独自のカーボン複合素材であるNORTEQ(ノルテック)と、ラバー製ショックアブソーバーを用いた耐衝撃構造によって、タフなスケルトンウォッチというユニークなキャラクターを確立した「ワイルドワン スケルトン」。2024年の新作として発表された日本限定モデル「ワイルドワン スケルトン JP」を筆頭に、鮮やかなカラーバリエーションの「ワイルドワン スケルトン コーラル」と「ワイルドワン スケルトン ゲッコー」について、その魅力を深掘りする。
Photographs by Masanori Yoshie
野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2024年7月5日公開記事]
「ワイルドワン スケルトン」の日本限定カラーモデル「ワイルドワン スケルトン JP」
Cal.N08Sは、汎用機をベースとしたスケルトン仕様の機械式自動巻きムーブメントだ。ノルケイン独自の耐衝撃構造に守られているので、アクティブシーンでも気兼ねなく使用することができる。自動巻き(Cal.N08S)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。ノルテックケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。日本限定。93万5000円(税込み)。
2022年に発表され、革新的な素材がもたらす軽量さと驚くべき頑丈さから瞬く間に注目を集めたノルケインの「ワイルドワン」。2023年にはスケルトン仕様のムーブメントを採用した「ワイルドワン スケルトン」をコレクションに加えた。
スケルトンウォッチは、文字盤やムーブメントにオープンワークを施し、ムーブメントの機構を風防越しに存分に鑑賞できるという、機械好きにとっては堪らない魅力を持つ。しかしその半面、衝撃を受けた際に部品の歪みや破損が生じやすい。ゆえにスポーツウォッチでスケルトン構造のモデルは稀である。ワイルドワン スケルトンの登場は、その常識を覆すほどの衝撃をもって市場に受け入れられた。
その秘密は、独自のカーボン複合素材であるNORTEQ(ノルテック)と、ラバー製ショックアブソーバーを用いた耐衝撃構造にある。ムーブメントをチタン製のコンテナに格納し、さらにラバー製ショックアブソーバーを被せ、ノルテック素材のケージで保護している。この構造は、強度を向上させるだけでなく、色とりどりのショックアブソーバーとノルテックの組み合わせによって、個性的なカラーリングを生み出すことができるというメリットもある。
そして今年、ホワイトとブラックのカラーリングが特徴の日本限定モデル、「ワイルドワン スケルトン JP」が発表された。
スケルトンムーブメント、ノルケインキャリバーN08S
本作の特徴は、何といってもオープンワークが施されたムーブメントにある。搭載されているCal.N08Sは、スケルトン構造と耐衝撃性を両立させるべく、歯車の受け部分などの支持点のすべてを2本以上のアームで保持する構造だ。5000Gまでの耐衝撃性を備えていることをうたうワイルドワン。そのスペックは、スケルトン仕様の本作、ワイルドワン スケルトン JPにも受け継がれている。
Cal.N08Sは汎用機をベースとしたムーブメントであり、パワーリザーブなどのカタログ上の仕様に傑出した点はない。しかし、多くのブランドの腕時計に採用され、実地の中で磨かれてきた強固な信頼性は、スポーツウォッチが活躍するアクティブなライフスタイルにとって、まさにうってつけである。さらにCOSC公認クロノメーターを取得しており、高い精度が保証されている点も魅力だ。
ムーブメントを鑑賞できる両面サファイアクリスタル仕様
風防はサファイアクリスタル製であり、また裏蓋も同じくサファイアクリスタルを用いたトランスパレント仕様だ。そのため、このスケルトン仕様のムーブメントの"抜け感"を堪能することができる。クリアな視界を確保する風防には、ノルケインのロゴが印刷されており、まるでロゴ自体が浮遊しているような印象を与える。
スケルトナイズされた文字盤がしっかりと見えるように、文字盤は必要十分なレベルにまで削ぎ落されている。アワーマーカーはミニッツスケール上に、5分ごとに配されている。12時位置のアワーマーカーのみ、2本並べて配されているデザインだ。スケルトンウォッチでは、視認性が犠牲となってしまうケースが珍しくはない。だが、本作では立体的な金属製のアワーマーカーと針にスーパールミノバが塗布され、実用にも十分な視認性が確保されている。
裏蓋からは、ノルケインのロゴが配された自動巻きローターやテンプの動きも見て楽しむことが可能だ。巻き上げ時のリバーサーの動きまで見られるように、スケルトナイズされている点も興味深い。
注目すべきはラバーストラップ
スポーツウォッチらしさをより強調しているのが、ケースと同じカラーリングのラバーストラップだ。ホワイトの部分にはミラネーゼパターンがあしらわれ、しなやかに仕上げられている。ワイルドワンは、スイスのサプライヤーの力を結集して誕生したコレクションであり、それはBIWIが製造を担うラバーストラップも例外ではない。定評あるBIWIらしくストラップにバリは認められず、その成型技術の高さがうかがえる。
ケースとの接合部はぴったりと噛み合っており、一体感のあるデザインも魅力だ。ノルテック製のバックルが組み合わされており、良好な装着感を得ることができる。
ノルケインは、動物保護の観点から順次レザーストラップなどの革製品の使用を廃止する方針を掲げており、そのサステナブルな姿勢は、本作にも共通している。
2024年の新色モデル
ワイルドワン スケルトンの2024年の新作は、日本限定モデルだけではない。エネルギッシュなレッドとグリーンがまぶしいふたつのモデルも発表された。ひとつが、「ワイルドワン スケルトン コーラル」、もうひとつが「ワイルドワン スケルトン ゲッコー」だ。スケルトン仕様のダイアルとムーブメントを採用しつつ、ショックアブソーバーやラバーストラップ、アワーマーカー、針に塗布されたスーパールミノバなどに鮮やかなカラーが取り入れられている。腕元を露出する機会が増える、これからの季節やスポーツシーンなど、カジュアルな場面を中心に活躍すること間違いなしの新作である。もちろん、優れた耐衝撃性や高精度なムーブメントなどの特徴は、他のワイルドワン スケルトンと同一だ。
鮮やかなレッドカラーのショックアブソーバーとラバーストラップを採用したモデル。高い耐衝撃性や防水性は、他のワイルドワン スケルトンと共通。自動巻き(Cal.N08S)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。ノルテックケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。90万2000円(税込み)。
明るいグリーンを採用したモデル。ミニッツトラックや針にもグリーンがちりばめられ、統一感のあるカラーリングの仕上がりだ。自動巻き(Cal.NN08S)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。ノルテックケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。90万2000円(税込み)。
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