ラグジュアリースポーツウォッチらしさとは? 時計業界のクリエイターたちに聞いてみた

2024.12.03

1970年代に誕生したラグジュアリースポーツウォッチは、今や時計のジャンルのひとつとして定着している。では、このラグジュアリースポーツウォッチとは一体どのような時計なのか? “ラグスポ”を作った時計業界のキーパーソンに話を聞いた。

[クロノス日本版 2021年11月号掲載記事]


クリエイターたちが考える「ラグジュアリースポーツウォッチ」らしさ

 多くの場合、世に出た時計を「ラグジュアリースポーツウォッチ」に分類するのは時計愛好家だ。では各メーカーにとって、市場が下したこれらの評価は意図したものなのか、それとも想定外の反応だったのか。ここではデザイナーを中心にプロダクトマネージャーやブランドCEOなど、「ラグジュアリースポーツウォッチ」に分類されたモデルを作ったキーパーソンに、6つの質問を投げかけた。


エマニュエル・ギュエ × オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア」

エマニュエル・ギュエ

エマニュエル・ギュエ[デザイナー/EGスタジオ代表]
1986 年にオーデマ ピゲに入社。22歳にして「ロイヤル オーク」をリファインした「ロイヤル オーク オフショア」のデザインを任される。その他の代表作に、ロレックス「チェリーニ」コレクション、2019年復活後のアイクポッドなど。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:高級時計、非高級時計という区分けは存在しません。時計にあるのはスポーツウォッチ、クラシックウォッチ、複雑時計といったジャンルだけです。真のスポーツウォッチは、ゴルフやテニスなどをするためだけに身に着けるもので、ゴムやチタン製のものですが、どういうわけか、スポーツウォッチという呼称は、昼夜を問わず、どんなシーンでも着用できるモデルのことを指します。

 あなたが朝、服を着るとき、今日がどんな日になるか、あなたは正確には分からないでしょう。たぶん仕事終わりに直接オペラに行き、ジムに行く。そんな中で家に戻って服を着替える時間はないかもしれません。しかし、スポーツウォッチはどんな場面でも完璧でなければなりません……。私は1993年にそんな時計を確立しようとしました。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:ロイヤル オークやノーチラスといったモデルは、1970年代に成功を収めていました。それらは高級スポーツウォッチのルーツであり、今でも時計業界の柱となっています。私はロイヤル オーク オフショアで、新世代のクライアントにアプローチしたいと考えました。

ロイヤル オーク オフショア




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

A3:私はとても若く、オーデマ ピゲに入社する2年前に、キャリアをスタートしたばかりでした。私はこの挑戦の影響を本当に理解していませんでした。正直なところ、誰も(当時のオーデマピゲのCEOですら!)その影響を理解していませんでした。CEO(ステファン・ウルクハート)と昼食をとりながら、最も若い世代に向けた新しいロイヤルオークについて考えていました。

 これはCEOのアイデアだったのですが、当時、女性も男性用の時計を身に着けるようになったので、男性だけが着けるような、よりマニッシュな時計をデザインするのも面白いと思い、オリジナルモデル(ロイヤル オーク)を拡大し、見えているゴムを前面に出し、細部を大きく見せたのです。その頃、ロイヤル オークはアイコンと言われるほどのものではありませんでした。そして悲しいことに、売り上げは良いとは言えず、誰もこの時計を欲しがっていませんでした。オフショアはおそらくロイヤル オークをアイコンにし、このコレクションを救いました……。そして明らかにブランドをより高い段階へと導いた。設計中はまったく想像もしていませんでした(3時間で設計しました!! )。

ロイヤル オーク オフショア




Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A4:より強く、頑丈で、他とは違うものにしようとしました。




Q5:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A5:品質、生産数、永続的な質と独占権。時計の設計においてディテールが少ないことは、間違いなく勝敗の分かれ目となります。


ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ × ブルガリ「オクト ローマ」

ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ

ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ[ブルガリ ウォッチ デザイン センター プロダクト クリエイション シニア ディレクター]
1971年、イタリア・ナポリに生まれる。2001年にブルガリへ入社し、07年よりブルガリ ウォッチ デザイン センターのディレクターを務める。現在、ブルガリのすべてのウォッチデザインを統括している。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:ラグジュアリースポーツウォッチは、仕事中のミーティングやレジャー、アウトドアなど、一日中身に着けていられる万能アイテムです。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:ブルガリをご愛好いただいているユーザーを念頭に置いてデザインしました。会議でもレジャーでも毎日身に着けられる、多機能な時計を購入したいというようなニーズがあります。

ブルガリ「オクト ローマ」




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A3, A4:フォーマルにもレジャーにも活躍する時計をデザインすること。特にこの種の時計には、防水性能やレザーストラップよりも汎用性が高いメタルブレスレット、日常生活のほとんどの場面にマッチする文字盤が必要です。




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:テクニックというより、デザインで表現することを意識しました。オクト ローマのブルーダイアルが示すように、イタリアのエレガンスとスポーティーでクールな印象を完璧に表現しています。1日中、どのような場面でも着用することができます。

ブルガリ「オクト ローマ」




Q6:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A6:時計が「ラグジュアリー」と定義されるためには、高度なクラフツマンシップを備えていることが基本となります。スポーツウォッチであるためには、レジャーやアウトドアで1日中身に着けていられるような機能を備えていなければなりません。


大場晴也&井塚崇吏 × シチズン「ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200」

大場晴也

大場晴也[シチズン時計 デザイン部チーフデザインマネージャー]
1962年生まれ。1981年入社。入社間もない84年には「クラブ・ラ・メール」でデザインに携わる。代表作に「ザ・シチズン」「エコ・ドライブ ワン」「カンパノラ」など。落語鑑賞や古い国産時計の収集、修復などを趣味に持つ。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:ひとつには、富裕層が好むスポーツシーンに似合う時計。ひとつには、機能性テイストでデザインされた、高品質な時計。(大場)

「スポーツシーンでの汗ではなく、ビジネスシーンでの汗」を感じさせるデザインであること。男心をくすぐる機能性を備えつつ、派手な装飾で存在を誇示するのではなく、余裕を感じさせる佇まいを備えていること。(井塚)

井塚崇吏

井塚崇吏[シチズン時計 デザイン部チーフデザインマネージャー]
1968年、新潟県生まれ。国産メーカー勤務を経て、2000年入社。シチズン アテッサを主に担当し、国内メンズモデルなど数々のモデルを生み出す。趣味は国内外ビンテージ時計収集、飲食店巡り、電車に乗って街を散策すること。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:特段にラグジュアリースポーツウォッチを意識してデザインをしたわけではありません。私がなによりも意識したのは、「ムーブメントの設計思想に沿う」ことです。搭載するCal.0200というムーブメントは、高精度と美しさを追求しています。歯車の連なりや美しいテンプの動く様を眺めることのできる時計のデザインとして、外装とムーブメントの方向性が合致し、ピントの合ったデザインにすることを心掛けました。そのあたりは、ムーブメントの設計開発者とも綿密に意見を交わしています。(大場)

 大場と同じく、いわゆる“ラグスポ”を狙うというより、シチズンの新たな意志を示すメカニカルモデルにふさわしい、力強さとシャープさを併せ持つ先進性がデザインのテーマでした。各部品の平面の精度の高さを強調したデザインにして、シャープさを意識したことや、ラグなしのヘッド形状とブレスレットのラインのつながりを「ザ・シチズン」としてどう仕上げるのがふさわしいか、という課題と向き合った結果として上質さ(ラグジュアリーさ)やスポーティーさを感じさせるデザインにつながったのではないでしょうか。(井塚)




