パイロットウォッチの最前線を、人気ブランドの5モデルから見る

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2024.08.13

現行のパイロットウォッチより、5本を厳選して紹介。コックピットという過酷な環境において、パイロットのサポートをすべく誕生したパイロットウォッチは、その高い視認性や堅牢性から、日常生活でも大活躍してくれる実用時計の筆頭ジャンルだ。

ブレゲ タイプ 20 2057

野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2024年8月13日公開記事]


人類史の発展を陰で支えたパイロットウォッチ。その代表作を紹介。

ライト兄弟が固定翼機による世界初の有人動力飛行に成功したのは、1903年のこと。その後、1909年にはルイ・ブレリオがドーバー海峡の横断飛行に成功し、1927年にチャールズ・リンドバーグが無着陸の大西洋横断飛行を達成した。現代では長距離における一般的な移動手段のひとつとして利用されるなど、航空機は目覚ましい進化を遂げてきた。

その発展に寄与してきたのが、パイロットたちを手元で支えるパイロットウォッチだ。飛行時間や現在位置を正確に割り出し、安全な飛行を行うためには、磁気や振動、気圧の変化に対応し、操縦しながらでも時刻を瞬時に確認できるパイロットウォッチが不可欠であったのだ。

今回は、そんな人類史の発展を陰で支えてきたブランドが展開するパイロットウォッチより、5つの代表作を紹介する。恐らく、実際に航空機を操縦できる人は多くないだろう。しかし、長い歴史の中で培われてきた視認性や堅牢性は、日常生活の中でも大きなメリットをもたらしてくれるはずだ。なお、モデルの選定にあたっては、過度に稀少ではなく、通常に購入可能であることを前提としている。


IWC「パイロット・ウォッチ・マークXX」Ref.IW328204

1948年に登場した「マーク11」に始まる、IWCマークシリーズの最新作。基本的なデザインは前作「マークXVⅢ」を踏襲しており、アラビア数字インデックスとローザンジュ型の時分針を組み合わせたシンプルなダイアルは、あらゆる環境下での高い視認性と判読性を約束する。3時位置にはデイト表示が配され、ビジネスウォッチとしても根強い人気を誇る。

ここで紹介するのは、ミリタリー感を抑えたサンレイ仕上げのブルーダイアルモデル。地味な印象になりがちなパイロットウォッチだが、本作では鮮やかなブルーが手元で確かな存在感をもたらしてくれる。

サテン仕上げを基調としたケースには、ベゼルやエッジにポリッシュを施すことで立体感が与えられている。前作に比べてラグの長さが抑えられ、取り回しやすくなったこともポイントだ。重厚感のあるステンレススティールブレスレットは、「EasX-CHANGE」の採用によって簡単にケースから脱着することが可能だ。ムーブメントは、約120時間のロングパワーリザーブを備えた、Cal.32111を搭載する。

IWC パイロット・ウォッチ・マークXX

IWC「パイロット・ウォッチ・マークXX」Ref.IW328204
シンプルなデザインはそのままに、着々と完成度を高めるIWCのマークシリーズ。その最新作である「パイロット・ウォッチ・マークXX」では、ロングパワーリザーブを備えたハイスペックなムーブメントが搭載された。自動巻き(Cal.32111)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。100m防水。100万1000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868


ロンジン「ロンジン スピリット Zulu Time」 Ref.L3.802.4.63.6

1832年創業の老舗ブランド、ロンジン。同社はその長い歴史の中で多くの冒険家をサポートしてきた。そんな歴史的背景からインスピレーションを得て誕生したのが、「ロンジン スピリット」コレクションだ。その中のGMT機能搭載モデルである「ロンジン スピリット Zulu Time」は、1925年に登場した同社初のGMTを付加した腕時計の、ダイアルに配された“Zフラッグ”から着想を得ている。

マットなブラックダイアルには、ゴールドカラーで縁どられた立体的なアラビア数字インデックスと、高精度であることを示す5つの星が配されている。24時間表記の双方向回転ベゼルは、深いグリーンが上品なセラミックス製。GMT針と組み合わせることによって、最大3つのタイムゾーンの時刻を同時に表示することができる。

シャープなエッジが印象的なケースは、コンパクトな直径39mm。10気圧防水を備えており、デイリーユースにもぴったりな仕様がうれしい。

搭載するCal.L844.4は、約72時間のパワーリザーブに加え、耐磁性に優れるシリコン製ヒゲゼンマイを採用したムーブメントだ。

ロンジン ロンジン スピリット Zulu Time

ロンジン「ロンジン スピリット Zulu Time」Ref.L3.802.4.63.6
レトロなカラーリングが与えられた「ロンジン スピリット Zulu Time」のグリーンベゼルモデル。ダイアル6時位置に輝く5つの星は、高精度の証だ。自動巻き(Cal.L844.4)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39mm、厚さ13.5mm)。10気圧防水。48万9500円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350


