ロレックスがモダニズム建築の名作、カヴロワ邸の修復支援をスタート。ロレックスと建築の関係を知ろう

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2024.07.25

2024年、ロレックスはフランスにあるモダニズム建築の名作、カヴロワ邸の保全活動に参加した。同社はかねてより建築業界との関わりを持ち、自社の建築物に著名な建築家を多く起用してきた。また国際的な建築展の支援や、建築家育成プログラムの開催なども行なっている。そんなロレックスが支援するカヴロワ邸について紹介しよう。

カヴロワ邸

Originally published on Montres De Luxe
[2024年7月25日公開記事]


モダニズム建築の名作、カヴロワ邸の修復にロレックスが参加

 歴史に刻まれたユニークな文化的遺産の発信と継承に貢献するため、オテル・ドゥ・ラ・マリンのパトロンとしてパンテオンの歴史的な時計を改修するなどのメセナ活動を行っているロレックス・フランス。

 2024年はフランス文化財センターとの関係を継続し、フランスを代表するモダニズム建築のひとつである、カヴロワ邸の改修に乗り出した。

ロベール・マレ=ステヴァンスが手掛けた巨大な邸宅

カヴロワ邸

 建築も時計製造と同じく、精度への情熱に基づいている。そして機能性、審美性、人間工学の分野で、卓越した技術を重視する。カヴロワ邸を設計したロベール・マレ=ステヴァンスも、この哲学を共有する建築家であった。

 1929年、生地製造を行う会社を経営していたポール・カヴロワは、フランス北部の町であるクロワに、家族のための家を建てることを決意した。1929年から1932年にかけて、彼は自身の邸宅をロベール・マレ=ステヴァンスに自由に設計させた。そうして出来上がったのが、カヴロワ邸である。この建物は、周囲のブルジョワ邸宅とは対照的な、モダンなシルエットを備えていた。

カヴロワ邸

 ロベール・マレ=ステヴァンスの前職は、映画全体の絵作りを担う映画美術の仕事だった。彼は「総合美術」というコンセプトに突き動かされ、建物だけでなく、内装から家具に至るまで、すべてを自分の手でデザインしたのだった。

 彼が思い描いたのは、真の意味でのモダンな大邸宅である。カヴロワ邸は左右対称の翼を備えたしっかりとしたプロポーション、無駄を削ぎ落としたシンプルな装飾、平らな屋根といった建築的要素に加えて、エレベーターやセントラルヒーティング、電話など、当時最先端の設備も備えていた。

大規模な修復の末、2015年に一般公開

 カヴロワ邸は1990年に歴史的建造物に指定された。だが、その時にはすでに、荒れ放題の廃墟に成り果ててしまっていたのだ。2001年、フランス政府はカヴロワ邸を購入。13年にわたって行われた修繕工事では、卓越した職人たちの技術を集結させ、この建物と敷地を1932年当時の姿に復元することに成功したのだった。

 なお、この大事業ではガラス、コンクリート、金属といった工業的な建築素材に、スウェーデン産の大理石とイタリア・シエナ産の大理石、クルミ材、ナシ材、そしてエキゾチックな木材といった高級な素材が組み合わされた。そうしてこの邸宅は新築当初の姿に復元され、本来の美しい外観を取り戻したのである。また、カブロワ邸の機械部分を動くように修理したところ、ロベール・マレ=ステヴァンスが工学の天才だったことも明らかになった。

 そして2024年、ロレックス・フランスはロベール・マレ=ステヴァンスのデザインを保存するため、カヴロワ邸の建築とデザインの修復を支援することを決めたのだ。


ロレックスと建築の関係。名建築家が設計した建物たち

 ロレックスは60年以上にわたって、歴史に名を残す著名な建築家に、ブランドに関連する建築物の設計を依頼してきた。

 例えば、アメリカ・ペンシルバニアにある時計学校「リティッツ ウォッチ テクニカム」はポストモダン建築を代表する建築家のマイケル・グレイヴスが、東京にある「ロレックス東陽町ビル」は「プリツカー賞」を受賞した日本の建築家、槇文彦が設計を手がけている。スイス・ローザンヌにある「ロレックス ラーニングセンター」は、妹島和世と西沢立衛による建築家ユニット「SANAA」に設計を依頼している。

 ロレックスは本社や生産拠点の建物を新築、拡張する際、クロノメーターを組み立てる時と同じように、美観やディテールに細心の注意を払っている。

 アメリカ・テキサス州のダラスでは、日本の建築家である隈研吾がロレックスのビルを設計した。ニューヨークでは「サー(Sir)」の称号を持つ建築家、デイヴィッド・チッパーフィールドがロレックスのアメリカ本社のリニューアルを担当し、「ロレックスの歴史と企業文化を象徴するビル」を作り上げた。

国際建築展や建築家育成プロジェクトを支援

 2014年以降、ロレックスはイタリア・ヴェネチアで開催される「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」を支援している。世界最大級の建築展である本イベントは、若手建築家にとってのインスピレーションの源にもなっている。

 また、2002年からは「ロレックス メントー&プロトジェ アート・イニシアチヴ」というプログラムをスタート。建築を含む複数の芸術分野において、指導するメンターと指導を受けるプロトジェ(メンティー)のペアを育成してきた。

 メンターにはデイヴィッド・チッパーフィールド、妹島和世、アルヴァロ・シザ、ピーター・ズントーなどの著名な建築家が名を連ねる。彼らはより持続可能な世界を作るため、若い世代を後押しする役割を果たす。

 2023年から2024年にかけては、フランス人建築家のアンヌ・ラカトンと、レバノン系アルメニア人の建築家、アリーヌ・アプラハミアンとのコラボレーションが決定している。


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