昨今、多様な表現が可能となった腕時計のカラーダイアル。今回は、そこに濃淡を加えることでさらなる個性を加えることに成功したグラデーションダイアルを採用したモデルを紹介する。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年7月16日公開記事]
今だからこそ手にしたい、グラデーションダイアルの注目作
昨今、多くのブランドが注力しているのが、さまざまな色彩を持つカラーダイアルだ。かつてはブラックやホワイト、シルバーなどのベーシックなカラーのダイアルが主流であったが、製造技術の進歩によって複雑な色味を安定して与えることが可能となり、グリーンやレッド、ブラウンをはじめとするバリエーションに富んだカラーダイアルがラインナップするに至った。こういったカラーダイアルはブランドの世界観や価値観を体現するための手段ともなり、また腕時計が時間を確認するためのツールだけではなく、自己表現の手段としても認知されてきた現代においては、着用者の趣向を反映した時計選びを可能とした。
そこで今回は、カラーダイアルからさらに1歩踏み込み、グラデーションダイアルに注目したい。ダイアルのカラーに濃淡を付けたグラデーションダイアルは、見る角度や光の加減によって、さまざまな表情を映し出す。各ブランドは、グラデーションによってダイアルというキャンバスに何を表現するのだろうか。
セイコー「キングセイコー KS1969」Ref.SDKA021
キングセイコー生誕の地である東京。その豊かな緑に着想を得たグラデーショングリーンダイアルを与えられたモデルだ。細かなパターンが、青々と茂る木々を想起させる。自動巻き(Cal.6L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(直径39.4mm、厚さ9.9mm)。5気圧防水。39万6000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室Tel.0120-061-012
1969年に登場した「45KCM」のデザインを踏襲する、キングセイコーの2024年新作。優雅な弧を描くケースは鏡面を主体に仕上げられ、ドレスウォッチらしく上品にまとめられている。立体的なインデックスは、12時位置のみ矢羽根状のカットが施され、デザイン上のアクセントになるとともに判読性も高めている。サファイアクリスタルは、クラシカルな印象を強めるボックス型。
鏡面とヘアラインに仕上げ分けられたブレスレットは13連タイプ。ひとつひとつのコマが細かく、腕にしなやかに沿うような優れた装着感を味わうことができる。オリジナルでは毎秒10振動の手巻きムーブメントを搭載していたが、本作では薄型自動巻きムーブメントのCal.6L35を採用。
深いグリーンのダイアルは、緑豊かな都市である東京の姿を表現したもの。中心から外側に向けて徐々に暗くなるグラデーションと、全面に施された細かなパターンが、多様な生物を育む東京を表す。落ち着いた色味は、オンオフどちらのシーンでも使いやすい。
オリエントスター「M34 F7 セミスケルトン」Ref.RK-BY0001A
極域近辺で見られる自然現象、オーロラをモチーフとしたダイアルが特徴。マザー・オブ・パールにブルーグリーンのグラデーション塗装を施すことで、神秘的な輝きを表現している。自動巻き(Cal.F7F44)。24石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径40mm、厚さ13mm)。10気圧防水。14万3000円(税込み)。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380
オーロラをモチーフとした幽玄なグラデーションダイアルが印象的な、オリエントスターのセミスケルトンウォッチ。このダイアルは、マザー・オブ・パールをベースとしてブルーグリーンのグラデーション塗装を施すことで仕上げられている。
12時位置にはオリエントスターを象徴するパワーリザーブインジケーター、6時位置にはスモールセコンド、9時位置にはテンプの鼓動を楽しむことができる開口部が設けられており、それぞれの要素が織り成す立体感も魅力だ。
モデル名に含まれる「M34」は、星雲、星団、銀河を分類するメシエカタログでペルセウス座の散開星団を示す番号だ。エッジの効いたラグや力強い時分針など、ギリシャ神話の英雄ペルセウスを想起させるディテールが散りばめられている。
搭載するムーブメントは、約50時間のパワーリザーブを備える機械式自動巻きのCal.F7F44。ケースバックからは、受けやローターなどに施されたストライプ装飾やペルラージュを鑑賞することができる。
オメガ「シーマスター300 サマーブルー」Ref.234.30.41.21.03.002
