ユリス・ナルダンとの深い関係を象徴するかのような、COMMON TIME創業60周年を祝うマリーン トルピユールの限定モデルは、特別なグラン・フー エナメルダイアルが注目ポイントだ。
Text by Shin-ichi Sato
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
ユリス・ナルダン「マリーン トルピユール COMMON TIME 限定モデル」
COMMON TIME創業60周年を祝うモデル。ダイアルはドンツェ・カドラン製のグラン・フー エナメル。シースルーバックから覗くローターには22Kローズゴールドを採用し、華やかさを演出する。自動巻き(Cal.UN-118)。50石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm)。50m防水。限定60本。258万5000円(税込み)。
横浜の元町に店舗を構えるコモンタイム。同店の創業60周年を祝し、ユリス・ナルダンから「マリーン トルピユール COMMON TIME 限定モデル」が発売された。
ユリス・ナルダンのマリーンは、船舶用マリンクロノメーターを起源とするモデルだ。マリンクロノメーターは、GPS等がなかった時代に、時刻と天体の位置関係から現在位置を知る測量法に必須とされた。安全な航行のためにはより高い精度が必要とされ、この分野で高いシェアを誇ったのがユリス・ナルダンであった。ベースとなったマリーン トルピユールは、その系譜を引くモデルだ。コモンタイムは、ユリス・ナルダンの認知度向上に長年にわたって取り組んできたほか、横浜は同ブランドを日本に持ち込んだファーブル・ブラント商会や、マリンクロノメーターのメンテナンスを行ってきた宇津木計器の創業の地であり、本作はそれらの深い関係性を反映したものである。
COMMON TIME 限定モデルの特徴は、ベースとなるダイアル、パワーリザーブインジケーター、スモールセコンド部を別々にグラン・フー エナメルで焼成する「三枚焼き」だ。これはかつての懐中時計に用いられた手法で、インダイアル部にキレのある段差が生まれることが特徴。さらに日付表示小窓を廃し、「Ⅻ」のローマンインデックスをレッドに、スモールセコンドの「60」を創業60周年を祝う意味を込めブルーとした。
マリーン トルピユールは、良好な着用感と、高い巻き上げ効率および精度、視認性が高く評価されるモデルだ。安全な航海を支えたマリンクロノメーターの系譜を引く本作は、荒海のごとき現代を導く1本となることだろう。
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