1934年に創設され、フランス軍用時計の黄金期を支えたエイレン。休眠を経て2020年に復活を遂げた同社が、現代の技術とヴィンテージの美意識を調和させた新作を発表。軍用時計の規格を継承しつつ、高級機械式時計としての完成度も高めた「タイプ20」が、ミリタリーウォッチを求める時計愛好家の注目を集めている。
仏空軍の歴史を刻んだ名門、新作「タイプ20」を発表
フランスの時計メーカー、エイレンは、ヴィンテージテイストのミリタリーウォッチファンを魅了する新作を発表した。39.5mmのステンレススティールケースに、50mの防水性能を備え、手巻き式フライバッククロノグラフムーブメントを搭載した「タイプ20」である。日本での価格は66万円(税込み)に設定されている。
エイレンは、1857年創業の仏航空時計製造会社、ドダーヌの3代目レイモンド・ドダーヌによって創設された時計ブランドである。1950年代から1960年代にかけて、エイレンはフランス空軍向けのタイプ20のサプライヤーとして選定され、特に陸軍軽航空部隊(ALAT)のヘリコプターパイロット向けの時計を供給した実績を持つ。
タイプ20は、かつてフランス空軍や海軍航空隊で使用された由緒ある時計だ。しかしタイプ20という名称自体は商標登録されなかったため、特定のブランドの専有物とはなっていない。
ブラックダイアルにアラビア数字インデックス、水平2カウンター式レイアウト、双方向回転ベゼルなど、1950年代の規格要件を忠実に継承している。手巻き(AMT Cal.AM-2)。23石。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ10.85mm)。50m防水。66万円(税込み)
タイプ20の規格とブランド
フランス国防省は1950年代、パイロットに最適な高精度腕時計の軍用規格としてタイプ20の仕様を制定した。その要件には、38mm前後のケース径、ねじ込み式ケースバック、ブラックダイアル、2または3つのインダイアル、アラビア数字インデックス、針やインデックスへの蓄光塗料の塗布、双方向回転ベゼル、日差8秒以内の精度、35時間以上のパワーリザーブなどが定められていた。特にフライバック機能は、編隊飛行時や管制官とのコミュニケーションにおける時間管理に不可欠な機能として必須とされている。
タイプ20の製造メーカーとして最も有名なのはブレゲであるが、その他にもアリコスタ、ドダーヌ、マセイ・ティソなどが名を連ねた。中にはブランド名さえ刻まれていないものも存在した。
長年の休眠期間を経て、エイレンは2020年に見事な復活を遂げた。その立役者は、オランダの時計愛好家で起業家のトム・ヴァン・ウィジリック氏である。氏は2014年にクリスティーズのオークションでエイレンの姉妹会社ラボアの権利を取得し、6年後にエイレンの権利も獲得。当時のデザインを忠実に守りながら、現代的な技術を融合させた復刻を実現した。
現代版復刻モデルの全貌
新作タイプ20の特徴は次の通りである。水平2カウンター式クロノグラフは、ポリッシュとブラッシュ仕上げを施した39.5mmのステンレススティールケースを採用し、50Mの防水性能を確保。反射防止サファイアクリスタルで保護されたダイアルは、グレー、ブラウン、ブラックの3色展開だ。アラビア数字インデックスを採用し、インダイアルにはサーキュラーパターンを用いている。
搭載されるのは、AMTが製造する手巻き式ムーブメント、Cal.AM2である。コラムホイールを採用したフライバッククロノグラフ機構に加え、インカブロックを搭載。約60時間という十分なパワーリザーブを備えた仕様となっている。そしてレザーストラップには専用バックルが用意されている。
なお新生エイレンは、このタイプ20に加え、「タイプ 21」と、かつて「スーマリーン」の愛称で親しまれたダイバーズウォッチも2023年に復活させ、着実にコレクションを拡充している。