グランドセイコーは「エボリューション9」コレクションの新作Ref.SLGA025を発表した。長野県の阿寺渓谷に着想を得た本モデルは、透明度の高い清流のエメラルドグリーンを文字盤に表現。信州霧氷仕上げを施した高精度スプリングドライブムーブメント、Cal.9RA2の搭載と相まって、日本の豊かな自然美と卓越した時計技術の融合を体現している。
高い透明度を誇る阿寺川の清流を表現した文字盤が印象的だ。光の反射により、多彩なニュアンスを表現する。スプリングドライブ(Cal.9RA2)。38石。パワーリザーブ約120時間。Tiケース(直径40.0mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。146万3000円(税込み)。
text by Sabine Zwettler
Edited by Takashi Tsuchida
[2024年10月31日公開記事]
阿寺川の清流美を映し出す「エボリューション9」コレクションの新作
グランドセイコーの新作であるRef.SLGA025は、セイコーの独自素材であるブライトチタン製のケースに、約5日間のパワーリザーブを誇る高精度スプリングドライブ搭載ムーブメント、Cal.9RA2を採用した腕時計だ。その最大の特徴は、長野県の木曽川水系に属する一級河川、阿寺川(あてらがわ)の類まれな色彩美を表現した文字盤にある。
日本の美しい風景を文字盤に描く、グランドセイコーならではの美意識
「魔力は常に細部に潜んでいる」。これはドイツの文豪テオドール・フォンターネの名言だ。彼がこの言葉を残すきっかけとなったのは、繊細なギヨシェ文字盤を持つ高級な懐中時計だったのかもしれない。今となってはその真相を確かめることはできないが、芸術的領域へと昇華された文字盤の魅力は、現代においても何ら変わることはない。ディテールを際立たせるテクスチャーが、唯一無二の美意識を生み出すからである。
グランドセイコーは、文字盤の意匠を日本の風景と結びつけることで知られている。例えば、“白樺”の愛称で呼ばれるRef.SLGH005は、雫石高級時計工房の周辺に広がる白樺の森からインスピレーションを得ている。
一方で、今回の新作Ref.SLGA025は、標高3000m級の山々に囲まれた、長野県南部に位置する阿寺渓谷に着想を得たモデルである。長い年月をかけて形成された渓谷の清流は、その透明度の高さから“阿寺ブルー”と呼ばれ、訪れる人々の心をひきつけてやまない。
文字盤は、透明度の高いブルーグリーンのグラデーションカラーを幾層にも塗り重ねることで、川底まで見透かせる清流を表現。みずみずしいカラーリングと繊細なテクスチャーが、この渓谷を形成してきた悠久の時の流れを映し出している。その文字盤上には、「エボリューション9」コレクション特有の存在感のあるアワーインデックス、精緻な仕上げを施した時分針、3時位置には日付表示窓が配された。
ケースは、10気圧防水性能と4800A/mの耐磁性能を備え、直径40mmの使いやすいサイズに仕上げられている。またケースおよびブレスレットには、ステンレススティールにも似た明るい輝きを放つセイコー独自のブライトチタンが採用された。
スプリングドライブの最新ムーブメントが刻む卓越した精度
Ref.SLGA025には、約5日間のパワーリザーブを誇るスプリングドライブムーブメント、Cal.9RA2が搭載されている。このムーブメントは、2020年に発表された9R系スプリングドライブムーブメントの第2世代に当たるものだ。温度補正機能を第1世代同様に搭載し、1日あたり±0.5秒相当という卓越した精度を実現。新たにパワーリザーブインジケーターを裏蓋側に配し、さらなる薄型化が図られている。
ムーブメントには、厳寒期の信州地方で見られる霧氷を表現した、セイコーが“信州霧氷仕上げ”と呼ぶ仕上げが施されている。これは生産地へのオマージュとして、冬の始まりに木々を覆う細やかな霜や、枝間からのぞく星空を表現したものである。
ブレスレットはブライトチタン製。オプションにクロコダイルストラップも
Ref.SLGA025は限定品扱いではなく、通常生産モデルとして展開され、ケースと同じブライトチタン製のブレスレットを標準装備。オプションとして4万6200円(税込み)の純正クロコダイルストラップ本体と、4万4000円(税込み)のバックルも用意されている。