フライバックに特化した新型ムーブメントを搭載して誕生したブレゲの「タイプ20」と「タイプXX」。この傑作パイロットクロノグラフに、待望のブレスレットモデルが追加された。
Editet by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
軍用モデルに倣った「タイプ20」と、民生用モデルに倣った「タイプⅩⅩ」
12時間積算計を備えた民生用モデルのデザインを踏襲した「タイプXX」。3時位置には大型の15分積算計が配され、経過時間の判読性を高めている。自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。336万6000円(税込み)。
1930年代より航空計器の製造に着手したブレゲ。以降同社は航空界との関わりを深め、50年代にはフランス空軍に対し、1100本ものクロノグラフウォッチ「タイプ20」を納入した。
軍の要求仕様には、視認性や耐負圧性、回転ベゼルの装備等が定められていたが、中でも重要視されていたのは、クロノグラフ起動中に帰零と再スタートを一瞬で実行できるフライバック機能であった。複雑なフライバッククロノグラフの量産に成功した同社は、本機を民生用モデル「タイプXX」として派生させ、以降もアップデートを加えていく。
フランス空軍に納入したモデルにルーツを持つ「タイプ20」。スケールを廃した回転ベゼルやツーカウンターのレイアウトが、武骨な印象を強める。自動巻き(Cal.7281)。34石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。336万6000円(税込み)。
2023年6月に発表されたタイプ20とタイプXXはその末裔だ。モデル名が示す通り、前者は軍用モデル、後者は民生用モデルに倣ったデザインが与えられた。だが、原点を感じさせるのは外見だけではない。約4年の歳月をかけて誕生した新型ムーブメントは、フライバック機構にフォーカスした設計を持つ。その要は、各カウンターを確実にリセットするため、枝分かれしたリセットハンマー。これがフライバック機構の信頼性向上に大きく寄与した。
そんな本作に今回、待望のブレスレットモデルが加わった。スポーティーな3連のリンクはヘアラインを主体として一部にポリッシュを取り入れ、クラシカルな本作をよりモダンかつエレガントに見せてくれる。特筆すべきは、工具を使うことなく微調整が可能なイージーフィットシステムの存在だ。環境や体調に合わせて即座に対応できるのはうれしい限り。
原点回帰したクラシカルなデザインと、傑出したムーブメントによって、華々しくデビューを飾ったタイプ20とタイプXX。ブレスレットの登場は、その存在感を益々高めていくことだろう。