エドックスってどんな時計ブランド?「クロノオフショア1」や「ネプチュニアン」など、代表的なモデルとともに解説!

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2024.09.12

2024年で創業140周年を迎えたスイス腕時計ブランド、EDOX(エドックス)。堅牢性に優れるプロフェッショナル仕様のモデルを多くそろえるだけでなく、過去、モータースポーツやパワーボート、セーリングなどのレースで公式計時を務めるなど、スポーツとの深い関わりを持ってきたブランドだ。本記事では、そんなエドックスの歴史や、代表的なコレクションについて解説する。

エドックス クロノオフショア1

新居賢人:文
Text by Kento Nii
[2024年9月12日公開記事]


エドックスってどんなブランド?

エドックスは、1884年にスイスのビール/ビエンヌで創業したブランドだ。ダイバーズウォッチやクロノグラフといった、高性能なスポーツウォッチを多く輩出しており、愛用するスポーツ選手、レーシングドライバーも多い。また、高い品質と良心的な価格帯が両立されている点も特徴と言える。

そのコレクションは機能性とデザイン性を兼ねたスポーツモデルに加え、ツール感の強いモデル、過去のモデルをインスパイアしたクラシックモデルまで、多彩な選択肢が用意されている。

またエドックスは、防水時計ブランドのパイオニアを標榜している。同ブランドは、1961年登場の「デルフィン」を開発するにあたり、防水性を維持するために主流であったねじ込み式リュウズではなく、リュウズのOリング(パッキン)を2重にした「ダブル・Oリング」と呼ばれる構造を採用した。当時としては画期的であったこの手法により、ブランド初の防水時計でありながら、200m防水を実現したのであった。

以降、エドックスはブランドスローガンに「THE WATER CHAMPION」を据え、長年にわたって防水時計の製造技術を研ぎ澄ましてきた。その技術が大いに反映された現行コレクションでは、より複雑なケース構造によって、立体的なフォルムに高い耐久性と防水性を与えることを実現。加えて316Lスティールやチタン、セラミックスなどの素材を使って、デザインと機能性の両立を図っている。

ちなみに、砂時計をモチーフとした特徴的なシンボルロゴは、1900年から使用されている。これはエドックスというブランド名が、古代ギリシャ語で「時間」を意味することに由来するものである。


スポーツシーンとの深い関わり

エドックスはスポーツシーンとの関わりが深いブランドだ。モーターレースをはじめとした各種競技で公式計時を務めてきた実績があり、競技チームやアスリート個人とも意欲的にパートナーシップを結んでいる。

そして、この精神はタイムピースにも強く反映されている。特に、現行モデルである「クロノオフショア1」の原型となった「クラスワン」や「クロノラリー」などは、競技そのものからデザインのインスピレーションを獲得しており、信頼性の高さも相まって、アスリート達の支持を集めているのだ。

スポーツとの深い関わりも、今日のエドックスのタフなウォッチメイキングに欠かせない要素と言えるだろう。


エドックスの創業から現在まで

自社のアーカイブをもとにした豊富なコレクションは、歴史を有している時計ブランドならではだ。

エドックスは、時計職人であるクリスチャン・リュフリ=フルーリーによって1884年に創業された。同氏の妻、ポーリーンに贈った懐中時計が創業のきっかけになったのは有名なエピソードである。同氏は、妻・ポーリーンの誕生日に自らデザインから製作までを行った懐中時計を贈った。それをいたく気に入ったポーリーンは、時計ブランドの設立を提案。これがエドックスの歴史が始まるきっかけとなったという。

そんなエドックスは1920年代より腕時計製造に参入。事業を拡大していき、1955年には500人近い時計職人とともに巨大な時計製造工場を構え、現代まで続くコレクションの原型を続々と生み出していくことになる。

この頃誕生した代表的なモデルには、1961年に登場した同社初の防水時計「デルフィン」や、1965年登場の、500m防水を誇る「ハイドロサブ」などが挙げられる。また、エレガントなクッション型ケースに、高い耐衝撃性と防水性を備えた「ブルーバード」も1969年に誕生している。

続く1970年代には、クォーツショックの煽りもあり、エドックスは現スウォッチ グループである「ASUAG」傘下へ入ったが、1983年には再び独立。創業当初より打ち立ててきた「革新」「高級」「エレガンス」という精神のもと、高品質な時計作りに注力し、現在まで独立ブランドの体制を貫いている。


エドックスの代表的なコレクション

エドックスの基幹を成すコレクションには、「クロノオフショア1」、「ネプチュニアン」、「デルフィン」のほか、「スカイダイバー」や「クロノラリー」が挙げられるだろう。いずれにも共通して高い防水性が備わっており、堅牢なスポーツウォッチを選ぶ上で魅力的な選択肢となる。


