腕時計に搭載される機構の中でも、強い個性を放つ存在であるムーンフェイズ。航海や暦を知るうえで、月の満ち欠けの確認が不可欠だった時代に誕生し、実用する機会がめっきり少なくなった現代においても多くのブランドが採用する機能である。今回、さまざまなブランドの20万円台〜60万円台の価格帯から、この機能を持つ現行モデルを5本紹介する。
Text by Kento Nii
[2024年7月20日公開記事]
20万円台〜60万円台で、豊富な選択肢が揃うムーンフェイズ
クラシカルかつユニークな魅力を持つムーンフェイズは、月の満ち欠けがおおよそ29.5日の周期で移り変わる性質を生かし、盤面上の小窓で月相を表示し続ける機能だ。月が描かれたディスクによって満ち欠けを直感的に認識できることから、ロマンの面でも心引かれる機能といえる。
そんなムーンフェイズを搭載した腕時計は、幅広い価格帯で展開されている。今回は、20万円台〜60万円台という価格設定でモデルをピックアップした。超精密な制御を可能としたモデルや、手作業に大きく依存した工芸品のようなモデルであれば、価格は天井知らずとなる。しかしながら、ピックアップした5モデルは抑えた価格でありながら、本機能の魅力を実感するうえで申し分のないモデルだ。初めての機械式時計としても、ぜひ購入を検討してほしい。
20万円台〜60万円台で購入できるムーンフェイズウォッチ5選
オリエントスター「メカニカルムーンフェイズ」
自動巻き(Cal.F7M65)。22石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。23万6500円(税込み)。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380
オリエントスターのクラシックライン「M45」コレクションから、Ref.RK-AY0114Aをピックアップ。これまでオリエントスターが作られてきた秋田エプソンが位置する秋田県にある、田沢湖の湖面に映る月を表現したモデルで、白蝶貝を使ったグリーングラデーションダイアルと、ムーンフェイズによってその情景を盤面に描いている。
ダイアルは、白蝶貝特有の質感を楽しめるすっきりとしたレイアウトが特徴で、シリーズに多い意匠のひとつ、オープンワーク仕様は省かれた。中央のリング内にはブランドのロゴパターンがあしらわれている。光の反射による見え方の変化を、何度も楽しめるダイアルだ。
ムーブメントはCal. F7M65を搭載する。パワーリザーブは約50時間を有しており、12時位置のパワーリザーブインジケータで、主ゼンマイの残りの巻き上げ量を確認可能だ。ストラップには、ブラックレザーのほかに、交換用のメタルブレスレットが付属する。
なお、本作はオリエントスター公式オンラインストアでのみ購入可能なモデルだ。
フレデリック・コンスタント「クラシック ムーンフェイズ デイト マニュファクチュール」
自動巻き(Cal.FC-716)。26石。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。66万円(税込み)。(問)フレデリック・コンスタント相談室 Tel.0570-03-1988
フレデリック・コンスタントのフラッグシップで、名前の通り、企画から開発、製造、組み立て、調整、ケーシングに至るまでの工程を自社で行う「マニファクチュール コレクション」。そのムーンフェイズモデルから、“ブリティッシュ レーシング グリーン”と呼ばれるカラーリングの1本をピックアップした。
2024年に発表されたばかりの本作は、同ブランドにとって累計33番目となった自社製ムーブメントCal.FC-716を搭載する。2015年から本コレクションに搭載されてきた「Cal.FC-715」をベースとしつつ、パワーリザーブを約72時間へと延長。トランスパレント式のケースバックかは、文字盤側から見て6時位置に配されたテンプや、コート・ド・ジュネーヴ仕上げが施されたムーブメントがのぞくことも、本機の魅力と言えるだろう。
なお、デザイン面でも特筆すべき点の多い新作モデルだ。シンプルかつ洗練された造形は、モダンな一面を見せている。ムーンフェイズも同様で、大ぶりで見やすさを確保しつつ、シンプルでクラシカルな文字盤のバランスを邪魔しない仕上がりだ。ファセット加工が施された針・インデックスやソレイユ装飾のダイアルとの組み合わせによって、高い視認性と審美性の両立が実現されている。
