高級時計を購入する際、消費者たちはどのような動機を持ち、なにを重視しているのだろうか? 2024年春に発表された、メディア投資やコンサルタントを行う「GroupM」とメディアエージェンシーの「エッセンス・メディアコム」による高級時計市場の消費動向に関する調査結果を紹介しよう。
[2024年8月15日公開記事]
変化する高級時計市場。消費者の購入動機とその傾向とは?
2024年春は、時計にまつわる市場調査が相次いで発表された。Chrono24やDeloitteに続き、今回はGroupM(メディア戦略における投資とコンサルタントを行う会社)とそのエージェントであるエッセンス・メディアコムが、Teadsと共同で行った高級時計市場の消費動向に関する調査結果を発表した。
この新たな調査によると「高級消費財の移り変わりと文化的変遷は、密接に関係している」という。つまり、高級品を求める顧客は常に移り変わり、そのためブランドは再投資を行い、競合が多数存在するなかでも自身のブランド力を発信するため、オンラインなどの新たなビジネスコードにも順応する。
この調査は高級時計の購入動機を分析するため、2023年5月から6月にかけて、4つの主要な市場において4000ユーロ以上の高級時計を購入した2000名を対象に行われた。4つの主要な市場とは、アメリカ、イギリス、アラブ首長国連邦、日本である。回答者についてより詳しく説明すると、過去24か月において4000ユーロ以上の高級時計を購入、または24か月後までに購入することを予定している25歳以上だ。
自分へのご褒美として高級時計を購入
調査結果によると、高級時計の購入は主に個人的な満足感や自分へのご褒美といった動機に基づいているようだ。購入の約80%が「お祝い」のため、もしくは個人的なイベントを記念するためであった。こういった理由は別段新しいものではなく、すでに何年もわたって同じ理由が指摘されている。
さらにこの調査によって、高級時計を購入した人の3分の2は男性で、その半数が35歳から49歳であったことがわかった。また10人中4人が、過去12カ月のうちに高級時計を購入しており、10人中7人が購入後24か月以内に新たな時計の購入を予定しているそうだ。
腕時計そのものよりもブランドを重視
注目すべき点は、時計を購入する際に、ブランドの評判が製品自体の評判より優先されるという結果が得られたことだ。回答者の52%が、購入の主な決め手はブランドであり、時計そのものよりも優先されると答えている。
その次に、職人技に対する評価がおよそ3分の1を占め、時計自体のオリジナリティを挙げる人が31%と迫っている。「この傾向は、ブランドの評判が時計購入以前に主な決定要因として考慮される(41%)ことを裏付けている」と、今回の調査責任者は報告書で述べている。
店舗での購入が主流だが、オンラインも存在感を増す
時計の購入方法については、店舗での体験を重視する傾向が依然として強いものの、3分の1がオンラインでの購入を選択するなど、ECも大きく伸びている。オンラインでの購入を好む傾向は、時計をギフトとして贈る意図がある消費者の間で多く見られている(41%)。
先述の通り、オンラインより店舗での購入が好まれるが、文化的な差もあるようだ。アメリカはオンライン購入において最も成熟した市場であり、54%がオンライン購入を経験している。逆に、日本ではまったく浸透しておらず、わずか7%に留まった。
支持を集めるのは“特別な体験”
ブランドが提供するサービスでは、ブティックの個別アポイントや工房見学が時計愛好家からの支持を集めている(70%)。これらのサービスは、少なくともヨーロッパではすでに浸透しており、ブティックでのパーティーも含め、ここ数年で何度も開催されている。
ただし、こうしたサービスへの関心度も国によって異なるようだ。日本では調査対象の51%が工房見学に興味を示したのに対し、アメリカでは約80%が興味を示した。
「これらのデータは、特別でパーソナライズされた体験の提供が、高級時計の購入者にとっては重要であることを示しています」と、今回の調査責任者は結論づけている。
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