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A3, A4(まとめて回答):具体的にはやはり、ラグレスケースに高品質無垢ブレスレットを組み合わせ、一体感を持たせたことがスポーティーさとラグジュアリーさを感じる大きな部分になるかと思います。ラグなしのヘッドとブレスレットが独立して成り立つこの形状ですが、そもそもラグレスのケースには、薄手のブレスレットが機能的には合います。しかし、このモデルでは高品質な仕上がりを求めるべくブレスレットとしての高級感と、無垢材を削り出したシャープなケース形状の緊張感をブレスレットへつなぐよう一体感を与えること、そしてフラットな形状、ヘアライン、ミラー面の入れ方などに注力しました。(大場)




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:クラシックな雰囲気が合うスモールセコンドに、先進性を感じさせるデザインを調和させるため、高い精度を想起させるメーターの感覚を入れていきました。スモールセコンドの大きさや位置にもこだわり、精度を象徴する針を細く長くシャープにしたことで、精度感を表現できたと思います。(大場)

(大場のコメントに加え)ケース・ブレスレットに装着感を求め、「一体型」ではなく「一体感」あるデザインを実現した手法としては、ブレスレットの取り付け位置を工夫し、手首にケースがよりフィットするように計算しました。精密な切削で稜線を入れたケースも、シャープさや力強さを出しつつ、ケースサイド下部に斜面を入れて、すっきりとした上質さを演出しました。また、シャープな外装と組み合わせた文字盤ですが、繊細な凹凸柄の黒文字盤は電気鋳造で実現しました。時計の陰影がより鮮明に見える効果、ピントが合ったスッキリ感をユーザーの方々に体験していただきたかったためです。逆に、青文字盤は平面を研ぎ出すことにより凹凸感のない美しさ、緊張感を表現しています。「美しい青」を表現するため、あえて電鋳手法による凹凸柄は採用せず、光沢感のある透明感を強調してコントラストを意識しました。これら文字盤の上質な仕上げもスポーティーさとラグジュアリーさを兼備した印象をもたらすのではないでしょうか。(井塚)

シチズン「ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200」




Q6:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A6:「アスリート」がスポーツウォッチ。「スポーツウェアを着たリッチ」が“ラグスポ”。(大場)

 一言で言うなら「実用性」と「装飾性」の表現アプローチの違い、だと思います。スポーツウォッチ:各スポーツシーンにいかにして溶け込めるか。軽さ、視認性、色調、素材を追求してゆくもの。ラグジュアリースポーツウォッチ:スポーツウォッチと変わらぬ十分なスペックを保ちつつ、腕時計という装飾品としてのディテールを追求したもの。装着性、可動部のしなやかさ、各部材の素材と精度に対する管理の高さを感じさせるもの。(井塚)


アントニー・デ・ハス × A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」

アントニー・デ・ハス

アントニー・デ・ハス[A.ランゲ&ゾーネ商品開発ディレクター]
1967年、オランダ生まれ。スイスの時計学校を卒業後、IWCやルノー・エ・パピ等を経て、2004年にA.ランゲ&ゾーネに入社。05年以降は、新作のコンセプトから製品設計まで、すべての製品の開発を統括するポジションを担う。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:私たちはオデュッセウスを「ラグジュアリースポーツウォッチ」ではなく、「スポーティーエレガントウォッチ」という位置付けで捉えています。オデュッセウスはゴールドやプラチナで作られたこれまでのランゲウォッチに取って代わるものではなく、私たちの製品バリエーションに足りなかったものを補うために誕生しました。この点で、この分類は妥当なものです。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:この問いに答えるためには、これまでの経緯を振り返る必要があります。「よりスポーティーなスティール製の腕時計」というアイデアは、実は随分前から存在していました。ウォルター・ランゲと共同でブランドを再興させたギュンター・ブリュームラインは、1990年代後半にはすでに、ある時点でステンレススティール製の腕時計を作ることを考えていました。

