50万円台で購入可能なGMTウォッチから、おすすめの5本を紹介。手の届く価格帯ながら、各社の技術をふんだんに盛り込んだ傑作がそろう。ビジネスから海外旅行まで、着用シーンに合わせてGMTウォッチを選んでみてはいかがだろうか。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年11月25日公開記事]
ビジネスから海外旅行まで、機能性に優れたGMTウォッチが勢ぞろい!
時刻を知るためのツールである時計。この場合の時刻とは、一般的に現在地の時刻を指すことが多い。しかし、昨今のグローバル化に伴い、異なるタイムゾーンの時刻を知ることに対するニーズは増加傾向にある。ビジネスにおける海外の拠点や取引先とのコミュニケーション、あるいは海外旅行時に日本へ連絡を取る時など、世界中を短時間で結ぶ通信技術や航空機の発展は、時差の存在をより身近なものとした。
そんなときに便利なのが、一度にふたつ以上のタイムゾーンの時刻を表示可能なGMTウォッチだ。その表示方法はいくつか存在するが、最も一般的なのは、24時間でダイアルを1周するGMT針と、ベゼルやフランジの24時間表記を組み合わせたものだろう。
海外に渡航した際には、通常の時針を時差分調整することでローカルタイムを示し、GMT針によってホームタイムを示す使い方をすることが多い。さらにベゼルを回転させるなどして、3つ目のタイムゾーンを設定することが可能なモデルも存在する。
今回はそんなGMTウォッチから、5つのモデルを紹介する。選定にあたって制約としたのは、50万円台で購入可能なこと。手の届く価格帯ながら、各社の技術力が光る傑作たちをピックアップしてみた。いずれも高い堅牢性を備えており、高級時計初心者にもおすすめだ。
ジン「インストゥルメント ウォッチ 105」Ref.105.ST.SA.UTC
ポップなデザインが魅力の「105」。不意にぶつけてしまうことの多いベゼルには、独自技術であるブラック・ハード・コーティングと特殊結合方式を採用することによって、優れた堅牢性が与えられている。自動巻き(Cal.SW330-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.9mm)。20気圧防水。50万500円(税込み)。
堅牢なパイロットウォッチやダイバーズウォッチを多く手掛けるジン。同社が2020年に新たに発表したのが、「105」シリーズだ。105には、3針モデルとGMTモデルがラインナップし、それぞれにホワイトダイアルとブラックダイアルが用意されている。ホワイトダイアルモデルは、iFデザインアワード2023を受賞しており、そのデザイン性の高さが世界的にも認められている。
ケースは、パイロットウォッチである「104」と同様、がっしりとしたラグとリュウズガードを備えたスポーティなデザインだが、105ではインデックスと針の形状に丸みを与えることで、新鮮な印象をもたらしている。
オレンジの矢印型の針と両方向に回転するベゼルを用いることによって、最大3つのタイムゾーンの時刻を表示することが可能。このベゼルには、ジン・テクノロジーのひとつであるテギメントとPVDコーティングを組み合わせた、ブラック・ハード・コーティングが施されており、高い耐傷性を誇るとともに、PVDの剥離を防いでいる。ベゼルは、側面からネジを用いてケースに取り付けられており、衝撃が加わっても外れてしまうことがない。
ムーブメントはセリタのCal.SW330-1を搭載し、シースルーバックを通して鑑賞することができる。
チューダー「ブラックベイ プロ」Ref.M79470-0001
サテン仕上げを施したベゼルやマットブラックのダイアルなど、ツール然とした佇まいが魅力。高い防水性や視認性、堅牢性を備え、多用途に使いやすい1本。一時期の品薄が解消され、入手しやすくなったのもうれしい。自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ14.6mm)。200m防水。59万700円(税込み)。
チューダーが培ってきた冒険の精神を体現するスポーツウォッチ。24時間表記の固定式ベゼルと、イエローのスノーフレイク針によって第2時間帯を表示することが可能だ。リュウズを一段引きで操作すると、運針を止めることなく時針を1時間単位で進めるまたは戻すことができる。時差調整を簡単に行うことができるため、海外渡航が多い方にとっては非常に機能的だ。
ダイアルは、ツール感の強いマットブラック。縁取りのないインデックスは、セラミックスと蓄光塗料を混ぜた素材によるもの。ややクリーム色に仕上げられており、ドーム型のサファイアクリスタルと相まって仄かなヴィンテージ感が漂う。
ステンレススティール製のケースは、直径39mmのコンパクトなサイズ感だが、それなりに厚みを持たされているため、迫力のあるボリューム感を存分に楽しむことができる。リベットタイプのブレスレットには独自の微調整機構である“T-fit”が搭載され、簡単に手首回りに合わせて微調整できる。
