タグ・ホイヤーの主要コレクションから「コネクテッド」「フォーミュラ1」の2024年最新モデルを紹介。クロノス日本版編集部の4名が現行モデルの中から選んだ、それぞれの“最愛時計”もあわせて紹介する。
Photographs by Masahiro Okamura (CROSSOVER)
吉田巌、長谷川剛:取材・文
Text by Iwao Yoshida, Tsuyoshi Hasegawa
Edited by Iwao Yoshida
[クロノス日本版 2024年11月号掲載記事]
待望の新色に加え趣味に応えるコラボまで
「タグ・ホイヤー コネクテッド」
デジタル情報端末にスポーツウォッチのエッセンスを融合させた「タグ・ホイヤー コネクテッド」。今年は待望の新色に加え、オプションまで楽しいコラボレーションモデルを複数リリースした。
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既存モデルであるブラックとブルーに次ぐ、待望の新色となるグリーン。時計ヘッドを飾るフェイスは20以上をラインナップする。心拍数やコンパス、マイクに気圧計などのセンサーを搭載。フィットネスや各種スポーツに即したモニタリング機能付き。クォーツ(Cal.E4 Wear OS byGoogle™搭載)。SSケース(直径45mm)。50m防水。17万500円(税込み)。
2015年の初代モデル発表以来、ラグジュアリー コネクテッドウォッチのシーンを牽引するタグ・ホイヤー。ウエアラブルデバイスとスポーツウォッチの融合を目指し、今年は高級感と若々しさを備えたグリーンの新色をリリースした。艶やかなセラミックベゼルと同色のラバーストラップを配したモデルは、アクティブにして落ち着きを感じさせる。また熱心なゴルフファンに向けて魅力的なコラボレーションモデルも登場した。タグ・ホイヤーとライフスタイルブランドの先駆者、「マルボンゴルフ」がタッグを組んだ同作は、イエローやターコイズなどカラフルな配色が目を引く。ベゼルにはホールを象徴する数字と“GOLFEDITION”の文字が入る。ケースには軽量なチタンを採用し、スポーツ全般に最適だ。
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世界的なカーレース大会で100回以上の優勝実績を誇る名門レーシングチームとのコラボレーション第2弾。多彩な専用フェイスにより、時計を超えた楽しみが広がる。年間を通し世界各地で開催されるレースの旅をフォローする機能は特にユニークだ。クォーツ(Cal.E4 Wear OS by Google™搭載)。Tiケース(直径45mm)。50m防水。23万6500円(税込み)。
(左)タグ・ホイヤー コネクテッド キャリバーE4 45mm × マルボンゴルフ エディション
腕に着けゴルフプレーを続けることで、ユーザーのスコアチェックに始まり、各ショット等の記録を自動にてデータ化。次回の使用クラブ提案などのフォロー機能を持つ。イエローやグリーンなどカラフルなデザインがプレイを楽しく盛り上げる。クォーツ(Cal.E4 Wear OS by Google™搭載)。Tiケース(直径45mm)。50m防水。28万6000円(税込み)。
そしてF1レースに熱中する人向けとして見逃せないのが、「オラクル・レッドブル・レーシング」とのコラボレーションバージョン。レーシーな赤ラインのストラップに加え、ふたつの専用フェイスが設定されており、他のモデルにはない楽しみが味わえる。フェイスのひとつ〝Season〞は、文字盤上にチームが参戦する開催国の国旗が並ぶなど、レース観戦を盛り上げる機能付き。また「オラクル・レッドブル・レーシング」専用のアプリケーションも付属しており、年間を通してF1レースの旅を疑似体験できる趣向だ。レース好きにはたまらないオプションを豊富にそろえている。
フェイス バリエーション
一般的なスマートウォッチと同様、電子的なデジタル画像にて時計表示を行うタグ・ホイヤーの「タグ・ホイヤー コネクテッド」。あらかじめフェイスと呼ばれる時計表示のデータがコネクテッド内に複数インプットされており、簡単な操作にて好みのフェイスに切り替えることができる。
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競争心に火を付ける個性を極めたクロノグラフ
「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」
モーターレーシングにインスピレーションを得て誕生した「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」。今季を飾るのはレースの熱狂を掻き立てるコラボレーションモデルと、熟成の機械式クロノグラフだ。
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過酷なカーレースである「インディ500」がもたらす白熱のスリルを伝えるスペシャルエディション。シャープなアラビア文字盤と情熱的な赤色使いなど、レースマインドに火を付けるクロノグラフだ。スポーツカーマニアへのギフトとしても最適なボックスセット販売。クォーツ。SSケース(直径43mm)。200m防水。32万4500円(税込み)。
ファン・M・ファンジオやアイルトン・セナといった伝説のレーシングドライバーを通し、F1という最高峰のレーシングシーンに深くコミットしてきたタグ・ホイヤー。世界的にF1レースがホットであった1980年代に初めて打ち出された「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」は、F1カーのごときポップで鮮烈なカラーリングや、アクティブに使える樹脂製パーツを多用したアバンギャルドな作りがポイントだった。また、早くからマックス・フェルスタッペンやレッドブル・レーシングなど、レースシーンと協業を重ねてきたモデルとしても知られている。
