1924年、“CITIZEN”銘の入った懐中時計が誕生した。「永く広く市民に愛されるように」という思いから生まれたこのブランド名の誕生100周年を記念して発表されたのは、「これまで」と「これから」の進化を感じさせる復刻モデルだ。
Edited & Text by Chieko Tsuruoka (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
「シチズン」の時計誕生100周年を記念した懐中時計
1924年、シチズン時計の前身である尚工舎時計研究所が完成させた、初の懐中時計。「永く広く市民に愛されるように」という思いを込めて、〝CITIZEN〞の銘が与えられた。
そして同社は2024年、「シチズン」の時計誕生100周年を記念した懐中時計を発売した。このモデルは、1924年製の懐中時計の意匠を踏襲するために、シチズンがこれまで培ってきた時計製造技術を投入している。
その開発姿勢が最も表れているのが、ムーブメントだ。本作には、同社が2021年から製造しているCal.0200をベースにした、手巻き式のCal.0270が搭載される。ベースにしたとはいえ、新たに設計を見直した部分が多い。例えば輪列に変更が加えられており、2番車と3番車が大きくなった。開発に携わった土屋建治は、「0200とまったく同じにすることもできましたが、オリジナルの文字盤設計に合わせると、中心からスモールセコンドの位置が近く、バランスが悪くなってしまう」ために、変更を加えたと語った。
1924年に誕生した、シチズン初の懐中時計をオマージュした記念モデル。特徴的な文字盤は電気鋳造によってパターンを与えた後にメッキし、アイボリーのクリア、透明なラッカーを吹き、その後に研磨を施すという工程を踏む。手巻き(Cal.0270)。18石。2万8800振動/時。Tiケース(直径43.5mm、厚さ13.4mm)。日常生活用防水。世界限定100個。特定店限定モデル。予価110万円(税込み)。
また、ブリッジには1924年製のオリジナルを踏襲し、コート・ド・ジュネーブが施された。一方でブリッジへのダイヤモンドカットによる面取りや、地板へのペルラージュ装飾は新仕様だ。この凝ったムーブメントは、トランスパレント式の裏蓋から観賞できる。ハンター式懐中時計の裏蓋を開くかのごとく、ムーブメント全体を楽しめるよう、ブリッジの外径はサファイアクリスタルバックの径より内側に収められた。また、傾斜させてもこの美観を干渉しないよう、外側と内側が球面の一部となった、デュアル球面サファイアクリスタルバックが採用されている。
ただの復刻ではなく、本作で“進化”を表現したシチズン。この進化は止まらない。これまでも、そしてこれからも。
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