日本語では「香水」とひとまとめにされるが、フレグランスは実は賦香率によってオーデコロンやオードトワレなど、呼び名が異なる。パルファンはその中でも最高濃度のインティメイトな香り。FUEGUIA 1833のハカランダ パルファンを例に、濃厚でありながらもそれほど拡散はしない、「自分だけの」男の香りのまとい方を、長年女性誌の編集に携わってきた敏腕女性編集者であり、エッセイストでもある麻生綾氏が指南する。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2024年9月号掲載記事]
まるで深い森に迷い込んだような濃厚な“パルファン”をまとう
2010年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで誕生したフレグランスメゾン。中身には生分解性のある植物性原料のみを使用、また外箱も倒木を再利用するなど、創業時からサステナビリティを重視している。日本第1号店は東京・六本木のグランドハイアット東京、その後GINZA SIX、麻布台ヒルズにも出店し、着実にファンを獲得中。
(右から)FUEGUIA 1833 ハカランダ パルファン 100ml、5万600円(税込み)。同 プーラ エッセンシア 8ml、5万1700円(税込み)。
香りを選ぶにあたり、まず知っておきたいのが賦香率である。大抵の場合フレグランスの構成要素は水、アルコール、香料の3つで、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファン、パルファンの順に香料の濃度がアップ=賦香率が高くなる。例えばオーデコロンなら2~5%、パルファンなら15~40%のように。また、賦香率に比例して香りの持続時間は長く、さらには値段も上がるのが常である。
お勉強ついでに用語の話も。香りについて少々詳しい人たちの間では、「香水」という表現はあまり使わない。代わりに総称としてよく用いられるのは「フレグランス」である。なぜなら、先述の賦香率が最も高いパルファンも日本語では「香水」なので、一般名称としての「香水」と混同されやすいから。こんな些細な言葉の扱いでも、わかっている人とそうでない人に分かれてしまうので気をつけたいところ。
さらにもうひとつ。パルファンには、香りが強い=あたり一面に薫るイメージがあるかもしれないが、その実はちょっと違う。濃厚なのはその通りなのだが、フレグランスは賦香率が高いほど拡散しないので、周囲に香りが広がるのはむしろつけた瞬間にアルコールが揮発するオーデコロンやオードトワレのほう。パルファンとは他者へのアピールというより、自分だけのために薫らせるとてもインティメイトな存在なのだ。
さて、今回ご紹介したいのはFUEGUIA(フエギア)1833のハカランダというパルファン。ハカランダ――楽器に詳しい人ならご存じかもしれないが、そう、ギターに使われる木材である。香調はまるで深い森に迷い込んだかのような猛烈なウッディノート。ちなみに、ブランド創設者のジュリアン・ベデルは、ギタリストとしての一面も持ち、創香にあたってはギターを弾き込んでいるうちにお腹のあたりから木の香りが立ちのぼってくる感じをイメージしたのだとか。
また、こちらにはパルファンのさらに上を行く、水もアルコールも混ざらない純度100%のプーラ エッセンシアがラインナップされている。そしてこれがもう、たまらなくいい香り! なのだ。プーラ エッセンシアとパルファン、それぞれ単体でも構わないのだが、例えば前者を耳の後ろに、後者をおへその下や足首などの下半身に。香りがさらに熱く雄弁に語り出すので、こんなダブル使いもぜひ試してみてほしい。
著者プロフィール
麻生綾
美容編集者/エッセイスト&コピーライター。東京育ち。女性誌の美容ページ担当歴30余年、『25ans』『婦人画報』(ともにハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)各誌で副編集長、『etRouge』(日経BP)で編集長も務めた。趣味も美容、そして美味しいもの探し、鬱アニメ鑑賞、馬の骨活動。