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今年の新作でまず注目すべきが、米国で開催される過酷なカーレース「インディ500」とのコラボレーションモデルだ。計器を思わせる黒文字盤の随所に赤をあしらったデザインが、レースの気分を盛り上げる。赤く塗られた時表示の“11”は、「インディ500」が誕生した1911年の百年後に結ばれた、タグ・ホイヤーと同レースの絆を示している。そして機械式時計ファンに人気の自動巻きモデルにはニューカラーが登場。オレンジを小気味良くあしらった新作は、「タグ・ホイヤー カレラ」にも採用され高評価を得たキャリバー16を搭載する。信頼性あるメカニカルクロノグラフでありながら、リーズナブルな価格が大きなポイントだ。気になる新規ラインナップは、グリーンとブルーの2本。機械式クロノグラフのエントリーモデルとして、理想的なニューカマーである。
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(左)メカニカルファンに贈るスポーティークロノグラフに、ニューカラーが追加投入。オレンジをインデックスやパーツにあしらったデザインは、エネルギッシュかつエレガント。なかでもブルーモデルは若々しく爽やかな印象だ。自動巻き(Cal.16)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径44mm)。200m防水。52万2500円(税込み)。
(右)人気の「フォーミュラ1 クロノグラフ」に、トレンディなグリーンモデルが新たに加わった。タグ・ホイヤーが熟成を重ねたCal.16を搭載しており、精度や耐久性は抜群。“縦目”の3カウンターも個性のひとつだ。自動巻き(Cal.16)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径44mm)。200m防水。52万2500円(税込み)。
タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ
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クォーツ。SSケース(直径43mm)。200m防水。28万6000円(税込み)。
オフタイムの日常やアクティブな趣味の時間に使用するなら、カラフルなクォーツ式クロノグラフの「フォーミュラ1 クロノグラフ」がよく似合う。アバンギャルドなビビッドダイアルは、気分を高めるもうひとつの“機能”と言えるのだ。
写真のブレスレットタイプのほか、文字盤のカラーと同色のラバーストラップを添えたモデルも別途用意されている。ロゴ入り時計ケースが付属。
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クォーツ。SSケース(直径43mm)。200m防水。28万6000円(税込み)。
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クォーツ。SSケース(直径43mm)。200m防水。28万6000円(税込み)。
ポルシェをオマージュした特別なクロノグラフ
「タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ×ポルシェ96」
サーキットの内外で交差し、絡み合ってきたタグ・ホイヤーとポルシェの歴史。そんな両者の絆を象徴する新たなコラボレーションモデルが登場した。モータースポーツを愛する者なら見逃せない。
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ル・マン・デイトナ・ハイブリッドレギュレーションに準拠する「ポルシェ963」にインスパイアされた限定作。レーシングカーのシャシーを彷彿とさせるオープンワークダイアルが印象的だ。自動巻き(Cal.TH20-00)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径44mm)。100m防水。世界限定963本。128万7000円(税込み)。
ともに伝説的カーレースに因んだ「カレラ」という名の傑作プロダクトを生むなど、タグ・ホイヤーとポルシェの歴史は、モーターレーシングへの情熱という共通項により度々シンクロしてきた。映画『栄光のル・マン』でスティーブ・マックイーンは、「ホイヤー・モナコ」を腕にポルシェ917を駆った。1980年代にはF1マクラーレンチームをともに支え、88〜91年の4年連続のコンストラクターズチャンピオンに導いている。またタグ・ホイヤーはフォーミュラEの創始者の一社だが、2019年以降は同選手権にポルシェと結成したチームで参戦している。
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ここで紹介するのは、そんな両者の強固な絆から生まれた新作である。「タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ×ポルシェ963」はポルシェ、とりわけル・マンで戦うために開発されたLMDhカテゴリー車、「ポルシェ963」を着想の源に、とびきりアグレッシブな外観に仕上げられている。クルマ好きなら、ぜひチェックすべき逸品だ。
クロノス編集者の最愛タグ・ホイヤー
クロノス日本版編集部が、タグ・ホイヤーの現行モデルの中から最愛の時計をそれぞれ選出。みなさまはどのタグ・ホイヤーがお好み?
