LVMHが独特な複雑機構のクロックで知られるレペ1839を買収。ベルナール・アルノー氏の個人投資も

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2024.08.21

LVMH(LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン)がスイスの高級時計製造に特化した名門マニュファクチュール、レペ1839の所有者であるスウィザの買収を発表した。同時にベルナール・アルノー氏が個人的にリシュモングループに投資したことが明らかになった。

LVMH レペ1839を買収

レペ1839「タイム ファスト クローム ゴールド」Ref.74.6004/151
手巻き。26石。1万8000振動/時。ステンレススティール(長さ385mm、幅16mm、高さ12mm)。パワーリザーブ約8日間。世界限定100ピース。528万円(税込み)。
Originally published on Montres De Luxe
Edited by Takashi Tsuchida
[2024年8月21日公開記事]


LVMHの高級時計産業における戦略

LVMH レペ1839を買収

レペ1839「タイム・フライズ」Ref.74.6006/114
手巻き。22石。1万8000振動/時。ステンレススティール(長さ354.3mm、幅44.2mm、高さ13.75mm)。パワーリザーブ約8日間。重量3kg。世界限定99ピース。完売。

 LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(以下LVMH)が時計会社の買収にフォーカスしていたことはすでに知られている。世界最大の高級消費財グループは、ウブロ、タグ・ホイヤー、ゼニス、ブルガリ、ジェラルド・ジェンタ、ダニエル・ロートを保有しているが、時計業界での存在感をさらに高めたいとする意向が見られていた。

 一方で、ニッチブランドのレペ1839はMB&Fとのコラボレーションでここ数年間、注目を集めていた。一部の人々の間では、マキシミリアン・ブッサー(MB&Fの創設者)とのパートナーシップが、この高級時計マニュファクチュールを救ったのではないかとも考えられているようだ。

 LVMH広報担当者は次のようにコメントしている。「高級時計界の宝であるレペ1839を手に入れることは、LVMHが歴史あるサヴォワール・フェール(伝統的な技術や知識)の保全と拡大を大切にしていることの証明になります」

LVMH レペ1839を買収

レペ1839「スターフリート・エクスプローラー」Ref.71.6000/141
手巻き。11石。1万8000振動/時。ステンレススティール(直径165mm、高さ110mm)。パワーリザーブ約8日間。日本未発売。


レペ1839について

 スイスのジュラ州デレモンに拠点を置くレペ1839は、時計製造に特化したマニュファクチュールだ。その専門知識、ノウハウ、創造的なビジョンは広く知られている。製品はすべて社内生産され、永久カレンダー、トゥールビヨン、レトログラードなどの複雑機構も自社で組み込んでいる。

 パワーリザーブは約8760時間、すなわち1年間の駆動力を保持する機構も考案された。これはメゾンのシグネチャーとなり、同時に詩的かつユーモラスな表現をもたらしている。機械的特徴はデザイン要素として創造的な装飾へと昇華され、デザイン上の美学と時計製造技術が高次元で両立している。

 19世紀にオーギュスト・レペによって会社が設立された当初、レペ1839は時計のパーツ製造に特化し、オルゴール製造におけるパイオニアであった。その後、さらに精密な時計製品の開発へと発展し、当初は将校たちに高く評価された旅行用の置時計を製造した。また20世紀にも優れた時計の数々を製作している。

 直近のレペ1839は、多くの高級ブランドや時計ブランド(MB&Fやカール F. ブヘラ)とパートナーシップを結んでいる。そしてLVMHの複数のメゾンとも共同プロジェクトが実現した。例えば、以下のようなプロジェクトである。

・ティファニー:2023年、ニューヨーク5番街の歴史的店舗の再オープン時に、1950年代の初期F1カーの形を再現した置時計を発表。

・ルイ・ヴィトン:メゾンが定期的に使用するエンブレムである熱気球を製作するためにレペ1839の職人のノウハウを活用。

 現在、レペ1839は、デザイナー、エンジニア、時計職人、機械技術者、その他スタッフ合わせて80人が、CEO兼クリエイティブディレクターであるアルノー・ニコラスのもとで働いている。彼らは現在および将来の顧客のために、自らのスキル、ノウハウ、モチベーションを提供し続けている。


ベルナール・アルノー氏の個人投資

『ブルームバーグ ビジネスウィーク』の報道によると、75歳のベルナール・アルノー氏が、カルティエの親会社であるリシュモンの株式を個人的に取得したという。これは彼の投資関係筋からの情報として伝えられた。取得金額や株式の割合は不明だが、LVMHのリシュモングループに対する関心については、すでに数ヶ月前から情報が流れていた。

 さらにLVMHは、スイス高級時計界でハイエンドなキャリバーを製造しているヴォーシェ・マニュファクチュール(現在はエルメスが株主)の買収交渉についても協議に入ると言われている。しかし、スイス人がこの時計業界の“戦略的な宝石”を自国から手放すかどうかについては、不透明な部分がある。この件については、今後の展開に注目が集まっている。


Contact info: ムラキ レペ  Tel.03-3273-0321


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