 全体的なコンセプトについて最初に考えたのは約12年前のことです。最終的なアイデアに辿り着くまでに、私たちはたくさんのアイデアについてディスカッションし、実現されなかった案も数多くありました。コンセプトが決まると、製品開発者、ムーブメント設計者、プロダクトデザイナー、技術者、プロトタイプビルダー、ラボの技術者から成る研究開発チームでの作業に4年を費やしました。私たちは時計を開発する際、商品のジャンルではなく、機能面やデザインの特徴を重視しています。




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

A3:A.ランゲ&ゾーネの他の新作と同様に、オデュッセウスにもランゲの典型的なデザインが与えられ、さらにアクティブなライフスタイルに合わせて開発されたまったく新しい自社製ムーブメントが備わりました。もちろん、ランゲの通常の品質基準に準拠し、仕上げや装飾の面でも妥協することなく、目にした人がすぐにランゲの時計と分かるよう最大限注力しています。特に3つのパーツからなるブルーの文字盤と、時計の着装感は重要な役割を果たしました。加えて、サステナビリティーと一貫性は私たちにとって重要な基準ですので、すべての部品は30年後も50年後も製造できるようになっています。




Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A4:この時計のためだけに開発された自動巻きムーブメントと、アウトサイズデイトと左右対称に配した曜日表示の大きなディスプレイでこれを表現しています。“スポーティー感”は直径40.5mm、厚さ11.1mmのケースにも強く反映されています。表面にはサテン仕上げと丁寧な面取りを施すことでエッジを強調しています。つや消しした表面と角の面取りの組み合わせは、ラグとステンレススティールブレスレットのコマにも見られます。ねじ込み式リュウズは私たちにとって新しい機能です。日付と曜日を修正するための特別な防水仕様のボタンも考慮事項の一部でした。さらに12気圧の防水性と約50時間のパワーリザーブが、オデュッセウスのスポーティーなコンセプトを強調しています。

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:開発はひとつの重要な質問から始まりました。エレガントでありながら頑丈で、スポーティーであると同時に手作業で仕上げたことがきちんと分かるランゲが作るスポーティーウォッチとは? 通常、開発を進める際、私たちはマーケットの提案や、顧客の要望に真摯に耳を傾けます。新しい時計を作るときはいつも、私たちの独自基準の高い品質、技術的ノウハウ、独自性、クラフツマンシップにコミットした上で、どのような方法をとることができるのか、できないのかを慎重に考えます。




Q6:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A6:一貫して自社で製造していること、手作業で入念に仕上げを施し組み立てを行っていること、細部にかけるすべてが私たちにとって違いを生むための重要な要素です。


ラファエル・ヌスバウマー × ウブロ「ビッグ・バン インテグラル」

「アート・オブ・フュージョン(異なる素材やアイデアの融合)」を表したジャン-クロード・ビバーによるイラスト、ビックバン インテグラルのブレスレット

ラファエル・ヌスバウマー[ウブロ チーフ プロダクト&パーチェシング オフィサー]
ブランドコンセプトである「アート・オブ・フュージョン(異なる素材やアイデアの融合)」を表したジャン-クロード・ビバーによるイラスト(左)と、ビックバン インテグラルのブレスレット(右)。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:ウブロの時計が、その定義をよく表していると思います。つまり美しく、伝統技術を踏襲しながらも、最新の研究による素材や技術が使用されたラグジュアリーウォッチです。最初であること、ユニークであること、他とは違うこと、というウブロのコンセプトもそのベースです。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:いいえ。




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A3, A4(まとめて回答):いずれもデザインで表現したということではなく、このような時計を作りたいというアイデアが先にあり、結果的にラグジュアリーであり、スポーティーでもある、両方の要素を兼ね備えた時計になったと思います。まず、「ビッグ・バン」の誕生から15周年を記念する新作であること。そして、初の、待望の統合型ブレスレットモデルであり、そのブレスレットはどこにもないウブロらしいものであること(※バネ棒などが見えず、ケースと完全に融合している)。同じく、アイコニックな自社製造・開発のムーブメント「ウニコ」の新型(※2018年発表)を採用すること。ウブロの新定番として支持されるデザインであり、着用感にも優れていること。結果的に、デザインのディテールとしては2005年に最初の「ビッグ・バン」が登場した時のディテールを採用しました。それはそのシリーズへのオマージュでもあります。




