初めて機械式腕時計を買う際におすすめのブランドとして、チューダーを紹介する。ロレックス譲りの堅牢性と独自性のあるデザインを兼ね備えた同社の腕時計は、どれも扱いやすく、しかも手の届きやすい価格帯であることが魅力だ。今回はその中でも、特にオールラウンドに使える5つのモデルを取り上げる。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年10月2日公開記事]
初めての“ちょっと良い時計”には、チューダーを!
スマートフォンをはじめとする電子機器が普及し、いつでもどこでも正確な時間を知ることができるようになった現代。そんな時代だからだろうか、一時期その存在を危ぶまれた腕時計は、時間を知るという行為に楽しみをもたらしてくれるアイテムとして、あるいは自分を表現するものとして再認識され、今も多くの人々の手元で時を刻んでいる。
そのような流れの中、初めて“ちょっと良い機械式腕時計”を買ってみようと考える方も少なくないのではないだろうか。現代の腕時計はどれも出来が良く、メジャーなブランドであれば何を選んでも高確率で満足することができるだろう。しかし、その中でも特におすすめしたいのが、チューダーの腕時計だ。
チューダーは、ロレックスの創業者であるハンス・ウィルスドルフが創立したスイスのブランドだ。最初に商標登録されたのは1926年のこと。やがて、ロレックスの技術を生かした高品質な時計によって存在感を示し、1952年に「チューダー オイスター プリンス」、1954年に「チューダー オイスター サブマリーナー」など、探検家やプロフェッショナルダイバーから高い支持を得る名作を次々に生み出していった。
長らくエボーシュメーカーの作る汎用ムーブメントを採用していたチューダーだが、2015年には同社が設立したムーブメントメーカー、ケニッシ社のマニュファクチュールキャリバーを搭載した「ペラゴス」と「ノースフラッグ」を発表。手の届きやすい価格帯ながら、高い完成度を誇る実用時計ブランドとして名を馳せるに至った。
チューダーのコレクションに共通するのは、高い堅牢性とタイムレスなデザイン性だ。特に機械式時計は、水や衝撃、磁気に弱く、取り扱いに注意を要する。チューダーの腕時計はどれも高い防水性を誇る堅牢なケースを採用しており、マニュファクチュールキャリバーを搭載したモデルであれば、磁気にも強い。さらに落ち着きのあるデザインは、オンオフ両方で活躍することはもちろん、年齢を重ねてもずっと使い続けることができる。最初の1本として、そして将来を共にする時計として、チューダーは間違いのない選択なのだ。
とはいえ、チューダーにも多くのモデルが存在する。そこで今回は、同社の豊富なラインナップから、特に最初の1本にふさわしい5つのモデルを紹介する。気になったモデルがあれば、ぜひ店頭に足を運んで実機を見て触ってみてほしい。
「レンジャー」Ref.M79950-0001
ツールウォッチらしいシンプルなデザインが魅力の「レンジャー」。英国海軍の北グリーンランド遠征の70周年を記念し、2022年に発売された人気コレクションだ。バックルには、微調整機構である“T-fit”を搭載する。自動巻き(Cal.MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ12mm)。100m防水。46万4200円(税込み)。
1952年から1954年にかけて行われた英国海軍の北グリーンランド遠征において、チューダーが隊員に提供した時計が、「オイスター プリンス」だ。この時計は、持ち前の堅牢性と高い精度によって遠征を成功に導き、チューダーの技術力を広く世に知らしめた。その偉業に敬意を表し、2022年に誕生したコレクションが、チューダー「レンジャー」だ。
ちなみにチューダーが“レンジャー”を商標登録したのは1929年のこと。以降、この名は複数のモデルに対して使用されてきた。現代のレンジャーがモチーフとする、アラビア数字インデックスと矢印型の針を組み合わせたモデルが登場するのは、1960年代のことである。
本作のデザインは極めてシンプルだ。スムースベゼルを取り付けたステンレススティールケースは、全面をサテン仕上げで統一され、マットなブラックダイアルにはアラビア数字とバーを組み合わせたインデックスが並んでいる。搭載するムーブメントは、C.O.S.C.公認クロノメーターを取得し、シリコン製ヒゲゼンマイを搭載したCal.MT5402。
時刻表示のみに特化したストイックな佇まいにハイスペックなムーブメントを組み合わせたレンジャーは、まさに初めての高級時計としてふさわしい汎用性を秘めたモデルだ。複数本所有した後でも、オールラウンドに使える1本として重宝すること間違いなしだ。
「チューダー ロイヤル」Ref.M28600-0005
ブレスレット一体型ケースを採用したモデル。ベゼルやブレスレットの一部にポリッシュ仕上げを加えることで、華やかな印象にまとめられている。自動巻き(Cal.T603)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ10.6mm)。100m防水。35万9700円(税込み)。
ブレスレット一体型ケースを採用した「チューダー ロイヤル」は、豊富なバリエーションで展開されているドレッシーなデザインが特徴のコレクションだ。ケースサイズは、28mm、34mm、38mm、41mmが用意され、ステンレススティールケースモデルの他、18Kイエローゴールド製ベゼルを組み合わせたコンビモデルや、マザーオブパールダイアルにダイヤモンドをセットしたモデルも存在する。
今回紹介するのは、41mmケースに爽やかなブルーダイアルを組み合わせたモデルだ。ベゼルにはノッチが入れられ、手首を動かす度にポリッシュ部分が光を受けて煌めく様子を楽しむことができる。100m防水を有しているため、デイリーウォッチとして悪天候でも使いやすい点も魅力だ。