搭載するムーブメントは、ケニッシ製のCal.MT5652。C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した高精度や約70時間のパワーリザーブなど、優れた実用性を誇る。
シチズン「シリーズエイト 880 メカニカル」Ref.NB6030-59L
シリーズエイトのGMTモデル。最大3つのタイムゾーンの時刻を同時に表示可能なGMT機能だけではなく、10気圧防水や第2種耐磁など、優れたスペックを備えている。自動巻き(Cal.9054)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.5mm)。10気圧防水。22万円(税込み)。
シチズンのシリーズエイトにラインナップする「880 メカニカル」は、ブレスレットとケースがシームレスなラインを描く、スタイリッシュなデザインが特徴のコレクションである。そのうちのひとつであるRef.NB6030-59Lは、GMT機能を備えており、また、ブルーとレッドのベゼルを採用したモデルだ。
ブルーのダイアルには、東京の夜景と伝統の市松模様を融合したパターンが刻まれ、見る角度や光の当たり具合によってさまざまに表情を変化させる。幅を持たせたインデックスや時分針は視認性にも優れ、実用性も抜群だ。
ツートンカラーのベゼルは両方向に回転し、GMT針と合わせて最大3つのタイムゾーンの時刻を表示することができる。本作が搭載するCal.9054では、リュウズを一段引きにすることで時針を単独で動かし、時差調整することが可能だ。
サテン仕上げを主体としたケースは、現行のシリーズエイトらしいエッジの効いたデザイン。シームレスにブレスレットへとつながる様子がスポーティーな印象をもたらし、オンオフ問わず幅広いシーンで着用しやすい。
グランドセイコー「スポーツ コレクション」Ref.SBGN027
高性能なクォーツムーブメントを搭載した、グランドセイコーのGMTウォッチ。24時間表記をあしらったベゼルは大きすぎず、すっきりとしたデザインを実現している。クォーツ(Cal.9F86)。SSケース(直径39mm)。20気圧防水。47万3000円(税込み)。
数あるグランドセイコーの中でも、スポーティーなデザインがそろう「スポーツコレクション」。本作は、シルバーの針やインデックスに、ブラックダイアルを備えたモデルだ。今回紹介する5本のうち、本作のみクォーツムーブメントを搭載している。
ダイアルは、グランドセイコーらしさにあふれたデザイン。針とインデックスはシャープにカットされ、わずかな光を拾って高い視認性を発揮する。ブレなくスッと動く秒針も、高級クォーツウォッチならではの精密感を味わえる要素のひとつだ。ベゼルとダイアルのフランジに24時間表記が配され、GMT針と合わせて読むことによって、第2時間帯を知ることが可能だ。時差を修正する際は、リュウズを一段引くことによって、時針を1時間単位で進むまたは戻すことができる。
ケースとブレスレットは、ザラツ研磨によって平滑な面が作り出されており、シンプルな中に上質感が漂う。ケースサイズは、現代のメンズウォッチとして主流の直径40mm。過度な主張を抑えたデザインは、ビジネススーツにもぴったりだ。
ボール ウォッチ「エンジニア III アウトライアー」Ref.DG9000B-S1CJ-BK
自発光マイクロ・ガスライトやミューメタル製インナーケースなど、ボール ウォッチの誇る数々の技術を盛り込む。外装に904Lステンレススティールを採用していることも魅力のひとつ。自動巻き(Cal.RRM7337-C)。 SSケース(直径40mm、厚さ13.8mm)。200m防水。世界限定1000本。55万円(税込み)。
異端児を意味するアウトライアーと名付けられた、ハイスペックなGMTウォッチ。両方向に回転する24時間表記のベゼルとGMT針によって、最大で3つまでのタイムゾーンを同時に表示することが可能だ。
ブラックのダイアルには、自発光マイクロ・ガスライトを用いたインデックスと針が並び、暗所でも優れた視認性を発揮する。3時位置の日付表示には拡大レンズが配され、カレンダーを容易に読み取ることが可能だ。先端をオレンジに彩ったGMT針に合わせて、フランジ部には24時間表記が与えられている。
ケースは、耐食性に優れた904Lステンレススティール製。5000Gまでの耐衝撃性や200mもの防水性を備え、ムーブメントをミューメタル製のインナーケースに包むことで、8万A/mの高耐磁性を獲得している。
ムーブメントは、時針を単独で調整することが可能なGMT機能を搭載するだけではなく、C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した上で、さらにそれ以上に厳格な社内規格であるBALLオフィシャル スタンダードの精度を保証している。