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:その目的のためではありませんが、両方の要素を兼ね備えたまったく新しい新作には、次のような特徴があります。

・インデックスはバーインデックスを採用(※他の「ビッグ・バン ウニコ」はアラビア数字インデックス)。

・ケースは「ビッグ・バン」の特徴でもあるサンドウィッチ構造ですが、このモデルは他と違い、側面にコンポジットレジンではなくミドルケースと同じ素材を採用しています。それによりサイドから見ても統一感のある美しさとなっています。

・クロノグラフのプッシャーは2005年発表当時の角型デザインを採用しました(※他は現在、丸型)。

・ブレスレットはこれまでのビッグ・バンにはなく、新たに設計しました。

・ブレスレットのコマはひとつのコマが3つのパーツに分かれていて、視覚的にも、構造的にも時計から美しくつながるデザインです。ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを交互に施し、傾斜と面取りがリンクすることで、ケースとベゼル・ラグ間の深さと同じコントラスト効果があります。


リオネル・ア・マルカ × ブレゲ「マリーン 5517」

リオネル・ア・マルカ

リオネル・ア・マルカ[ブレゲCEO]
1967年にスイスで生まれる。92年にフレデリック・ピゲに入社。その後ETAでコンプリケーションの開発や改良に携わった後、複数のスウォッチ グループ内企業でコンサルタントとして活躍。19年の同グループ取締役就任を経て、21年より現職。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:快適な着用感に加えて頑強で、どんな環境でも表示がはっきりと読み取ることができるもの。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:創業者であるアブラアン-ルイ・ブレゲはフランス王国海軍の御用達時計師と経度委員会の役員に任命された、唯一無二の時計師でした。そういった歴史より、私たちは海上での時間や位置を測るための計器にブレゲが施したデザインコードからインスピレーションをまず得ました。なので、基準となるものは明確でした。

 いくつか例を挙げると、台形の蓄光アワーマーカーやローマ数字のインデックス、海洋信号旗をモチーフにした秒針、蓄光のブレゲ針、航路標識からインスピレーションを得たセンターのラグのネジもそうです。そのようなことから、私たちは「マリーン」コレクションをラグジュアリースポーツウォッチとしてだけでなく、海洋と時計製造の歴史遺産両面に敬意を払いデザインしました。




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

A3:ブレゲではディテールに重点を置きラグジュアリーを表現しています。どの要素も細心の注意を払い、ブレゲの持つ専門知識と技術の下に成り立っています。また、それは表に見える部分だけではありません。可能な限り完璧なクォリティを保証するためにも、ダイアル裏に隠れている部分もすべて同じ方法をとっています。またゴールドやチタン、シリコンといった使用する素材もラグジュアリーを表現するもののひとつです。

ブレゲ「マリーン 5517」




Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A4:先に述べたように、ラグジュアリースポーツウォッチは頑強であるということが大事な要素のひとつです。そのために私たちはセンターのラグやねじ込み式リュウズ、3つ折りバックルなどのデザインを取り入れています。もうひとつ、視認性といった点で針やインデックスに蓄光塗料を使用しました。そして軽量で塩分や腐食に強いチタン素材やラバーも取り入れています。




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:ラグジュアリーな側面は、海洋の歴史とブレゲの受け継ぐDNAそのものです。「マリーン」コレクションはブレゲの歴史遺産を忠実に、コレクションとしてふさわしいラグジュアリースポーツウォッチを創り出しました。「マリーン」コレクションも美しい外装とキャリバーなど内面に至るまですべて手作業で組み立て・装飾を施しています。それは「クラシック」コレクションから「マリーン」コレクションまで変わりません。


