腕時計の中でも人気の高いジャンルであるダイバーズウォッチの中から、1000m以上の防水性を持つモデルを5本厳選して紹介する。今回、日常生活ではなかなか生かしきれないオーバースペックという魅力を持ちつつも、デイリーユース用として選びやすい仕様やデザインを持つモデルを選定した。
Text by Kento Nii
[2024年10月10日公開記事]
1000m防水以上を持つダイバーズウォッチ5選
スポーツウォッチの中でも定番とされるジャンルのひとつ、ダイバーズウォッチ。水中で活動するプロフェッショナルたちのために開発されたツールウォッチであり、軍用、あるいは1950年代後半から起こったマリンスポーツの流行などに合わせて、その防水技術も進化を遂げてきた。
そんなダイバーズウォッチの魅力には、潜水での使用を想定した、高い防水性や機能性が挙げられるだろう。日常使いにはオーバースペックと呼ぶべき性能だが、これを実現する技術や、その性能重視の設計は、ロマンという面で人々を引きつける。例えるなら、最高時速までに数秒で到達するようなマッスルカーを、普段使い用の車に選ぶようなものだ。なかなか生かしきれないとはいえ、こういった卓越した機能性は、日常生活においても着用する満足感を高めてくれるに違いない。
今回は、1000m防水以上という、オーバースペックの魅力を実感しやすい防水性にフォーカスし、それでいて日常使いにも向いたモデルをさまざまなブランドからピックアップした。ハイスペックゆえ、ダイバーズウォッチとしても大ぶりなサイズ感のモデルも多いが、その分コーディネートのアクセントなどに取り入れやすいだろう。以下に5モデルを紹介する。
ブライトリング「スーパーオーシャン オートマチック 46 スーパーダイバー」
陸・空・海、それぞれのステージに対応する、プロフェッショナル仕様のモデルを多彩に手掛けてきたブライトリング。そのダイバーズウォッチラインである「スーパーオーシャン」から、カモフラージュ柄のダイアルを特徴とする1本をピックアップした。
自動巻き(cal.ブライトリング10)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Tiケース(直径46mm、厚さ12.2mm)。1000m防水。88万5500円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707
本作は、「スーパーオーシャン スローモーション」と名付けられた過去モデルのデザインを継承しつつ、モダンな一面が与えられたモデルだ。カモフラージュ柄のダイアルでは、幅広の四角形を針やインデックス、ベゼルだけでなくダイアルリングにも記されたダイバースケールが、高い視認性をもたらしている。
また、スーパールミノバが施された針・インデックスや、特許を取得した、ケース9時位置のロックシステムで誤って動かないよう固定できる両方向回転ベゼルを備えるなど、ツールウォッチとしての完成度が高められた。
ケースは、1000m防水を備えるうえに、軟鉄性のインナーケースで耐磁性を確保しており、チタンの使用によってその重みが144gにまで抑えられている。ブレスレットはラバーストラップとチタンブレスレットから選択可能で、いずれもフォールディングクラスプによって15mmまでの微調整が可能だ。
ダイバーズウォッチとしての完成度を追求しつつ、カモ柄でファッショナブルとなった本作は、アーバンかつカジュアルなシーンで重宝する存在と言える。なお、ケース直径は46mm。ムーブメントには約42時間のパワーリザーブを備えるCal.ブライトリング10を搭載する。
セイコー「セイコー プロスペックス マリンマスター プロフェッショナル」
日本を代表する腕時計ブランド・セイコーが展開する「セイコー プロスペックス」は、スポーツやアウトドアシーンでの使用を見据えた腕時計シリーズだ。ダイバーズウォッチも豊富にラインナップされており、カジュアルな機能性のモデルから本格スポーツにも使えるモデルまで、その顔ぶれは多種多彩である。
自動巻き(Cal.8L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径52.4mm、厚さ17.4mm)。1000m防水。49万5000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012
Ref.SBDX038はセイコー プロスペックスのうち、「マリンマスター プロフェッショナル」に属する1本で、1975年初出の「プロフェッショナルダイバー600m」から範を取った、“ツナ缶”とも呼ばれるケースフォルムが特徴だ。純チタンを使用したケースを、さらにセラミックス製の外胴プロテクターで覆い、耐傷性を獲得している。また、このチタン製ケースは堅牢なワンピース構造であり、1000mの飽和潜水防水をも実現している。
ブラックダイアルは至ってシンプルなレイアウトで、蓄光塗料が塗布された針とインデックスが、ブラックとコントラストを成して際立っている。視認性に配慮したベーシックなこのダイアルは、いかにもツールウォッチらしい表情と言える。
また本作は、直径52.4mm、厚さ17.4mmというサイズ感が生み出す、そのド級の存在感も魅力となるだろう。さらに、ピンクゴールドとブラックのバイカラーを持つフェイスや、耐久性の追求によって生まれたユニークなフォルムは、コーディネートの外しアイテムとして好適な要素だ。
ムーブメントには、約50時間のパワーリザーブを有するCal.8L35を搭載する。本機には、セイコーの独自技術がふんだんに活用されている。温度変化への耐性が与えられていたり、精巧な加工技術によって精密に作られたパーツは摩擦が抑えられ、結果として長寿命化を実現したりといった、優れた実用性のための、さまざまな工夫が見られるのだ。
ロレックス「オイスター パーペチュアル シードゥエラー」
1905年にハンス・ウィルスドルフが創業した時計専門商社から歴史をスタートさせ、常に実用時計ブランドの第一線を走り続けてきたロレックス。とりわけ防水腕時計のパイオニアとして知られており、その優れた技術力は現代ダイバーズウォッチにも確実に反映されている。
そんなロレックスからは、1967年、飽和潜水用に開発された「オイスター パーペチュアル シードゥエラー」の現行モデルをピックアップした。
