元SMAPメンバーで俳優の稲垣吾郎は、カメラや時計などのメカに強い関心を持つ趣味人だ。特に、20代の頃から憧れていたA.ランゲ&ゾーネの「1815」を手に入れた彼の時計への想いは深い。多彩な趣味と個性的な役柄で注目を集める稲垣の魅力は、SMAP解散後もまったく衰えていない。本記事では、彼の愛用時計と共に、その多面的な魅力に迫る。
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2024年10月13日掲載記事]
ヴィンテージカメラを150台所有! 生粋のメカ好きである稲垣吾郎
稲垣吾郎の公式インスタグラムには、自身が撮影したと思われるアーティスティックな画像が並んでいる。プロフィール画像も、稲垣本人がカメラを構えている構図のポートレートだ。ここ最近は花の美しさを描写する投稿が多いが、珍しく“モノ”に焦点を当てた一枚がある。それが、A.ランゲ&ゾーネの「1815」だ。
ヴィンテージカメラを150台所有し、フィルムカメラ現像用の暗室まで自宅に備えるほどのカメラ好きを公言している稲垣吾郎。時計選びにも強いこだわりがあるようだ。「20代の頃から憧れていた」という趣旨のコメントからも、時計に対する興味の長さがうかがえる。
2024年12月で51歳となる稲垣吾郎の20代と言えば、多忙を極めるアイドル活動を展開していた時期。世間でも現在ほどは高級機械式時計が認知されていなかったはずである。その頃からA.ランゲ&ゾーネに憧れ、ショーウィンドーをのぞいていたというのは、よほど興味があったのだろう。
メカ好きになったきっかけをたどると、幼い頃のクリント・イーストウッドへの憧れが始まりだったようだ。父の背広を着てモデルガンをポケットに入れ、ダーティハリーごっこをしているうちにモデルガンに詳しくなったという。銃、カメラ、腕時計と、その趣味の範囲を見ると、メカに関心があることは明らかだ。
男性的な趣味が多いのかと思えば、無類の花好きとしても知られており、生活に花を欠かすことができないそうだ。過去にソムリエの役を演じたことがきっかけでワインも好きになり、自宅には200本のコレクションがあるとも報じられている。ここまで聞くとインドア派に思えるが、ゴルフも大好きでひとりでコースを回るほど。好きになったものは徹底的に研究して楽しむ凝り性な性格なのかもしれない。
A.ランゲ&ゾーネのシンプルイズム極まる「1815」
手巻き。(Cal.L941.1)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径35.9mm、厚さ7.5mm)。3気圧防水。現在は販売終了。
「1815」の名称は、フェルディナント・アドルフ・ランゲの誕生年に由来を持つ。手工芸技術を駆使した仕上げとF.A.ランゲが考案した多数の技術的要素をリスペクトしたモデルだ。そして高い視認性と極まる個性を兼ね備えた美しいデザインが人気となっている。稲垣吾郎が所有するホワイトゴールドケース、黒文字盤の組み合わせはすでに生産終了となっており、レア度も高い一本と言えそうだ。ケースサイズは35.9mm。厚みも7.5mmと、現行モデルよりも小さく、クラシカルな雰囲気を放っている。
1815において特徴的なのは、アラビア数字インデックス外周のレイルウェイ状の分目盛りだ。これは鉄道の開通によって懐中時計の重要性が増した時代を連想させるデザインであり、F.A ランゲが工房を創業した時期にも重なっている。
このモデルに搭載された手巻きムーブメントはCal.L941.1である。素材の特性をそのまま生かした洋銀製の4分の3プレート、ブルースクリュー、ビス留め式シャトン、ハンドエングレービング入りテンプ受けをはじめとする伝統的な要素が継承されている。
特に4分の3プレートは、A.ランゲ&ゾーネのムーブメントの歴史において重要な存在である。1864年にF.A.ランゲが採用して以来、現在もA.ランゲ&ゾーネの時計の特徴となっている。このプレートは輪列の軸受けの役割を果たし、いくつもの軸を同時に押さえなくてはならないため、その組み立てには高い技術力と集中力が欠かせない。しかし独立タイプの受けに比べて、この構造ではムーブメントの安定性が大幅に向上するメリットがある。また、4分の3プレートによって歯車の軸間距離誤差が減少するほか、特に昔の懐中時計では、外部から侵入するチリなどから中身を守る効果もあった。
SMAP解散後の稲垣吾郎と円熟味を増す個性
稲垣吾郎の独特な雰囲気は、その演じる役柄にも活かされ、とりわけ個性的な役回りが多い印象を与える。今ではアイドルという枠を突き破った自然体のキャラクターが、世間に広く評価されているようだ。吾郎ちゃん、吾郎さんと呼ばれ、ファンからも親しまれている一方で、芸能界で活躍を重ねてきた歴史と経験も手伝い、上質なアイテムを愛する趣味人としての一面も見せる。
今年は、自身が出演する映画「風よ あらしよ 劇場版」が全国公開となったほか、2024年12月21日からは主演舞台「No.9-不滅の旋律-」の4度目の上演が予定されている。アイドル像から脱した稲垣吾郎が見せる魅力は、ますます加速している。彼の今後の活動に、時計から得たインスピレーションがどのようにプラスに働くのか、期待は高まるばかりだ。
Contact info:A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845