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。Pt950ケース(直径40.6mm、厚さ8.8mm)。820万6000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com

 大きくて騒がしい、人の注目を集めるために叫んでいるような腕時計の時代は終わりました。「トンダPF」シリーズで知られているパルミジャーニ・フルリエは、ぱっと見にはわからないがすぐに魅了されてしまう、落ち着いて洗練されたエレガンスにいつも注力してきたのです。

 新しいトリックのデザインは、一度見ただけでは見逃されがちな、シンプルなふたつの点を尊重しています。ひとつは素材の選択。ケース、文字盤、ムーブメントはゴールドとプラチナだけで作られています。もうひとつは、洗練された仕上げ技術によってもたらされる魅力的で落ち着いたデザインのために、多くの労力が投入されている点です。

 この腕時計を完成させるのがアリゲーターストラップで、イタリア・ナポリの最高の仕立てであるプント・ア・マノのステッチに敬意を表しています。つまりハイレベルな優美さに打ちのめされるということです。


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