自動巻き(Cal.3235)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm)。1220m防水。
昼夜を問わず視認性の高いダイアルや逆回転防止ベゼル、そして堅牢なケースなど、ダイバーズウォッチのお手本と言うべきデザインを備えた本作は、本格的なダイビングに向けた数々の仕様を特徴としている。特に飽和潜水に欠かせない、1967年に特許を取得したヘリウム排出バルブはハイスペックダイバーズウォッチの象徴のような存在だろう。この機能を有することで、飽和潜水から浮上する際、自動でヘリウム原子を排出するメカニズムによって、減圧による腕時計へのダメージを最小限に抑えることができる。
またそのほかにも、セラクロム製のインサートを備える逆回転防止ベゼルや、インデックス・針に施されたクロマライトディスプレイなど、飽和潜水に適した仕様を多く備えているのだ。
防水性は、3重構造のパッキンを持つトリプロックリュウズによって、1220m(4000フィート)を誇る。リュウズにあしらわれたクラウン下の、3つのマーカーはこの構造の証しである。その一方で本作は、日常的に利便性の高いデイト表示をはじめ(もっとも、サイクロップレンズ仕様となっているが)、ツヤのあるセラクロム製ベゼルインサートや丁寧に仕上げられ、作り込まれたケース、ブレスレットなど、ビジネスシーンなどでも使える腕時計に仕上がっている。また、初代モデルから受け継がれてきたそのデザインは、クラシカルでありながら、今もなお色あせない魅力にあふれている。
ムーブメントには、開発時に14件もの特許を取得したCal.3235を内蔵する。耐磁性、耐衝撃性を備えるだけでなく、日差±2秒の高精度に、約70時間のパワーリザーブを誇る完全自社製ムーブメントだ。
ジン「U50.HYDRO」
ドイツの腕時計ブランド、ジンは、正式な社名を「ジン特殊時計会社」と言い、その名に恥じない、特殊な状況下で使えるツールウォッチを多く手掛けている。特にダイバーズウォッチについては、世界で初めてヨーロッパの潜水器具規格をパスしたという実績があり、その性能も船級・認証機関DNVによって保証されている。
クォーツ(Cal.ロンダ715 Li)。5石。Uボートスチールケース(直径41mm、厚さ11.8mm)。500気圧防水。65万6700円(税込み)。(問)ホッタ Tel.03-5148-2174
U50 HYDROは、プロフェッショナルダイバーズライン「U50」の一種。ハイドロテクノロジーを採用することで、500気圧防水という並外れた防水性を実現したモデルだ。また、ケース内にオイルを封入するその特徴的な構造によって、光の反射が抑えられ、水中でもあらゆる角度からのダイアルの視認を可能としている。
ケースは直径41mm、厚さ11.8mmと、超ド級の防水性に反して比較的コンパクトな印象だ。ドイツの潜水艦「Uボート」の外装に用いられるUボートスチールを使用しており、実践で証明された強度、海水耐性、非磁性を備えている。加えて、特殊結合技術で取り付けられた逆回転防止ベゼルや、4時位置のリュウズなど、各所にプロフェッショナルの使用に向けた設計が見られる。
また、モノトーンにレッドでアクセントを加えた、ジンらしいシンプリシティが際立つ面立ちは、シーンを選ばず着用することができる。Uボートスチールを用いるその仕様から、ミリタリーファンも引かれるダイバーズウォッチではないだろうか。
なお、本作のハイドロテクノロジーでは、ムーブメントが液体に侵されるという構造となる。そのためクォーツ式を採用するということも、特筆すべき点だ。また、温度変化に対する強い耐性を持つ、実践向けの仕様だ。
オメガ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」
1848年に創業され、ムーンウォッチの逸話やオリンピックの公式計時への採用で、その評価と知名度を確固たるものにしたオメガ。代表的なダイバーズウォッチである「シーマスター」は、ブランド創業100周年にその初号機が登場し、現在まで数多くのバリエーションが展開されてきている。
シーマスターからピックアップしたのは、6000m防水を誇る最高峰ライン「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」だ。本コレクションのプロトタイプは2019年に水深10935mに到達するという偉業を成し遂げており、Ref. 215.92.46.21.01.001はそのデザインコードを色濃く引き継いだモデルに仕上がっている。
自動巻き(Cal.8912)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径45.5mm、厚さ18.12mm)。6000m防水。209万円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
カラーリングはグレートーンを基調に、シアンでアクセントが加えられている。ダイアルには黒い硬化被膜加工を施したグレード5チタンを採用し、ホワイトからシアンへと変わるセンターセコンド針に、シアンのアラビア数字、18Kホワイトゴールド製の時分針・インデックスをあしらうことで、視認性が確保されている。
グレード5チタン製のケースは、マンタラグと呼ばれる形状が特徴的で、サンドブラスト仕上げによってマットな質感を備えている。さらに、リキッドメタル™製のベゼルを取り付けることで、全体の質感の統一感および堅牢性が高められた。
また、ケースサイズは直径45.5mm、厚さ18.12mmと大ぶりだが、ポリアミド製NATOストラップや、軽量なチタン製ケースの採用によって、見た目に反して取り回しやすいモデルに仕上がっている。軽やかに使える本格派ダイバーズウォッチとして、魅力的な選択肢になり得るだろう。
ムーブメントには、Cal.8912を搭載する。約60時間のパワーリザーブを有しており、15000ガウスという超耐磁性に代表される高性能を有する、スイス連邦計量・認定局(METAS)によるマスター クロノメーター認定をパスしている。また、これを覆うケースバックには、アイコニックなシーホースとともに、ソナーエンブレムがエングレービングで刻印されている。