2針の薄型ドレスウォッチ5選。シンプルなデザインにブランドの哲学を忍ばせた名作を紹介

FEATUREその他
2024.10.15

10mm未満の薄型ケースを採用した2針のドレスウォッチより、厳選した5本を紹介。いずれも気品あふれるシンプルなデザインを特徴としているが、限られた要素の中にブランドの哲学や意匠を取り入れることによって、確かな存在感を放っている。

野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2024年10月15日公開記事]


美学と技術の結晶。2針の薄型ドレスウォッチ5本をピックアップ!

 かしこまった装いに合わせることの多いドレスウォッチ。その定義には諸説あり、ケース素材やインデックスの形状、複雑な機能がないことなど、さまざまな角度で語られることが多いが、中でも重視されることが多いのは、シャツの袖口にスッと収まるケースの薄さではないだろうか。
 今回は、ドレスウォッチを多く手掛けるブランドの中でもさらに、ケースの厚さが10mm未満であり、かつゆったりとした時間の流れを感じることのできる2針のモデルを厳選し、紹介する。いずれも、シンプルながらブランドを象徴するアイコニックなデザインを有した名作ぞろいだ。それぞれの違いにも着目しながら、薄型ドレスウォッチの世界をのぞいてみてはいかがだろうか。


ヴァシュロン・コンスタンタン「パトリモニー・マニュアルワインディング」

ヴァシュロン・コンスタンタン「パトリモニー・マニュアルワインディング」Ref.81180/000G-9117
貴金属ケースを纏った2針の手巻き式と、ドレスウォッチのお手本のようなパッケージを持つ。シンプルなデザインゆえ、細部の作りこみが際立っている。手巻き(Cal.1400)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KWGケース(直径40mm、厚さ6.79mm)。3気圧防水。327万8000円(税込み)。

 名門ヴァシュロン・コンスタンタンのドレスウォッチコレクション「パトリモニー」。その洗練されたデザインは、1957年に登場したモデルに着想を得たものである。
 今回取り上げる「パトリモニー・マニュアルワインディング」は、コレクションの中でも最もシンプルな2針のモデル。オパーリン仕上げによる柔らかな印象のシルバーダイアルは緩やかに湾曲し、その外周部にパール状のミニッツトラックを配している。細身のくさび型のアプライドインデックスとバトン型の時分針は、耐食性に優れた18Kゴールド製。構成要素こそシンプルだが、細部の作りこみとデザインバランスには、多くのドレスウォッチを手掛けてきた同社の知見が反映されている。
 直径40mmのケースは、クラシカルなラウンド型。湾曲したダイアルに合わせ、ドーム状のサファイアクリスタルが取り付けられ、短めのラグが取り回しやすさをかなえている。厚みは6.79mmと非常に薄型であることに加え、肌なじみの良いソリッドバック仕様であることも、装着感の向上に寄与している。
 搭載するムーブメントは、ジュネーブシールを取得した手巻き式のCal.1400。裏蓋の下には、職人の手作業による卓越した仕上げが隠されている。


パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」Ref.pfc914-2020002-200182-JP
2023年に誕生した、プラチナ製の「トンダ PF マイクロローター」。シンプルなデザインにブランドの独自性が光る1本だ。シースルーバックからは、ムーブメントを鑑賞することが可能。自動巻き(Cal.PF703)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ptケース(直径40mm、厚さ7.8mm)。100m防水。1340万9000円(税込み)。

 パルミジャーニ・フルリエの「トンダ PF マイクロローター」は、2021年9月に登場したコレクションだ。さらに本作は、2023年にバリエーションに加わった、プラチナ製のケースとブレスレットを有したモデルである。
 サンドブラスト仕上げのダイアルは余白が大きく取られており、また、インデックスとスケルトンの時分針、6時位置のデイト表示、そして12時位置のロゴのみが配された極めてシンプルなスタイルが特徴だ。外周部に並んだ控えめなミニッツトラックが、優雅な印象だ。
 ベゼルには、ブランドを象徴するローレット加工が施されている一方、ラウンド型の薄いケースが、モダンながらドレスウォッチらしい佇まいを強調している。
 シースルーバックからは、搭載するCal.PF703を鑑賞することが可能だ。自動巻き機構とはなるもののムーブメントを覆わないマイクロローターであるため、ブリッジに施されたコート・ド・ジュネーブや鼓動するテンプが、オーナーの目を楽しませてくれる。


カルティエ「サントス デュモン」

カルティエ サントス デュモン

カルティエ「サントス デュモン」Ref.WSSA0022
最初から手首に巻くことを前提として開発された、最初期の男性用腕時計である「サントス」。そのデザインを忠実に受け継ぐ「サントス デュモン」は、幅広いシーンで活躍するドレスウォッチだ。クォーツ。SSケース(縦43.5×横31.4mm、厚さ7.3mm)。日常生活防水。66万円(税込み)。