シルヴァン・ベルネロン × ブライトリング「クロノマット B01 42」

シルヴァン・ベルネロン

シルヴァン・ベルネロン[ブライトリング クリエイティブディレクター]
1988年、パリ郊外生まれ。パリで乗り物デザインの教育を受けた後、ミュンヘンの自動車メーカーでキャリアをスタート。その後フリーランスのデザイナーを経てリシュモン グループへ移籍、ジョージ・カーンと出会う。3年前よりブライトリングへ参画。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:ブライトリングのモットーは「行動、目的、スタイル」です。我々にとって、現代のラグジュアリースポーツウォッチは、スタイルと機能の両方の点において万能かつ非常に高性能でなければなりません。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:もちろんです。新しいクロノマットは、我々が提唱する「タキシードからビーチまで」というスタイルの点で万能であり、パフォーマンスの面でも強力な仕様で支えられていることを望んでいました。




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

A3:このタイムピースのラグジュアリーなアプローチは、以下の特徴を経ています。カッティングのある立体的なアプライドインデックスや針、文字盤の対称性を維持するために6時位置に日付カウンターが配され、18 個の異なる部品で作られたベゼルなど、時計を豊かにする微細なディテールを備えています。ブライトリングの非常に有名なマニュファクチュールムーブメントCal.01をケースバックから見ることができます。ケースとブレスレットへの光の反射の仕方もまたとても重要で、コントラストとエレガンスを持たせるためにポリッシュとサテンの面のバランスを考えました。




Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A4:クロノマットは、どこを切り取っても真のスポーツウォッチです。200m防水、ねじ込み式リュウズとケースバック、入れ替え式のライダータブでカウントアップ/カウントダウンを可能にし、約70時間のパワーリザーブ、逆回転防止ベゼル、そしてもちろんC.O.S.C.認証を取得しています。デザイン面では、昼夜を問わない視認性の良さに注目しました。

 また、見た目も手触りも頑丈である必要があります。そのため、ベゼルには歴史的な意匠であるライダータブ、12本の機能的なネジ、クラウンガードを追加し、著名なルーローブレスレットを採用しました。次に、ケースとブレスレットの表面のほとんどを磨きにかけ、モダンでスポーティーな感触を与えました。

ブライトリング「クロノマット B01 42」




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:クロノマットを最終的に完成させるために約2年間費やしました。完璧な人間工学は我々の最優先事項のひとつでした。ルーローブレスレットは非常に快適で、時計に触れても違和感がなくとても滑らかです。すべての表面がスムーズな流れになるように慎重に検討されています。これは長い研究の成果で、これこそがラグジュアリーとテクニカルのアプローチを再統合したものです。高度にテクニカルでありながらエレガントで快適なアイテムとなり、毎日着用することができます。




Q6:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A6:スポーツウォッチは何よりもまず道具であり、計器です。ブライトリングはこの分野でも優れており、3000mの耐水性能を備えた「アベンジャーシーウルフ」や、遭難信号発信機を搭載した世界初の腕時計「エマージェンシー」などの時計を開発しています。しかし、これらの部品は極端な条件のために作られたため、ケースは大きくて厚く、また手袋で操作するように設計されているため、日常的に着用するのに適していません。

 一方で、ラグジュアリースポーツウォッチは、洗練性とスタイルを持ち合わせるため、あらゆる状況で着用できます。この意味で、我々の新しい「クロノマット B01 42」は、ブライトリングのモダンラグジュアリースポーツのタイムピースであると我々が信じていることの表れです。


ブルーノ・ベラミッシュ × ベル&ロス「BR 05」

ブルーノ・ベラミッシュ

ブルーノ・ベラミッシュ[ベル&ロス共同創設者兼クリエイティブ・ディレクター]
1965年、パリ生まれ。パリの国立デザイン工業大学を経て、フリーランスのデザイナーとして活動。92年にカルロス・ロシロと共に、ベル&ロスを創立。2013年に民間人の卓越した功績を表彰する「レジオン・ドヌール勲章」を受章。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:この定義にはふたつの異なる意味が含まれます。