サンレイ仕上げのダイアルには上品なローマンインデックスとレイルウェイミニッツサークルが並び、ペンシル型の時分針が高い判読性をもたらす。41mmケースモデル固有の特徴として、11時から1時位置にかけてフルスペルの曜日表示が配されている。
ムーブメントは、汎用機をベースとしたCal.T603を搭載する。スペック自体は突出していないものの、その信頼性は多くのブランドが採用し実証してきた通り。また、これによって価格が抑えられていることも、最初の1本にお勧めできる要素の1つである。
「1926」Ref.M91650-0002
ワッフルパターンのダイアルが仄かにヴィンテージテイストをもたらす、クラシックウォッチ。シャツの袖口に収まりやすい薄型ケースも魅力。自動巻き(Cal.T601)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ9.3mm)。100m防水。29万9200円(税込み)。
チューダーのブランド誕生年を冠した「1926」。チューダー ロイヤル同様に幅広いラインナップを有するドレッシーなコレクションだ。ブランド初期のデザインにオマージュを捧げており、エンボスによるワッフルパターンのダイアル、アラビア数字とくさび型を組み合わせたインデックスなど、クラシカルな要素がちりばめられている。
41mmケースにブラックダイアルを組み合わせた本作では、インデックスと針をシルバーで統一し、精悍な印象にまとめている。ケースの厚さは9.3mmと、シャツの袖口にもスッと収まるサイズだ。ねじ込み式のリュウズによって100m防水のスペックとなっていることも見逃せない。
ステンレススティール製のブレスレットは、サテンとポリッシュに仕上げ分けた7連タイプ。1つ1つのコマ自体が細かいため、しなやかな装着感を味わうことができる。
ムーブメントはCal.T601。3針機械式自動巻きムーブメントの業界標準とも言える汎用機をベースとしているため、機械式時計に不慣れな方であっても安心して使用することが可能だ。
加えて、28mmケースのモデルも用意されているため、サイズ違いで揃えればペアウォッチとして楽しむことができるのも魅力である。タイムレスなデザインは、長年愛用するにもふさわしい。
「ブラックベイ 41」Ref.M79680-0002
スムースベゼルを採用した「ブラックベイ」。18Kイエローゴールドとのコンビケースモデルや、ダイヤモンドインデックスを採用したモデルなど、よりドレッシーなバリエーションも存在する。自動巻き(Cal.MT5601)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.2mm)。100m防水。57万5300円(税込み)。
チューダーの顔とも言える「ブラックベイ」コレクション。ダイバーズウォッチとして誕生したブラックベイだが、本作のようにスムースベゼルを採用したエレガントなモデルもラインナップされている。ケースサイズやダイアルなど、さまざまなバリエーションが展開されているが、ここで紹介するのは41mmのステンレススティールケースにブルーダイアルを組み合わせたモデルだ。
ダイアルの基本的な要素は、回転ベゼルを持つブラックベイと同じだ。トライアングルとバー、ドットを組み合わせたインデックスは、瞬時に時計の向きを判別することを助けてくれる。時針にはチューダーを象徴するスノーフレーク型を採用し、シンプルな中にもアイコニックな意匠を取り入れている。
ブレスレットは、中央3列にポリッシュ、その両サイドにサテン仕上げを施した、5列リンクタイプを採用する。バックルには、独自の微調整機構である“T-fit”が搭載され、体調や気候に合わせて簡単に腕周りを調整することが可能だ。
ムーブメントは、傘下のムーブメントメーカーであるケニッシ社製のCal.MT5601。C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した高精度や約70時間のロングパワーリザーブなど、高いスペックを誇る。
ポリッシュ仕上げのスムースベゼル、サンレイ仕上げのダイアル、5連のブレスレットといったドレスライクな意匠に、ダイバーズスタイルのインデックスと針。相反する要素の共存によって生み出された調和が、本作のユニークなキャラクターを作り出している。
「ブラックベイ 58」Ref.M79030N-0003
小ぶりなサイズによって高い人気を誇る「ブラックベイ 58」。C.O.S.C.公認クロノメーターを取得し、シリコン製ヒゲゼンマイを搭載したCal.MT5402を搭載する。自動巻き(Cal.MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.9mm)。200m防水。51万5900円(税込み)。
1958年に誕生したダイバーズウォッチ「Ref.7924」、通称“ビッグ・クラウン”に着想を得たコレクションが、「ブラックベイ 58」だ。2024年新作としてGMT機能搭載モデルが追加されるなど、ラインナップを拡充させ続けているコレクションだが、ここで紹介するのは、2018年にブラックベイ 58の1作目として登場したブラックダイアルモデルだ。
デザイン自体は、他のブラックベイと大きく変わらないものの、ケースサイズは直径39mm、厚さ11.9mmと、やや小ぶり。200m防水を備えたダイバーズウォッチとしての堅牢性と取り回しやすさを両立したこのサイズ感こそ、ブラックベイ 58の人気の秘密だ。
インデックスと針の縁取りやミニッツマーカー、ベゼルのスケールにはゴールドカラーが採用されている。ヴィンテージテイストなモデルの多いブラックベイだが、本作はその中でも一際、ヴィンテージ感を強調したカラーリングを持つ。
ベルトは、ダイアルのカラーに合わせたファブリック製。フランスの飾り紐会社がジャカード織機の技術を用いて実現した、強靭さと柔軟さを兼ね備えた高品質なファブリックストラップだ。
ムーブメントは、レンジャーと同じケニッシ社製のマニュファクチュールキャリバー、Cal.MT5402を搭載する。