人気俳優・賀来賢人がSNS上で購入した旨を投稿したヴィンテージウォッチは、第2次世界大戦中にアメリカ海軍のために製造されたUSN BUSHIPSのミリタリーウォッチだ。過酷な環境下でも信頼性の高い時間計測ができる特別な腕時計である。時計愛好家としても知られる賀来の、ヴィンテージウォッチへの情熱と、その歴史的価値のある1本に迫る。
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2024年10月20日掲載記事]
好きな言葉は「人生一度きり」。人生を楽しむ賀来賢人
女優・賀来千香子を伯母に持つ賀来賢人は、高校時代、バスケットボールに打ち込む生活だった。芸能活動を始めたきっかけは、芸能事務所からのスカウトを受けたことを家族に話したところ、偶然賀来家の家族写真を見た別の事務所スタッフから「連絡が欲しい」と名刺を預かっていることがわかったことだった。2007年に映画デビュー、2014年にはNHKの連続テレビ小説「花子とアン」でヒロイン・花子の兄役を好演。その翌年には大河ドラマ「花燃ゆ」で沖田総司を熱演するなど、賀来賢人は重要な役どころを次々と演じてきた。
活躍が期待される若手俳優に贈られるエランドール賞新人賞を2021年に受賞した賀来だが、その翌年、16年間所属した事務所もアミューズから独立。「やりたいことしかやらない人生を生きていきたい」という思いから、賀来は新たな道を歩み始めた。コロナ禍による撮影中止が続き、仕事をしたくてもできない状況が独立の決意を固める一因となったようだ。
ミリタリーマニア垂涎のUSN BUSHIPSモデル
所有するモデルはすべて機械式で、カルティエのゴールドケースの「タンク」をはじめ、ヴィンテージ腕時計を含む7~8本のコレクションを所有し、特別な場面では必ず時計を身につけるそうだ。賀来賢人の時計選びは、洗練されたデザインと機能性を重視しており、彼のファッションの一部としても重要な役割を果たしているといえるだろう。
2020年の11月23日に、自身のインスタグラムに投稿された写真がこちらだ。キャプションには「初めて買った子。」と添えられ、愛着を持って迎え入れられたことが想像できる。手巻き。(一般的にはハミルトンCal.987AまたはエルジンCal.539など)。SSケース(直径32mm〜35mm)。50m防水以上。※ケースサイズや防水性能は、モデルによって異なる。
上記画像の時計はUSN BUSHIPSとダイアルに表記があることが確認できる。これはアメリカ海軍船舶局(USNは、United States Navyの略。BUSHIPSは Bureau of Shipsの略)を意味し、第2次世界大戦中にアメリカ海軍のために設計された特別な腕時計である。特に水中や湿気の多い過酷な環境下で信頼性の高い時間計測に応えることができる特別な構造を備えている。
アメリカ海軍の艦船の設計、建造、維持管理を監督していたBUSHIPSは1940年に設立され、1966年まで存在した。海軍の水中爆破チーム(UDT)や海上戦闘部隊といった特別な任務を求められるチームにも時計を供給した歴史を持っているが、これらの特殊な時計は戦争終結後に民間市場に流出しないようにするため、使用後は破壊されることが本来は求められていた。
賀来賢人が購入したUSN BUSHIPSの腕時計は、耐水性を備えたシンプルかつ頑丈なデザインが特徴だ。高い視認性と実用性を備えた設計となっている。大きなリュウズには、ねじ込み式の保護キャップが付き、手袋を着用したままでも操作しやすい。製造を担っていたのは主にハミルトン、ブローバ、エルジンで、特にハミルトンはこの時計の生産において重要な役割を果たした。
同モデルは第2次世界大戦中だけでなく、その後も朝鮮戦争やベトナム戦争でも使用されたようだ。通常50m以上の防水機能を持ち、一部のモデルでは200mの防水性能を備え、海軍の様々な任務において、正確な時間計測のために使用されたのだ。もちろんオリジナルの状態で残っているものは希少価値が高く、コレクターの間でも人気が高い。
多彩な才能を開花させる賀来賢人の今後に期待!
2024年10月25日に配信開始が予定されているアマゾン オリジナル ドラマ「龍が如く~Beyond the Game~」に出演、竹内涼真と共演することで注目を集める賀来賢人。また賀来はデイブ・ボイルとともに映像制作会社SIGNAL181を設立したことを発表し、今後は自由な発想で新しい作品を生み出すことを目指すという。
独立して、自ら選択した道を歩み始めた成果が、いよいよかたちとなって現れてきた。また、ヴィンテージウォッチを愛でる賀来賢人の情熱も本物である。好奇心を持って、多彩な創造活動に挑むように、彼の趣向はひとつのモデルに留まることはないのかもしれない。着用して心地良い腕時計を、自らのブレない価値観で、これからも選び続けていくのだろう。俳優の枠だけに収まらない、賀来賢人のマルチな活躍と、その左腕に今後も注目していきたい。