2024年9月に発売予定のG-SHOCKの新作「GM-2110D-2AJF」について、着用レビューをする機会を得た。本作はスタイリッシュな八角形デザインに金属の質感を与え、さらにメタル素材の文字盤で個性を際立たせたモデルである。一見すると“フルメタルG-SHOCK”のような外観を備えつつ、似て非なる本作の魅力について、比較も交えながらインプレッションを行っていく。
Text & Photographs by Kento Nii
[2024年8月19日公開記事]
2100系デザインの新作「GM-2110D」
今回着用レビューを行った「GM-2110D-2AJF」は、“カシオーク”の愛称で知られる「2100」シリーズの新作に当たる。
この2100シリーズの初出は、2019年登場の「GA-2100」である。プロダクトコンセプトは「スリム&コンパクト」。その洗練されたデザインによって、2100系は瞬く間にG-SHOCKの定番入りを果たした。特に、発表当時にアナログ-デジタルタイプのG-SHOCKにおける最薄サイズを実現していた点は、最近の時計市場の需要にマッチしており、結果として多くのユーザーにリーチするきっかけになったと考えられる。
その後も同シリーズの快進撃は続き、フルメタル化を経て、2024年、ついに最高峰コレクション「MR-G」へラインナップされたことも記憶に新しい。一度このMRG-B2100Bの実物を見る機会があったが、マルチガードストラクチャーを活かしたエッジの効いた造形と、磨き上げられたチタンの輝きには、目を見張るものがあった。
クォーツ。SSケース。20気圧防水。6万500円(税込み)。
そんな多彩になっていく2100シリーズに新たに加わったのが、今回インプレッションを行う「GM-2110D」シリーズである。最初に留意しておきたいのが、本作は"フルメタルG-SHOCK"ではないということだ。ステンレススティール製のベゼル部でモジュール入りのインナーケースをカバーする構造自体は同じだが、GM-2110Dではこのインナーケースにガラス繊維強化樹脂を使用している。つまり本作は、「GM-2100」シリーズのようなメタルカバードデザインモデルに新たに加わった、ブレスレットバリエーションと考えるのが自然なのである。
もちろんフルメタルG-SHOCKではないため、見比べるとその外装や機能面には違いが見られる。価格についても6万500円(税込み)と、同型のフルメタルG-SHOCK「GM-B2100D-1AJF」が7万7000円(税込み)であることを比べるとリーズナブルだ。価格帯で見ると、樹脂製G-SHOCKとフルメタルG-SHOCKの間を埋めるモデルであり、2100デザインにおける選択肢が広がったと言える。コレクション性の高いG-SHOCKらしく、気軽に手に取ってしまいそうな1本だ。
コストを抑えつつ、ファッショナブルな魅力を追求
今回、GM-B2100Dのファーストリリースより、ライトブルー文字盤を備えるGM-2110D-2AJFを借りて、インプレッションを行った。
着用してまず目を引いたのが文字盤だ。ステンレススティールの質感を活かした外装の中で、放射パターンが刻まれたメタル素材の文字盤が存在感を放っていた。光を反射してキラリと光り、表情をくるくると変える文字盤はなんとも見応えがある。どこか冷たさのある色合いは腕時計で根強い人気を誇るアイスブルーに近く、このカラーを見て衝動買いする人がいてもおかしくない。そう思えるまでにカッコ良く見えた。
本作は、今回並べて比較した「GM-B2100PC-1AJF」と違ってタフソーラーを搭載していないため、文字盤の光の透過性を気にする必要がない。つまり、光の反射を活かせるこのメタル文字盤は、本作のような一次電池式モデルならではの魅力と言える。針、インデックスは立体的で際立っているため、視認性も良好だ。さらに、スーパーイルミネーターの搭載に加え、針には文字盤と色を合わせた蓄光塗料が充填されており、暗所での視認性も考慮されている。
