ハミルトン「ジャズマスター パフォーマー オートクロノ」を実機レビュー。スポーティーに仕立てられたデザインと、ブルー&シルバーの爽やかなダイアルが魅力の本作は、ハミルトンの底力を感じさせる良作だ。
Text & Photographs by Tsubasa Nojima
[2024年8月13日公開記事]
スポーティーに生まれ変わった「ジャズマスター」
ジャズ音楽のような洗練されたデザインが魅力のハミルトン「ジャズマスター」コレクション。シンプルなドレスウォッチから、遊び心あふれるオープンハートモデル、GMTやクロノグラフといった複雑機構を搭載したモデル、ダイバーズウォッチスタイルの「ジャズマスター シービュー」など、豊富なバリエーションとともに親しまれてきたジャズマスターだが、そのラインナップに昨年、「ジャズマスター パフォーマー」が加わった。
その最大の特徴は、クラシカルな印象の強かった既存のジャズマスターとは打って変わって、スポーツシックなテイストに振ったデザインだろう。少し幅の広くなった時分針や数字の刻まれたベゼル、サテン仕上げを多用した外装からは、モダンで洗練された雰囲気が漂う。
スポーティーなデザインが与えられた「ジャズマスター パフォーマー オートクロノ」。発色の良いブルーダイアルには、繊細なサンレイ仕上げが施されている。自動巻き(Cal.H-31)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ15.22mm)。10気圧防水。34万3200円(税込み)。
今回はそんなジャズマスター パフォーマーから、2024年に追加されたばかりのブルーダイアルのクロノグラフモデル、「ジャズマスター パフォーマー オートクロノ」のインプレッションをお届けする。なお、同時に発売された34mmケースの3針モデルに関しては、すでにインプレッションが公開されている。併せてご覧いただければ、より深くジャズマスター パフォーマーについて知ることができるだろう。
爽やかなライトブルーダイアル
本作の爽やかな印象を決定づけているのは、何といってもサンレイ仕上げのライトブルーダイアルだろう。ほんのりスポーティーだが決してカジュアル過ぎない色味は、個性と汎用性をバランス良く両立させている。3時位置には30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを配した横3つ目のレイアウトを採用し、4時半位置のデイト表示が機能性を高めている。ダイアルからにじみ出る立体感と凝縮感は、インダイアルに施されたシルバーの縁取りとレコード状の溝がもたらしているものだろう。デイト表示の窓にはしっかりと面取りが加えられ、読み取りやすくなっていることも見逃せない。
ドーフィン型の時分針とバーインデックスの組み合わせは、シンプルで癖がない。サンレイ仕上げのダイアルにシルバーの針やインデックスを組み合わせると、視認性に劣ることもあるが、本作ではホワイトのスーパールミノバを塗布しているため、それらがダイアルに埋没してしまうことはない。なお、本作に採用されているスーパールミノバは、発光時間を長くしたX1グレードだ。この蓄光塗料によって、暗所でも十分に時刻を読み取ることができる。
サテン仕上げのステンレススティール製ベゼルには、タキメーターが刻まれている。これによって、スポーティーなテイストが高められ、今までのジャズマスターとは一風違った雰囲気に仕上がっている。クロノグラフ秒針はダイアルの際まで伸びており、タキメーターを用いての速度計測も容易だ。
サテン仕上げ基調のスポーティーなケース
ステンレススティール製のケースは、直線基調のすっきりとしたラインを描いている。直径は42mmと、クロノグラフウォッチとしてはおおよそ標準的と言えるだろう。ラグの先端は、スパッと切り落としたような角張った形状を持つが、エッジは適度に落とされ、指でなぞっても痛みを感じるようなことはない。全体はサテン仕上げを主体としているが、ベゼルのサイドやエッジ、プッシュボタンにはポリッシュが施されメリハリを利かせている。
ケースサイドは、裏蓋側に向かって緩やかに絞られるようなデザインだ。3時側には、トップにブランドロゴを刻印した大型のリュウズとふたつのプッシュボタン、もう反対のサイドには日付のクイックチェンジを行うためのコレクターが配されている。搭載しているムーブメントのためだろうが、ケースの厚みは15.22mmと、なかなかに存在感がある。