ブルーのグラデーションダイアルを持つサマーブルーのうち、「シーマスター300」に属するモデル。水中から水面を見上げたような、壮大な海を思わせるダイアルが特徴だ。自動巻き(Cal.8912)。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.9mm)。300m防水。114万4000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
23年に登場したオメガ「シーマスター」のサマーブルー。全部で11種のモデルが発売され、防水性能に合わせて色味を変えたブルーグラデーションダイアルが話題となった。本作は、1957年に発表されたモデルのデザインを踏襲する「シーマスター300」をベースとしている。防水性能は300mであり、サマーブルーの中では中間に位置する。
ダイアルのグラデーションは外側に向けて暗くなっており、水面に差し込む光を水中から見上げたときのような、明るい中央部が特徴だ。くり抜かれたインデックスや時分針の蓄光塗料、ベゼルもブルーに仕上げられ、統一感のあるカラーリングを与えられている。
ケースバックには、ポセイドンとシーホースの立体的な刻印が施されている。この刻印は、独自のナイアードロックによってケースに対して真っすぐに固定される。
ムーブメントは、マスター クロノメーター認定を取得した高精度、高耐磁のCal.8912を搭載。コーアクシャル脱進機の採用によって、オーバーホールまでの期間も長く設定されている。
ロンジン「ロンジン レジェンドダイバー」Ref.L3.774.4.70.2
まるで経年によって日焼けしたような、グレーのグラデーションダイアルをまとった「ロンジン レジェンドダイバー」。オリジナルを忠実に再現したクラシカルなケースデザインにマッチしたカラーリングだ。自動巻き(Cal.L888)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42mm、厚さ12.7mm)。30気圧防水。38万8300円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350
ロンジンが59年に発表したダイバーズウォッチ、「Ref.7042」のデザインを復刻した「ロンジン レジェンドダイバー」。ダイバーズウォッチでありながらも回転式のアウターベゼルはなく、2時位置のリュウズによって操作可能なインナーベゼルを用いて潜水時間の計測を行う。スッと伸びたラグと相まって、スタイリッシュなデザインだ。
サイズやカラーリングなど、豊富なバリエーションがラインナップするレジェンドダイバーだが、ここで紹介するのは直径42mmのケースにグレーグラデーションダイアルを組み合わせたモデルだ。インデックスは経年を思わせるようなクリーム色を採用しており、まるで色あせたようなグレーグラデーションとともにヴィンテージ感を醸成している。復刻の名手たるロンジンらしいグラデーションダイアルの使い方だ。
搭載するムーブメントは、約72時間のパワーリザーブと耐磁性に優れるシリコン製ヒゲゼンマイを備えたCal.888。同社の主力ムーブメントであり、信頼性も抜群だ。
ジャガー・ルクルト「ポラリス・クロノグラフ」Ref.Q902843J
複数のセクションに分割された構造を生かした、グレーグラデーションダイアルのモデル。ダイアルは複雑に仕上げ分けされ、立体感のある表情を与えられている。自動巻き(Cal.761)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.39mm)。10気圧防水。226万6000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833
68年に発表された「メモボックス・ポラリス」にインスピレーションを受けた現行の「ポラリス」は、上品さとスポーティさを兼ね備えたコレクションだ。そのうちのひとつ、「ポラリス・クロノグラフ」は、3時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンドを配したツーカウンタータイプのクロノグラフウォッチである。
ダイアルは、サンレイブラッシュ仕上げの中央のディスクやグレイン仕上げのリング、インダイアル、オパーリン仕上げのタキメーターが配されたフランジなどの複数のセクションで構成され、グレーのグラデーションを施すことで豊かな表情を与えられている。このグラデーションは、約40層にニスを塗り重ね、クリアラッカーとカラーラッカーを塗布することで仕上げられたものだ。
垂直クラッチとコラムホイールを採用した自動巻きクロノグラフムーブメントCal.761を搭載し、その精緻な仕上げをシースルーバックから鑑賞することができる。ベージュのファブリックストラップとブラックのラバーストラップが付属する。
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