クロノオフショア1

エドックス クロノオフショア1

エドックス「クロノオフショア1 クロノグラフ」Ref.10242-TINR-NIR
クォーツ(Cal.EDOX102)。Tiケース(直径45mm)。1000m防水。29万7000円(税込み)。

クロノオフショア1は、エドックスのフラッグシップに位置付けられたダイバーズウォッチコレクションだ。パワーボートレースからインスピレーションを獲得した、2006年登場の「クラスワン」がデザインの原型となっており、海のF1とも呼ばれるハイスピードレースの、スリリングかつタフな世界観が表現されている。

「エレガント」と「タフネス」の融合も本コレクションのデザインコンセプトのひとつである。ゴールドケースを採用したモデルや、アーバンスタイルに合わせられるモデルも登場しており、使えるシーンの幅が広い。デザイン、機能の両面から「THE WATER CHAMPION」を体現するコレクションと言える。

また、その堅牢性も特筆すべきポイントだ。全面的なリニューアルが行われた2016年以降は、すべてのモデルが500m防水または1000m防水を備えるようになった。さらに、ヘリウムエスケープバルブやハイテクセラミックベゼルも搭載しており、本格派のダイバーズウォッチとしての魅力も備えている。

加えて、“1”のみをアラビア数字としたインデックスも、本コレクションを語るうえで欠かせないポイントと言える。レースにおけるチャンピオンを追い求める姿勢を示したものであり、クロノオフショア1のシグネチャーアイコンと呼ぶべき意匠だ。また、ソリッドケースバックにプロペラのモチーフが用いられるなど、コレクションの随所でモチーフへのリスペクトを感じることができる。

エドックス クロノオフショア1 日本限定モデル

ソリッドバックにあしらわれたプロペラモチーフは、本コレクションの象徴的な存在のひとつだ。なお、プロペラはパワーボートの推進装置である。

現行のラインナップは、機械式とクォーツ式の両方が展開されており、クロノグラフモデルをメインに、「プロフェッショナル」と呼ばれる3針のバリエーションも登場している。また、カーボンやチタンといった素材を使用し、堅牢性をそのままに、軽やかさを追求したモデルも登場している。


ネプチュニアン

エドックス ネプチュニアン オートマティック ジャパン リミテッドエディション

エドックス「ネプチュニアン オートマティック ジャパン リミテッドエディション」Ref.80120-3BUM-NANNGM2
自動巻き(Cal.EDOX80)。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径44mm、厚さ15.6mm)。1000m防水。30万8000円(税込み)。

ネプチュニアンは、クロノオフショア1と並んでエドックスを代表するダイバーズウォッチシリーズだ。優れたデザイン性と卓越した防水性を特徴としており、オートヘリウムエスケープバルブ(1000m防水モデルの場合)や逆回転防止ベゼルを搭載するなど、プロスペックなダイバーズウォッチとしての魅力も備えている。

防水性は最大で1000m防水を誇り、積み上げられてきたエドックスの防水技術を体現するコレクションと呼べるだろう。その誕生は2021年のことで、「スカイダイバー」コレクションから1973年に打ち出されたモデルをリデザインしたダイバーズウォッチとして登場した後に、独立したコレクションへと派生した経緯を持つ。

名前は、海の神である「ネプチューン」に由来している。また、そのタフネスの象徴として、モデルのケースバックにはネプチューンのモチーフがエングレービングされている。

梨地パターンのプレートを背景に、ネプチューンのモチーフがあしらわれたケースバック。本コレクションならではの特別感ある仕様である。

なお、ネプチュニアンには、2023年より「グランデ リザーブ」と呼ばれるシリーズも登場している。新たにスイスの名門マニュファクチュール「ラ・ジュー・ペレ」社のムーブメントをベースに採用することで、約68時間のパワーリザーブを実現したシリーズだ。防水性は300mに抑えられたが、従来モデルから大きくダウンサイジングに成功した、コンパクトなネプチュニアンに仕上がっている。

エドックス「ネプチュニアン グランデ リザーブ デイト オートマティック」Ref.80801-3NRM-NIR
自動巻き(Cal.EDOX808)。パワーリザーブ約68時間。SSケース(直径42mm)。300m防水。35万2000円(税込み)。

通常モデルとグランデ リザーブのいずれにも、表情豊かなグラデーションダイアルを中心に、豊富なデザインバリエーションが用意される。


デルフィン

エドックス デルフィン

EDOX「デルフィン オリジナル メカノ オートマティック」Ref.85303-357RN-NRN
自動巻き(Cal.EDOX853)。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径43mm)。200m防水。34万6500円(税込み)。

1961年に登場し、「THE WATER CHAMPION」というスローガンの確立につながったデルフィンは、まさにエドックスのマイルストーンと呼ぶべきコレクションだ。後に特許を取得するダブル・Oリングを採用したブランド初の防水時計であり、その画期的な手法と、200m防水は現行コレクションにまで受け継がれている。