文字盤を囲むベゼルおよびケース部については、フルメタルG-SHOCKと似た印象を覚えた。ベゼル天面をサテン仕上げとし、そのほかを鏡面仕上げとすることで、立体感が演出されている。MR-Gを見た後では随所の仕上がりの甘さが目立つが、金属の質感という魅力の表現には申し分ない仕上がりだろう。
その一方で、フルメタルG-SHOCKとの大きな違いを感じたのが、メタルカバードデザインで初の採用となったブレスレットである。ビジネスシーンにも合わせられるよう、新たにデザインされたものであり、シンプルな印象だ。各コマはサテン仕上げを基調に、凸部をポリッシュとすることでアクセントが加えられており、金属の質感を広々と楽しめた。
このブレスレットについてはフルメタルG-SHOCKと同様に、エンドピースはケースにがっちりと固定されているため、着用した際に浮いてしまう点はネックとなるかもしれない。内側に湾曲したガイドが備わっているため、ヘッドの重みで振られるような感覚はなかったが、手首の幅によって着用感に差が出るモデルと言える。しかし、肌に接する面積が少ないため、ベタつきが気になる夏場などに着用すると快適に感じられるだろう。
また本作の重さは、ブレスレット無調整で約143gであった。フルメタルG-SHOCKの重さが約167gであり、25gほど軽い。後述する機能性の少なさゆえに薄型である点も加味すると、軽やかに着用できる点も魅力のひとつと考えられるだろう。
比較を交えつつ本作を着用した感想としては、ファッショナブルかつメタルの質感を持つ2100モデルを、低コストで実現することがコンセプトに据えられているように感じた。特に、文字盤については非常に魅力的である。メタリックカラーによる表情付けはG-SHOCKが持つファッションアイテムとしての魅力を大きく底上げしており、これだけで購入の決め手となり得るだろう。本作のアイスブルーのほか、オレンジやグリーンなどといった計5色の豊富なカラーリング展開もうれしいところだ。
一方、ブレスレットについては、リベットの有無やエッジの利かせ方の甘さを考えると、フルメタルG-SHOCKと比べて少々荒削りな印象であった。しかしながら、メタルの質感を与えるという点では大きな貢献を見せており、決められたコスト内でのクォリティーの追求が最大限行われているように思えた。
タフネスはそのまま。機能性は最小限
本作がフルメタルG-SHOCKに比べて安価であるのは、機能性の差によるところもあるだろう。タフソーラーを持たない一次電池式であり、電波受信機能やスマートフォンリンク機能もないため、手動で時刻を設定する場合がある。精密な時間管理が求められるシーンでは、その他のモデルに軍配が上がるだろう。
一方で48都市に対応したワールドタイムや、100分の1秒ストップウォッチ、アラームといった基本的なデジタルウォッチの機能は備えている。これらの機能性をスマートフォンで代用できるといえばそこまでだが、やはりツール的な魅力はG-SHOCKに欠かせない。もちろん、耐衝撃性や20気圧防水といったタフネスも据え置きだ。
実際に本作を購入する際には、機能性、デザイン性、コストを鑑みて、従来モデルと比較検討する必要があるだろう。もっとも、これらを天秤にかけるのは、腕時計ユーザーにとって一生付きまとう悩みではないだろうか。
ニーズにハマればなんとも魅力的な1本
G-SHOCKの2100シリーズに新たに加わった本作は、機能性と引き換えに、質感とファッショナブルな魅力にコストをかけたコレクションと言える。G-SHOCKのファッショナブルな一面を重視する人にとっては、なんとも魅力的な1本となってくれることだろう。多彩なカラーバリエーションの中から、ぜひお気に入りの1本を探してみてほしい。
また、本作も属する10万円以下という価格帯において、機能性、デザイン性の選択肢が多いことは、G-SHOCKが持つ柔軟性の表れと言えるだろう。こうしてさまざまな需要をカバーしてきたからこそ、現在のG-SHOCKの人気があるのだと、今回のインプレッションを通して強く実感した。
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