編集長・広田雅将「タグ・ホイヤー カレラ デイト」
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細腕にも最適なデイリーウォッチ
「タグ・ホイヤー カレラ」と言えば、どうしてもクロノグラフを思い浮かべてしまう。最新版のCal.TH20-00が優れていることを考えればなおさらだ。ただ個人的には、クロノグラフでないカレラも十分魅力的だ。例えばベーシックな「タグ・ホイヤー カレラ デイト」。近年の同社らしくケースの磨きは良いし、自社製の文字盤も、エッジの立ったインデックスを持つ。
ケースサイズは36mmと39mmの2種類。加えて全長が短いため、腕が細い人にもマッチする。優れた装着感は今のタグ・ホイヤーの美点だ。また、コンフィギュレーターで文字盤やストラップのマッチングを選べるため、自分好みに仕立てやすい。シンプルな分、良質さが際立っているモデルだ。
副編集長・鈴木幸也「タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ」
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温故知新なモダンクロノグラフ
個人的に特に推したいのが、カレラ誕生から60周年を迎えた2023年に刷新された新生「タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ」のいわゆる“パンダ”ダイアルである。見所は精悍ながらも愛嬌たっぷりの文字盤だけではない。グラスボックス型サファイアクリスタル風防から立体的に視認できる見返しリングは、実用性に加え、その造形の妙によって新たな個性を与えている。
さらに、搭載するムーブメントは、あのキャロル・カザピ監修の下、開発されたCal.TH20-00だ。両方向巻き上げ式に改められ、ローターの回転音も低減され、直径39mmのケースサイズと相まって、装着感は増した。こんなに温故知新かつ現代的なクロノグラフは他に類を見ない。
編集部員・細田雄人「タグ・ホイヤー オータヴィア フライバック クロノメーター」
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知名度は低くとも侮るなかれ
タグ・ホイヤーにとって永遠のアイコンといえば「タグ・ホイヤー カレラ」であり、次点に挙げられるのは「タグ・ホイヤー モナコ」だろう。この2コレクションが圧倒的な知名度でフロントローを独占するのはしょうがないことだが、個人的にはもう少し「オータヴィア」にもスポットライトが当たってほしいな、と思っている。
モータースポーツ一辺倒ではなく、アヴィエーションの要素も内包したデザインはタグ・ホイヤーとしては異質だが秀逸。おまけに現行のクロノグラフモデルでは、C.O.S.C.のクロノメーターを取得しているうえに、アヴィエーションウォッチらしくフライバックまで付いている。見た目良し、機能良しで、名作の陰に隠れてしまっているのが惜しいくらいの存在だ。
編集部員・鶴岡智恵子「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ」
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復刻モデルにおいてもポジショニングにおいても特別な1本
“復刻”ブームが現在のように熱くなるずっと前から、オリジナルに範を取った意匠を持つ「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ」のキャリバー11搭載モデルを挙げたい。『栄光のル・マン』でスティーブ・マックイーンが着用した「モナコ」を2009年に復刻させて以来、このスタイルを貫いてきた。
スクエアシェイプの文字盤上に並ぶスクエア型インダイアルがレトロフューチャーなこと、1970年代の復刻モデルは大径ケースが多い中、コンパクトにまとまっていることが最愛ポイント。ムーブメントは汎用機ながら、ホイヤー02搭載モデルよりも価格設定が高いというポジショニングから、ブランドにとっても特別なモデルであることがうかがえる(お財布には痛いけど)。