ラグジュアリー:これはデザインのアプローチにおいて限界がないことを意味します。特別な使用を想定してデザインされます。仕様書はありますが、仕上げと品質においては限界がありません。私たちは卓越性と機能を追求します。限界を押し広げるのです。

スポーツ:使うとき、頑強で視認性が良く、信頼できなくてはいけません。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:はい、「BR 05」は「BR 03」で得た知見や経験から生まれました。「BR 03」は100%機能主義的です。「BR 05」は「BR 03」に貴重な寸法を加えたものです。強靭な宝石としてつくりました。「BR 03」を着ける人は純粋に過酷な環境にいますが、「BR 05」を着ける人はアクティブに活動する人です。




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

A3:ディテールと仕上げです。卓越性と機能性を素材の品質や防水性能などで追求しました。これは宝石なのです。




Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A4:アクティブな面と強靭なところ、防水性能も併せ持ったデザインで動いている中にあるものです。

ベル&ロス「BR 05」




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:機能性にアプローチしました。機能は形をつくる、です。技術的な制約の中でケーシングに取り組みました。




Q6:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A6:スポーツウォッチは仕上げにおいて100%スポーツシーンでの使用を意識しています。ラグジュアリーウォッチは、美的な寸法、貴重さ、宝石のような一面でその時計自体を語ることです。ラグジュアリースポーツウォッチは、これらの間の正しいバランスから生まれるものです。


エドゥアルド・メイラン × H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」

エドゥアルド・メイラン

エドゥアルド・メイラン[H.モーザーCEO]
1976年スイスのジュウ渓谷生まれ。スイス連邦工科大学で機械工学を学んだ後、ウォートンスクールでMBAを取得。経営コンサルティングを経て、2013年にH.モーザーへ入社。CEO就任後は、ブランドアイデンティティーの確立に貢献した。

Q1:ラグジュアリースポーツウォッチ」の定義をどう捉えていますか?

A1:ラグジュアリースポーツウォッチの定義はさまざまです。私たちH.モーザーにとってのスポーツウォッチとは、一日中身に着けていられる時計で、頑丈で防水性のあるケースと、人間工学に基づいた一体型ブレスレットを備えたものです。例えば、ストリームライナーのようなモデルです。




Q2:ラグジュアリースポーツウォッチというジャンルを意識してこの時計をデザインしましたか?

A2:ストリームライナーコレクションでは、流動性と曲線の概念が不可欠です。このラインの名前は、1920~30年代にかけての高速鉄道を意味しています。このスピード感とデザインのダイナミズムは、スポーツウォッチというジャンルを明確に示しています。




Q3:この時計をデザインした際、どのような手法でラグジュアリー感を表現しましたか?

A3:高級時計はディテールのセンスが重要です。ストリームライナーコレクションは、調和のとれたプロポーション、美しいエアロダイナミクス、ブラッシュ仕上げとポリッシュ仕上げを組み合わせた素晴らしい仕上げなど、まるで彫刻のようにデザインされています。




Q4:この時計をデザインした際、どのような手法でスポーティー感を表現しましたか?

A4:まず快適でエレガント、そして他とは違うブレスレットから始めました。そして、クロノグラフ、センターセコンド、永久カレンダーなどの機能を中心にモデルをデザインし、機能を際立たせたり昇華させたりしました。

H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」




Q5:ラグジュアリーとスポーティーという異なるキャラクターを共存させるために採ったデザイン的な手法はありますか?

A5:それは、時間をかけて繰り返し行われる自然なプロセスです。自分が正しいと思う機能のバランスを見つけるまで、さまざまな組み合わせを試します。




Q6:あなたにとってスポーツウォッチとラグジュアリースポーツウォッチの違いとはなんですか?

A6:私は、その違いはディテール、マニュファクチュールムーブメント、デザインにあると考えています。


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