伝説の時計師として知られるアブラアン-ルイ・ブレゲによって創業されたブレゲ。ブレゲ針やブレゲ数字などの独自の要素や、マリー・アントワネットやジョゼフィーヌといった歴史上の人物たちに愛された歴史を持つ、高級腕時計ブランドだ。そんなブレゲを、5つのポイントから紹介する。
[2024年8月14日公開記事]
1775年創業の老舗時計ブランド、ブレゲ
伝説の時計師、アブラアン-ルイ・ブレゲによって創業されたブレゲは1999年以来、スウォッチグループ傘下のブランドである。ブレゲは2003年にヌーベル・レマニアのムーブメント工場を吸収し、マニュファクチュールとしての地位を確立した。また、2011年にはケースメーカーであるファーブル・ペレを吸収合併している。
アブラアン-ルイ・ブレゲは時計に関する数多くの発明で知られている。たとえば、“パラシュート”と呼ばれる衝撃吸収装置、独自の書体であるブレゲ数字、“アップル・ハンド”と呼ばれるブレゲ針などだ。ちなみに、鍵を用いない巻き上げ方式も彼が発明したものである。かつてはリュウズではなく、鍵を用いて主ゼンマイを巻いていたのだ。
だが、なによりも有名なのはトゥールビヨンの発明だろう。現在のブレゲは、世界でも有数のトゥールビヨンメーカーだ。トゥールビヨンの分野において、過去10年間で900以上の特許を取得している。
スイス・ジュウ渓谷にある近代的なマニュファクチュールである同社は、その名を冠した偉大な時計師の遺産を大切に受け継いでいる。ネオクラシック様式のケース、青焼きのブレゲ針、そしてアブラアン-ルイ・ブレゲが1786年に導入したギヨシェ文字盤などがその一例だろう。
その一方で、革新的な技術も取り入れている。テンプやアンクル、ヒゲゼンマイをシリコン製にしたほか、7万2000振動/時というハイビートムーブメント、ソヌリ機構のための磁石式リピーター用ガバナーなどである。
自動巻き(Cal.581DPE)。57石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。Ptケース(直径43.9mm)。100m防水。4079万9000円(税込み)。
①軍用パイロットウォッチとして誕生した「タイプ XX」
パイロットウォッチの「タイプ XX」と、その兄弟格である「タイプ XXI」および「タイプ XXII」は、ブレゲのスポーティなコレクションだ。その歴史が始まったのは1950年代初頭、フランス空軍がパイロットにクロノグラフを搭載した腕時計の供給を考え始めたときである。
タイプ XXはフランス航空省から以下のような仕様での設計が求められた。夜光インデックスと針を備えたブラック文字盤、加速度や気圧の変化に耐えられるムーブメント、そしてフライバック機構と回転ベゼルだ。
タイプ XXのプロトタイプは、1953年にフランス航空省技術局によって認可され、1954年以降、フランスは数多くのタイプ XXをブレゲから購入していた。
また、フランス空軍はブレゲに民間人へのタイプ XXの販売を認めていた。1971年に発表された第2世代は、軍用としてよりも民間向けに多く販売されたのである。1995年には第3世代が発表され、2004年にはタイプ XXIが、2010年には高振動ムーブメントとシリコン製脱進機が搭載されたタイプ XXIIが登場した。
自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。
2023年に発表されたタイプ XXには2種類のモデルがある。「タイプ XX 2067」は15分積算計と12時間積算計を備えた民間バージョン。もうひとつは、12時間積算計がなく、30分積算計が配されたミリタリーバージョンの「タイプ 20 2057」だ。なお、タイプ XX 2067のベースとなったのは1957年の「タイプ XX No.2988」である。
タイプ XX 2067の3つのインダイアルには、ベージュとブラウンの蓄光塗料が塗布されている。ミリタリーモデルの系譜に属するタイプ 20 2057は、グリーンのスーパールミノバが採用されたふたつのインダイアルを備え、円錐形のパイロット仕様のリュウズを備えた腕時計だ。文字盤にアラビックインデックスを採用している点も特徴だろう。
自動巻き(Cal.7281)。34石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。
②19世紀に製造された時計の修理にも対応
ブレゲは19世紀に同社が製造した時計の修復も行っている。1870年から1970年のあいだに製造された時計の修理と修復のみを扱う、4人の従業員で構成された特別な部門が存在するのだ。
なお、それよりも最近の時計の修理は、フランス・ロリアンにある工房で行われている。
③ブレゲの顧客に名を連ねる、歴史上有名な女性たち
ブレゲの顧客には、歴史上の有名な女性たちが数多く名を連ねている。なかでも、フランス王妃のマリー・アントワネット、フランス革命期の有名なサロンの主であったコンドルセ侯爵夫人、フランス皇帝ナポレオン1世の妻である皇后ジョゼフィーヌ、そしてナポレオン1世の妹でナポリ王妃のカロリーヌ・ミュラが特に有名だろう。
1810年、ブレゲはカロリーヌ・ミュラの注文に応えて、リピーターを搭載した小さな時計を製作した。同社のアーカイブには、この時計に髪の毛とゴールドの糸をより合わせて作られたブレスレットが取り付けられていたことが書かれている。そのため、この時計は最初期の腕時計のひとつとして知られている。
2002年に発表された、ブレゲのレディス向けコレクションである「クイーン・オブ・ネイプルズ」は、この時計にオマージュを捧げたものだ。
自動巻き(Cal.537/3)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(縦36.5×横28.45mm、厚さ10.1mm)。3気圧防水。750万2000円(税込み)。
④文字盤に書かれたシリアルナンバー
ブレゲの腕時計の文字盤には、ほとんどの場合3桁もしくは4桁の数字が書かれている。これは時計のシリアルナンバー、もしくはその一部だ。
正式なシリアルナンバーは裏蓋に書かれており、3桁もしくは4桁の数字と、場合によっては1文字または2文字のアルファベットで構成されている。そのため、アルファベット部分は違うが数字部分は同じという個体も存在するのだ。
また、すべてのシリアルナンバーは、250から5250の間で付けられている。
⑤青焼きされたブレゲ針
ブレゲの時計の特徴となるのが、青焼きされた“ブレゲ針”だ。この特徴的な形状を持つ針は、28以上もの工程を経て完成する。その工程を大まかに説明しよう。
まず、針はステンレススティールの板からひとつひとつ打ち出される。そして特殊な研磨盤の上でやすりがけや研磨が繰り返され、表面仕上げが施される。その後、針は加熱され、美しい青色へと変化する。職人は自らの経験と訓練された目を頼りに、オーブンや直火を用いて均一なブルーに仕上げるのだ。
青焼きされたブレゲ針という、独自のスタイルを持った時針と分針のペアは、ブレゲというブランドのロゴの一部になっていると言ってもいいだろう。
Contact info: ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
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