現行のデルフィンのデザイン性は、1973年登場モデルをルーツに持つ。中でも、ビス留めされた12角形ベゼルはコレクションのシンボルと呼ぶべき意匠だ。パーツごとに異なる仕上げを施すことで、それぞれの面の美しさが際立ち、時計全体の存在感の底上げに役立っている。モダンとクラシックが両立したその造形は、多くのシーンで着用しやすい印象だ。

2023年に「デルフィン」に加わった、12角形のベゼルが特徴的なモデル。スポーティーな新設計ブレスレットにも注目したい1本だ。

また、ラインナップが豊富に用意されている点もデルフィンの魅力である。現行コレクションでは、独創的なオープンワークダイアルを特徴とする3針モデル「デルフィン オリジナル メカノ」に、「デルフィン オリジナル クロノグラフ」と呼ばれるスポーティモデル、レディースコレクションである「デルフィン オリジナル ダイバー デイト レディ」が登場しており、幅広い需要を満たすコレクションと言える。


スカイダイバー

エドックス スカイダイバー

エドックス「スカイダイバー 38 デイト オートマティック」(左から)Ref.80131-3NM-NIB/Ref.80131-3BUM-BUIN
自動巻き(Cal.EDOX80)。SSケース(直径38mm、厚さ13.7mm)。300m防水。37万4000円(税込み)。

スカイダイバーは、軍用ウォッチであった1969年の初代モデルのデザイン性を復刻したスポーツラインだ。パイロットウォッチライクのデザイン性に、優れた防水性を備えており、陸・海・空を網羅するコレクションとなっている。

2019年に正式にローンチした本コレクションは、レトロな印象の針・インデックスや、それを覆うドーム型サファイアクリスタルから漂う、味わい深いヴィンテージ感を魅力としている。一方で、ねじ込み式リュウズの採用による300m防水や、ハイテクセラミックス製のベゼルなど、現代基準のタフネスを備えており、日常で安心して使えるレトロウォッチとなっている。

ちなみに、オリジナルに当たる初代スカイダイバーは、当時のスイス軍大佐が、空挺部隊のために極秘裏に製作を依頼したミリタリーウォッチであったことが判明している。このエピソードを象徴する意匠として、各モデルのケースバックには、パラシュート部隊のエングレービングが施されている。

パラシュート部隊のモチーフとエドックスのロゴをあしらわれたケースバック。コレクションごとにモチーフが異なるというのが、エドックスの面白みのひとつだ。

現行のラインナップは、オリジナルの復刻デザインモデルに加え、1973年登場の第二世代スカイダイバーの復刻デザインモデルが登場済みだ。また、42mm径モデルに加えて、コンパクトな38mm径モデルもリリースされている。


クロノラリー

エドックス クロノラリー

エドックス「クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティック」Ref.08202-3BU-BUIN
自動巻き(Cal.EDOX082)。SSケース(直径41mm、厚さ16.8mm)。300m防水。世界限定600本。71万5000円(税込み)。

クロノラリーは、ラリー競技の世界観を表現した、スポーティなクロノグラフウォッチコレクションである。このラリーレースというのは、法規にのっとった、公道での走行が可能な自動車を乗りこなし、タイムを争う競技だ。サーキットで行われるレースと異なり、公道で行われるため、集中力や注意力が、いっそうシビアに求められる競技と言える。クロノラリーは、そのスピリットが強く反映されたディテールや、スピード感のあるデザイン性を特徴としている。

また本コレクションは、レースに欠かせないツールウォッチとして、実践向きの仕様を多く備えている。堅牢なケースや、視認性を重視したクロノグラフ、ドライビンググローブを着用したままでも操作できる大型のプッシャーはその筆頭であり、これらが生み出す独特の機能美もコレクションの魅力に数えられるだろう。

エドックス クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティック

パンチング加工が施された付属のブラウンレザーストラップと合わせると、クラシカルとレーシーなテイストが融合する。なお、本作のケースバックはトランスパレント式となっているため、ムーブメントを観賞することができる。

なおエドックスは、2021年から2024年6月まで、自動車メーカーBMWの研究開発グループ「BMW M モータースポーツ」のオフィシャル・タイミング・パートナーを務めていた。これを記念するコラボモデルや、両社共同で製作されたモデルも多く登場しており、カーマニアにもたまらないコレクションとなっている。


デザインと機能性を兼ねる、エドックスの腕時計

エドックスはその哲学に則って、高品質かつデザイン性に優れたモデルを、誠実な価格帯で提供し続けているブランドだ。また、スポーツウォッチという括りの中で、多彩なデザインの選択肢が用意されている点も独自の魅力と言える。ぜひとも1本、お気に入りのモデルを探してみてほしい。


Contact info: ジーエムインターナショナル  Tel.03-5828-9080
参考サイト:https://www.edox.jp/


【インタビュー】エドックス セールス&マーケティングディレクター「クリスチャン・オッツ」

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