ブレゲ「タイプ 20 2057」Ref.2057ST/92/3WU

フランス空軍からの要請を受け、1950年代に開発されたフライバック機構付きパイロットクロノグラフ「タイプ 20」の復刻モデル。3時位置に配した大型の30分積算計やポンプ型のプッシャー、円錐形のリュウズ、ソリッドな回転ベゼルなど、オリジナルの意匠を忠実に再現している。

ケースはサテン仕上げを主体としており、クラシカルなパイロットウォッチらしく華美さは抑えられているが、ラグやベゼル、リュウズのはっきりとしたエッジからは、高級機らしい緊張感が垣間見える。

特筆すべきは、新規に開発された自動巻きクロノグラフムーブメントCal.7281だ。このムーブメントは、直線運動をする強固なリセットハンマーを搭載するなど、よりフライバック機構の安定性を重視した設計を持つ。さらに、高い携帯精度が望める毎時3万6000振動のハイビートに加え、耐磁性に優れるシリコン製のガンギ車、アンクル、ヒゲゼンマイを採用し、パワーリザーブは約60時間を確保するなど、現代的なスペックを備えている。

ブレゲ タイプ 20 2057

ブレゲ「タイプ 20 2057」Ref.2057ST/92/3WU
かつてフランス空軍へ納入されていたクロノグラフウォッチを復刻したモデル。強固なフライバック機構を採用した、新型ムーブメントを搭載する。自動巻き(Cal.7281)。34石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211


ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」Ref.AB0138211B1P1

これまでに数多くのパイロットウォッチを手掛けてきたブライトリング。同社を代表するコレクションのひとつが、「ナビタイマー」だ。燃費や距離、速度などを算出することができる航空用回転計算尺を搭載し、ベゼルを回転させることによってあらゆる計算を瞬時に行うことが可能なナビタイマーは、1952年の誕生以降、多くのパイロットに選ばれてきた。

その最新作が、「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」だ。2022年のモデルチェンジによって12時位置にはAOPAのロゴが復活し、デイト位置の見直しやタキメーターのオミットなどの変更が加えられたが、特徴的な航空用回転計算尺や3つのインダイアルなど基本的なデザインは1952年から変わらず、パイロットをサポートするための機能に従ったアイコニックな意匠を受け継いでいる。

初代モデルでは手巻きクロノグラフムーブメントを搭載していたが、本作では自社製自動巻きクロノグラフムーブメントのCal.01を採用。堅牢性とメンテナンス性に優れた設計を持ち、日付変更禁止時間帯がなく、約70時間のパワーリザーブとC.O.S.C.公認クロノメーターを取得した高精度を備えるCal.01は、パイロットからの信頼に応え得る高いスペックを持ち合わせている。

ブライトリング ナビタイマー B01 クロノグラフ 43

ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」Ref.AB0138211B1P1
「クロノマット」と双璧を成す、ブライトリングを代表するパイロットウォッチ。初代の基本デザインを踏襲しつつ、時代に即したアップデートが加えられている。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。118万8000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


ハミルトン「カーキ パイロット」Ref.H76215140

長年、アメリカ軍へミリタリーウォッチを供給してきたハミルトンの歴史を物語る「カーキ」。そのコレクションは、陸の「カーキ フィールド」、海の「カーキ ネイビー」そして空の「カーキ パイロット」によって構成されている。

ここで紹介するのは、カーキ パイロットの2024年新作モデルだ。パイロットウォッチらしく、ホワイトのインデックスと大型の時分針によって高い視認性が確保され、ノンデイト仕様のためにシンメトリーで端正なレイアウトに仕上がっている。すっきりとしたケースにはリュウズガードが配され、リュウズに衝撃が加わることを防いでくれる。

その出自はミリタリーウォッチであるものの、日常でも使いやすくデザインされている点にも注目だ。爽やかなブルーのダイアルが上品な印象をもたらし、直径36mmのコンパクトなケースは、スーツとの相性にも優れている。

シースルーバックを採用し、ムーブメントを鑑賞できることもポイント。本作が搭載するCal.H-10は、約80時間のパワーリザーブと耐磁性に優れるニヴァクロン™製ヒゲゼンマイを採用している。

ハミルトン カーキ パイロット

ハミルトン「カーキ パイロット」Ref.H76215140
ミリタリーウォッチとしての高い実用性をベースに、日常使いにも適したパッケージを持つ「カーキ パイロット」の最新作。約80時間のパワーリザーブも心強い。自動巻き(Cal.H-10)。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径36mm、厚さ11.15mm)。10気圧防水。16万8300円(税込み)。(問)ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371


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