ストラップにはダイアルと合わせたグリーンのレザーストラップを採用。カラーリングを活かした、際立つ個性が魅力の1本といえる。
レイモンド・ウェイル「ミレジム オートマティック ムーンフェイズ」
自動巻き(Cal.RW4280)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ10.05mm)。50m防水。37万4000円(税込み)。(問)ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080
レイモンド・ウェイルの「ミレジム」は、2023年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG) でチャレンジウォッチ賞を受賞したコレクションだ。このコレクションに2024年に登場した、ムーンフェイズモデルをピックアップした。
シルバートーンでまとめられたフェイスは洗練されており、ムーンフェイズからのぞく月の柔和な表情も全体の印象に馴染んでいる。デザインは1930年代の腕時計をモチーフとしているが、ダイアル、ベゼルでも見られるサテンとポリッシュの使い分けや、直径39.5mm、厚さ10.05mmというコンパクトなサイズ感は現代的だ。腕時計全体において、モダンとヴィンテージが絶妙なバランスで両立されたモデルといえる。
搭載されるムーブメントはCal.RW4280で、パワーリザーブは約38時間となる。
ちなみに本コレクションのムーンフェイズモデルには、35mm径のバリエーションもラインナップされている。ペアウォッチとして選ぶのにもおすすめのムーンフェイズモデルだ。
モンブラン「スター レガシー ムーンフェイズ」
自動巻き。25石。2万8800振動/時。SSケース(直径42mm、厚さ11.38mm)。50m防水。世界限定1786本。66万4400円(税込み)。(問)モンブランお客様サポート Tel.0800-333-0102
1997年より時計事業に参入しているモンブランは、ムーブメント、特にクロノグラフ製作の名門であるミネルバを傘下に収めており、ムーンフェイズを搭載したクラシックモデルの製造にも注力している。今回ピックアップしたのは、「スターレガシー ムーンフェイズ」の限定モデル。モンブラン山の登頂を世界で初めて成し遂げた、ジャック・バルマに敬意を表する1本だ。
特徴的なバーガンディーのダイアルには“グレイシャー”と呼ばれる不規則なパターンが施されており、ローズゴールドカラーの針とインデックスによって、そこにエレガンスが添えられている。またムーンフェイズは、ブルーを背景にローズゴールドカラーの月と星が浮かんでおり、鮮やかなダイアルの中でも存在感を放っている。
ケース直径は42mmで、ムーブメントにはCal.MB24.31が搭載される。トランスパレントケースバックから鑑賞可能だ。ダイアルと合わせた色のカーフレザーストラップが取り付けられており、簡単な操作で交換できるようになっている。
ロンジン「フラッグシップ ヘリテージ」Ref.L4.815.4.78.2
自動巻き(Cal.L899)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.5mm、厚さ12.4mm)。3気圧防水。47万8500円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350
プロフェッショナル仕様のツールウォッチに限らず、伝統を色濃く継承したクラシックモデルも多く輩出してきたロンジン。ピックアップしたRef.L4.815.4.78.2は、1957年よりブランドの基幹コレクションを務めてきた「フラッグシップ」のムーンフェイズモデルだ。
ダイアルはドーム型となっており、オパリンシルバーカラーとゴールドの表示部を組み合わせることで、王道的なクラシックテイストが演出されている。また、6時位置に配されたムーンフェイズは、ミッドナイトブルーをバックにゴールドカラーの月と星が浮かんでおり、針、アプライドインデックス、ロゴとの調和が生み出された。
ケース直径は38.5mmと、コンパクトだ。ムーブメントにはCal.L899を搭載し、約72時間のパワーリザーブを有することに加えて、シリコン製ヒゲゼンマイの採用によって耐磁性も備えている。なお、裏蓋はソリッドバックで、キャラベル船を模したメダリオンがあしらわれた。
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