時計業界で長く仕事を続けている関係者ならご存じだろう。かのニコラ・シトボンが、カミーユ・フォルネ アジアパシフィックのCEOとして再び日本に戻ってきたのだ。時計メーカーの日本法人社長としてキャリアを重ねてきた彼は、カミーユ・フォルネの舵取りをどうしようと考えているのか?
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
カミーユ・フォルネはレザーストラップの王様です
カミーユ・フォルネ アジアパシフィックCEO。1975年、フランス生まれ。在日フランス商工会議所を皮切りに、ゼニスなどを経て、2006年からスウォッチ グループ ジャパンの代表取締役となる。その後、ロンシャン ジャパンの社長兼CEOを経た後、総合ラグジュアリーグループであるブルーベルの韓国法人でも社長兼CEOとなる。後にコンサルティング会社を経営するも、カミーユ・フォルネ本社に招聘され、2024年2月から現職。
「カミーユ・フォルネのストラップは、トップの時計ブランドが扱っています。ですから長年、憧れのブランドのひとつだったのですよ。本社の人間とコンサルティングの話をする中、日本を含むアジア全体を見てくれないか、という話になったのです」
独立した法人だったカミーユ・フォルネジャポンは日本支社に改組され、シトボンはそのCEOとなった。就任後、彼は店舗を回り、時計専門店にカミーユ・フォルネのストラップがないことを疑問に思った。
「カミーユ・フォルネというブランドは、時計好きには浸透しています。ですが、時計専門店にはない。ベルトを買いたいというお客さまがいても、ブティックに行くしかなかったのですね。今後、取り扱い店舗は増やしたいし、特にトップのリテーラーには扱っていただきたいですね」。最終的に目指すのは、20〜30店舗での取り扱い。併せて彼はカミーユ・フォルネをレザーの総合ブランドに育てようと考えている。バッグメーカーのロンシャンや、韓国LVMHの免税部門での経験を持つ彼が、カミーユ・フォルネに招聘された一因だろう。
腕時計用ストラップの世界でさまざまな革新を起こしてきたカミーユ・フォルネ。その好例が、簡単に交換可能なアビエ式と、裏にカウチュを貼り込んだアンチ・スウェットだ。写真のストラップは、表面にミシシッピ・アリゲ-ターの竹斑をあしらったもの。4種類のサイズと5種類のカラーから選択可能だ。素材、色、仕上げに関して700を超えるバリエーションを誇る。4万8400円(税込み)~。
「現在日本では、ストラップの売り上げが50%を占めています。バッグなどの革小物も拡大することでその比率を35%まで下げたい。現在、直営店と百貨店を合わせて5店舗ですが、10店舗まで広げたいですね」
革小物のバリエーションを広げるため、フランス本社は老舗のグローブメーカーを買収したという。「1社はシャネルが、もう1社はカミーユ・フォルネが買収しました。一貫したノウハウを維持したいのです」。
しかし、レザーストラップの世界は競争が激しい。対して、ブティックで受け付けているオーダーメイドを、今後ホールセールにも拡大して対応するという。
「もともとこのブランドは、カスタマイズで有名でした。今後は、専門店にはタブレットを置いて、シミュレーターで注文できるようにします。私たちは日本にアトリエがあるから、いろんなストラップを作れますしね」。彼が最終的に目指すのは、カミーユ・フォルネがかつての立ち位置を取り戻すこと、だ。
「カミーユ・フォルネといえば、15年前は革ベルトのキングであり、本当に輝いていた。私はそれを取り戻したいのです」
https://www.webchronos.net/features/105811/
https://www.webchronos.net/features/63209/
https://www.webchronos.net/features/70436/