 1904年に誕生した、最初期の男性用腕時計であるカルティエ「サントス」。もともとはブラジル出身の飛行家であるアルベルト・サントス-デュモンに向けて開発された腕時計であったが、その後に市販化を経てさまざまなバリエーションを生み出していく。中でもオリジナルの特徴を最も色濃く受け継いだ現行コレクションが、「サントス デュモン」だ。

 サンレイ仕上げのシルバーダイアルにはローマ数字インデックスが並び、ブルースティール製のバトン型時分針を組み合わせている。ダイアル外周には、レイルウェイミニッツサークルが配され、分単位の正確な時刻を読み取ることが可能だ。
ラグとミドルケースが一体となった外装には、ビスを取り付けたアイコニックなベゼルが与えられている。パール状の装飾が施されたリュウズは、トップにシンセティック ブルースピネルがセットされ、カルティエらしい華やかさを添えている。
 本作はクォーツムーブメントを搭載しているため、機械式ムーブメントのように主ゼンマイの巻上げを行わずとも、長期間にわたって稼働し続けてくれる点も魅力だ。


クレドール「ゴールドフェザー」

ゴールドフェザー U.T.D. GBBY980

クレドール「ゴールドフェザー」Ref.GBBY980
1960年代の薄型腕時計、「ゴールドフェザー」の名を冠したモデル。ミニマルなデザインにセイコーが誇る薄型ムーブメント、68系を組み合わせている。手巻き(Cal.6890)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約37時間。18KRGケース(直径37.1mm、厚さ7.7mm)。日常生活用防水。352万円(税込み)。

 1960年に誕生し、センターセコンド式の腕時計として当時の世界最薄を勝ち取った、セイコー「ゴールドフェザー」の名を継ぐモデル。羽根のように「薄く」、「軽やかで」、「空気をはらみ」、「艶やかで」、「優美」であるという5つのデザインコンセプトに従って設計開発された。
 放射状の仕上げが施されたシルバーダイアルは外周に向かって湾曲し、6時位置にはオリジナルをベースに現代的なアレンジを加えたロゴが配されている。
 薄型のケースを採用しているが、ただ薄いだけではなく見た目や装着感にも配慮されている点が特徴だ。ムーブメントをケースに直接固定する構造を採用することでケースバックの小径化とケース裏側の斜面の拡大を図り、装着時により薄く見えるようにしていることに加え、腕に触れる部分に曲面を多用することで、優しい装着感を実現している。
 搭載するムーブメントは、手巻き式のCal.6890。68系は、1969年に誕生した厚さ1.98mmの極薄ムーブメントだ。製造から組み立てまで高度な技術を要求されるため、熟練職人の手であっても1日に組み立てられるのはひとつからふたつ程度と言われている。


ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・モノフェイス」

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・モノフェイス」Ref.Q7168420
初代「レベルソ」のデザインを踏襲する「レベルソ・トリビュート」。本作は、そのオリジナルに近いサイズ感を持つ新しいバリエーションだ。モノフェイスのため、薄型であることも特徴。手巻き(Cal.822)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦40.1×横24.4mm、厚さ7.56mm)。3気圧防水。139万9200円(税込み)。

 2024年新作として登場した、「レベルソ・トリビュート・モノフェイス」のバリエーションモデル。既存のラインナップに比べて小型のケース採用することで、1931年に誕生したオリジナルの「レベルソ」により近いプロポーションを獲得している。
 オパーリン仕上げのダイアルは、落ち着きのあるシルバーグレーカラー。オリジナルのレベルソの特徴である、立体的なインデックスとドーフィン型の時分針を備えている。
ケースはステンレススティール製。もちろん、ケースを反転させることも可能だ。本作はモノフェイスであるため、反転した面にエングレービングやラッカー仕上げを施すことで、パーソナライズすることもできる。
 ライトブラウンのカーフレザーストラップは、アルゼンチンのブーツブランド、カーサ・ファリアーノが手掛けたもの。インターチェンジャブルシステムが採用されており、工具を使うことなくケースから取り外すことが可能だ。
 搭載するムーブメントは、手巻き式のCal.822。角形のケースに合わせた形状を持ち、ストライプ装飾や面取りなど、細部まで抜かりなく仕上げが施されている。


ドレスウォッチを買うなら、見るべきはケースの“薄さ”。ショパールやジャガー・ルクルトなど、薄型モデルを紹介!

FEATURES

初めてドレスウォッチを選ぶなら。おすすめの10ブランドと取り扱いについて解説

FEATURES

2024年新作はドレスウォッチが大豊作! 傑作モデル5本を紹介

FEATURES