レディースG-SHOCKの新たな選択肢。最新作「GM-S2110」を着用レビュー!

2024.07.30

2024年7月16日にリリースした、最新G-SHOCK「GM-S2110」を着用レビューする。“カシオーク”を小径化し、ミニマルにした「GM-S2100」を、いっそう“大人向け”に仕立てた「GM-S2110」は、レディースG-SHOCKに新しい選択肢をもたらす。

G-SHOCK GM-S2110

鶴岡智恵子(クロノス日本版):文・写真
Text & Photographs by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2024年7月30日公開記事]


いっそう小型になったG-SHOCK最新作「GM-S2110」

 みんな大好きG-SHOCKは、ラインナップがとても豊富だ。1983年、初代G-SHOCK“オリジン”の意匠を受け継ぐスクエア型の5000/5600シリーズに始まり、このオリジンとは対照的に、真円という発想からラウンドケースを得た6900シリーズ、究極のツールウォッチであるMASTER OF Gシリーズなど、枚挙にいとまがない。そんなG-SHOCKのうち、“カシオーク”などと時計ファンの間で親しまれているシリーズがある。「2100」だ。2019年に登場した「GA-2100」からスタートしたシリーズで、オリジンに搭載されていた八角形のベゼルから着想を得たケースフォルムを有する新ジャンルである。誕生からわずか5年のうちに、2100のバリエーションは拡充された。このバリエーションのうち、ケースをコンパクトにし、機能や意匠をミニマルとしたシリーズが2021年に誕生したGM-S2100だ。そして2024年、GM-S2100を“大人向け”にしたのが、今回着用レビューする「GM-S2110」である。

G-SHOCK GM-S2110

G-SHOCK「GM-S2110」Ref.GM-S2110-3AJF
クォーツ。樹脂+SSケース(直径40.4mm、厚さ11mm)。20気圧防水。2万9150円(税別)。

 GM-S2110はグリーン、ブルー、ピンク文字盤がラインナップされた。今回インプレッションするのは、グリーン文字盤のモデルだ。7月16日に情報解禁されたばかりのこの最新作を、着用レビューする。

G-SHOCK GM-S2110

グリーン以外にも、パステルカラーのピンク、ブルーがラインナップされたGM-S2110。こういった淡い色合いが文字盤に与えられると愛らしい意匠に仕立てられる。


小径薄型化とメタル化が広げた、「女性のG-SHOCK」という選択肢

 実機をレビューする前に、本作が幅広い世代にとっての「大人の女性のG-SHOCK」という、時計市場で絶妙なポジショニングを取ってくれたモデルということを記したい。

 G-SHOCKは“耐衝撃構造”というアイデンティティを持つ。このタフネスゆえに男性向けと捉えられることもあるかもしれないが、レディースの選択肢も豊富だ。近年では韓国のガールズグループ「ITZY」をアンバサダーに起用するなど、女性に向けて積極的なマーケティング活動を行っている。

G-SHOCK×ITZY

2023年より、G-SHOCKの韓国出身の5人組ガールズグループ「ITZY」。読み方は“イッチ”だ。

 一方で樹脂素材の質感やポップなカラー、複雑な造形が与えられた大ぶりな外装は、服装や使うシーンを選ぶ場合がある。個人的な経験談となって恐縮だが、30代後半の年齢となった私は仕事の時の服装に合わせづらく、着用が限られてしまうという懸念から、これまでレディース向けのG-SHOCKは購入してこなかった。とはいえG-SHOCKのタフネスには引かれる。そんなニーズに応えてくれるのが、2021年に登場したGM-S2100だ。

G-SHOCK GM-S2100

G-SHOCK「GM-S2100」Ref.GM-S2100PG-4AJF
既存のGM-S2100。写真のモデルはピンクゴールドIPを施し、かつストラップをピンクベージュとすることで、華やかな雰囲気をまとっている。クォーツ。樹脂+SSケース(直径40.4mm、厚さ11mm)。20気圧防水。2万9700円(税別)。

 近年の時計市場では、ケースの薄型化、小径化が見られる。“ラグスポ”ではないスポーツウォッチも、薄くコンパクトなモデルが目立つようになってきた。耐衝撃構造を備えているG-SHOCKにとって、薄型化、小型化は容易ではない。しかし2019年、5000系シリーズの意匠を受け継ぎつつ、デジタルのみならずアナログ表示も持ったモデルとして新たにコレクションに登場したのが「GA-2100」だ。5000系に対して2100系としてくくられ、カシオが「NEWスタンダード」と称したこのモデルは、「スリム&コンパクト」が開発コンセプトとしてあっただけあり、ケースの薄型化、小型化が実現されていた。