ステンレススティール製ブレスレットは、3連タイプを採用している。ボリューム感のあるケースに合わせ、ブレスレットのコマにも厚みが持たされているが、各コマの可動域は広く設定され、しなやかに動く。バックルはプッシュボタンで開閉する両開き式。閉じた状態ではバックルの存在が目立たないようになっている。見た目には上品だが、スポーティーなテイストの強い本作の場合、バックルの存在を前面に出してでも微調整が可能な仕様である方が良いのではないかと感じる。
信頼性に長けた自動巻きクロノグラフムーブメント
ねじ込み式の裏蓋はシースルーとなっており、内部のムーブメントを鑑賞することが可能だ。ブランドロゴがデザインされたローターや鼓動するテンプ、クロノグラフの作動をつかさどるカムの動きを楽しむことができる。
本作が搭載しているCal.H-31は、ETAのCal.7753をベースとした自動巻きクロノグラフムーブメントだ。持ち前の信頼性の高さを受け継ぎつつニヴァクロン™製ヒゲゼンマイを採用することで、優れた耐磁性と約60時間のパワーリザーブを確保している。
リュウズのねじ込みを解除し、そのままのポジションで主ゼンマイの巻上げ、一段引きで時刻調整を行うことができる。日付の調整は、先述の通りケースサイドのコレクターによって行う。操作自体はシンプルだが、ピン状の道具がなければ日付を調整することができないのは若干不便である。
スタイリッシュでお手頃なクロノグラフウォッチ
手首に装着してまず感じたのは、重厚な鉄の塊感だ。しっかりとした着け応えと、重量に起因する高級感を味わうことができる反面、長時間着けることを想定するのであれば、ある程度覚悟が必要だろう。加えて、手首周りが細い人の場合は、実際のサイズよりも大きく感じる可能性があることを留意したい。ケースの直径自体は42mmだが、ブレスレットのエンドピースが凸型に出っ張っているため、縦に長く感じるのだ。試着をしたうえで過大に感じる場合は、レザーストラップモデルも検討してみると良いかもしれない。
ネガな感想が先行してしまったが、大きさを除けば本作はミドルレンジの自動巻きクロノグラフウォッチとして、筆頭候補に挙がるべき1本だ。ライトブルーとシルバーのスタイリッシュなカラーリングは、スポーティーなクロノグラフでありながらもスーツに合わせやすく、視認性も十分に確保されている。ケースのボリューム感に関しても、裏蓋側に向かって傾斜を付けたデザインによって、見た目にはあまり気にならない。さらに注目すべきはその価格帯だ。外装の仕上げからムーブメントのスペックまで総合して、30万円台までで本作と勝負できるクロノグラフはかなり限られてくるはずだ。
クロノグラフは、2時位置のプッシャーでスタートとストップを行い、4時位置のプッシャーでリセットを行う。プッシャーの押し心地は少々硬めだが、まるで小枝を折るように押した感触がはっきりとしているため、確実に操作することが可能だ。スタートとストップを繰り返しても針飛びは認められなかった。
ハミルトンの現在地を表す好例
ハミルトンがここまで進化を遂げているとは思わなかった、というのが正直な感想だ。従来ではあまり見られなかったニュアンスカラ―のダイアルに加え、シャープなケースと堅牢なムーブメントを組み合わせた本作は、ハミルトンの現在地を知るうえでのベンチマークとなり得るのではないだろうか。もし手に入れたならば、末永く使い続けたいと素直に思えるモデルだ。
さらに、ジャズマスター パフォーマーには、豊富なバリエーションが展開されていることも忘れてはならない。クロノグラフモデルでは、シックなブラックダイアルやケースにゴールドPVD加工を施したカラーバリエーションが存在し、3針モデルとしては38mmケースのメンズ、34mmケースのレディースモデルもラインナップされている。着用者の好みや使用するシーンに合わせて、選ぶ楽しみもあるというわけだ。ペアウォッチとしてはもちろん、モデルを選べばシェアウォッチとしても使うことができる。店頭で見て触れて、ぜひその魅力を体験していただきたい。
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