 このGA-2100は大ヒット。すぐにバリエーションモデルが展開される中で、レディース向けのいっそうコンパクトかつミニマルなコレクションとして21年にGM-S2100が誕生し、実際の売り上げ本数などは分からないものの、やはり大成功を収めたのだろう、24年に今回着用レビューするGM-S2110が登場したのだ。

G-SHOCK GM-S2110

カジュアルに装える樹脂ケースのG-SHOCKも良いが、ポップすぎると合わないシーンがある。年齢を重ねれば、なおさらだ。本作はメタル製の文字盤やベゼルを備えているため、落ち着いた意匠となっている。一方で文字盤カラーがパステル調の明るいグリーンであるため、没個性的ではない。

 さらにGM-S2100、GM-S2110はただサイズがコンパクトになっただけでなく、ベゼルにステンレススティール素材を用いている。ケースのガラス繊維強化樹脂もメタリックな質感が与えられており、これまでのレディース向けG-SHOCKに多かった「ポップすぎるカラーリング」が抑えられ、代わってさまざまなシーンで用いやすい意匠を獲得した。

 2100シリーズの登場は、“大人”と分類される年齢の女性にとって、再びG-SHOCKを手に取る機会となったのではないだろうか。少なくとも私は、後述するがG-SHOCK由来のタフに使える安心感も相まって、購入したいモデルのひとつとなった。


ケースは小さすぎず、しかし装着感に配慮されている

 前置きが長くなった。この見出しから、着用レビューを行っていく。

 前述の通り、2100系は5000系を小型化、薄型化したG-SHOCKだ。19年初出のGA-2100が直径45.4mm、厚さ11.18mmであるのに対し、GM-S2100はさらに小さく直径40.4mm、厚さ11mmのサイズとなっている。GM-S2110はこのGM-S2100とサイズやスペックは変わらない。しかし、ベゼルトップがスリムになり、いっそうコンパクトな印象が強まった。

 とはいえこのサイズは、レディースウォッチとして考えた時、決して小さくはない。時計市場のもうひとつのトレンドとして、レディースウォッチはケースが大径化する傾向にあるものの、なかなか直径40mm以上というのは見られない。

G-SHOCK GM-S2110

GM-S2100はIP処理で外装に色付けしたモデルが多い中、本コレクションはステンレススティールらしいシルバーが与えられた。汎用性の高い意匠であり、より“大人向け”と言える。

 この“大きさ”が手首で存在感を放ってくれて、着用中にもついつい目が引かれるのだ。

 なお、自身の手首幅よりも大きいサイズの腕時計というのは、装着感が悪いことがある。手首から浮いてしまったり、ヘッドがぐらついてしまったりするためだ。ここに重さと厚みが加わると、なおさら着用中にストレスを感じるだろう。しかし本作の着用感は、良好だった。大きい腕時計の着用感を高める手法は時計メーカーによってさまざまだが、「全長を短くする」というスタイルが挙げられる。本作も全長は45.9mmに抑えられており、12時側も6時側も、手首から大きく飛び出さない。

G-SHOCK GM-S2110

普段、ケース径36〜40mmのメンズ向け腕時計を着用している自分にとっても、径40mm超えは大きいのでは、と着用レビュー前には思っていた。しかし実際に手首に載せてみると、薄い仕立てや軽さも手伝って、ずっと着用していたくなる腕時計だと感じた。ちなみに手首回りは14.7cmだ。なお、「GMW-B5000」を所有しており、気に入って使っているのだが、自身の手首幅からはかなり大きく、重いということもあって、着用に慣れるまで時間がかかった。

 また、G-SHOCKは重いといったイメージが強いかもしれないが、本作はとても軽い(実測するのを失念してしまった。しかし、同サイズのGM-S2100が55g程度とのことなので、本作もそのくらいの軽さだと思われる)。ケースバックがせり出していないことと相まって、女性の手首でも快適に着用できるよう、配慮された設計であることがよく分かる。

G-SHOCK GM-S2110

G-SHOCKはケースバック側も厚みを持っているモデルが多い中で、本作はスリムだ。レビューのためにカシオ計算機から借りたモデルであるため、価格シールはご容赦を。

 さらに大きいケースは手首にぴったりと巻くことで、いっそう違和感なく着用できる。樹脂ストラップは柔らかくしなやかで、穴の数も多いので調整しやすいことから、このぴったり巻くことでの装着感改善に大いに貢献してくれる。ストラップの樹脂パーツは再生可能な有機資源であるバイオマスプラスティックを使っているという。なお、GM-S2100と比べて、本作のストラップは短くなっているとのこと。もっとも、樹脂は経年や強度が気になるところではある。

G-SHOCK GM-S2110

バンドやピンバックルは薄く小さいため、デスクワークの邪魔をしない。

 ちなみに普段使っている腕時計よりも大きいサイズを使うと、気付かないうちに何かにぶつけてしまったりしがちだ。本作は薄く小ぶりなG-SHOCKということもあり、この「ぶつけてしまう」という点は気にならなかった。もっとも、G-SHOCKは「落としても壊れない」腕時計である。外観は“大人”向けに改められたが、耐衝撃性というキャラクターは失っておらず、安心して使えたというのも本作をレビューしたうえで感じた魅力のひとつだ。


立体的な造形が“高見え”に寄与している

「コンパクト」であることに加えて、本作のもうひとつの見どころは文字盤だ。この文字盤にはメタル素材が使われており、淡いグリーンカラーをまとうとともに、サンブラッシュ仕上げが施されている。さらに、見返し部分は梨地に仕上げられており、この仕上げ分けによるコントラストと、広く設けられた外周の段差が奥行きを作っていることが相まって、強い立体感のある意匠を備えている。

G-SHOCK GM-S2110

液晶の小窓にも斜めに傾斜が設けられており、奥行きを持つ。

 また、ケースにも仕上げ分けがなされている。ベゼルやケースサイドにはヘアライン、ケース表面やプッシュボタンは光沢あるポリッシュが与えられているのだ。GM-S2100とGM-S2110はミニマルであることもデザインコンセプトとなっている。そのうえGM-S2110の方はGM-S2100にはあった9時位置のひき目加工が廃されて、かつインデックスや液晶表示の小窓もすっきりとシンプルな意匠となっている。しかし、この仕上げ分け、そしてシンプルになったとはいえまだまだ複雑な造形が立体感に寄与しており、洗練された“大人”な意匠に昇華されている。

G-SHOCK GM-S2110

プッシュボタンは計4つが搭載されている。本作はBluetoothとの連携することで、スマートフォン上で各種設定ができるモバイルリンク/アプリ連携機能は搭載されていないため、このプッシュボタンを使って設定を行う。常々G-SHOCKのプッシュボタンは爪が長い女性にとっては操作しづらいと愚痴ってきたのだが、本作にもややその不便は感じた。とはいえ固くて押せないというほどではなく、機能がシンプルであるため操作が覚えやすかったことも手伝って、ストレスを感じるほどではなかった。

 こういった仕上げ分けや立体感から、本作がよく設計を練られたうえで作り込まれていることが感じられる。本作の定価は2万9150円(税込み)だ。本作よりも高い腕時計はあまたあるし、手作業で作り込まれた腕時計などとは性格を異にするプロダクトであることはもちろんだ。しかし、立体的な造形は“高見え”に寄与してくれるし、よく練られて、作り込まれた腕時計というのは、所有への満足度を高めてくれる。


腕時計の購入を検討している女性に、ぜひ選択肢に入れてほしい新作モデル

「落としても壊れない」というキャラクターで、腕時計の新たなジャンルを切り開いたG-SHOCK。1983年に誕生してから約半世紀の間で、本当に多彩なバリエーションを展開してきた。とはいえ、ある程度年齢を重ねてから使えるモデルというのは、選択肢が少なかった。より“大人向け”のGM-S2110の登場によって、レディースウォッチに新たな選択肢がもたらされたと言えるだろう。

 なお、装着感や立体感というのは、手首に載せてみて気付けることも多い。G-SHOCKはeコマースが充実しており、公式WEBサイトでも商品の購入は可能だ(ただしGM-S2110の商品ページはまだない)。しかし可能であれば、店舗で実機を目で見て、手首に載せてみることを、特にこのレディースG-SHOCKではおすすめしたい。



Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


パリ五輪新競技「ブレイキン」でメダルが期待される福島あゆみ。着用するG-SHOCKはどんなモデル?

https://www.webchronos.net/features/116888/
レディース腕時計のおすすめブランド8選。代表的なモデルも紹介【カルティエやシャネル、オメガなど】

https://www.webchronos.net/features/115161/
オメガ、チューダーからジュエラーまで、2024年新作の代表的レディースウォッチを5社から紹介!

https://www.webchronos.net/features/114333/