これは入学祝いなどに最適な時計だ
アメリカからやってきた〝200ドルの超新星〟ダン・ヘンリー。1930年代から70年代に作られた往年のヴィンテージウォッチを可能な限り再現したそのデザイン性の高さから、多くの愛好家の「デイリーウォチ」として認知されるようになった。前回も書いたが、ダン・ヘンリーの時計はオンラインでしか購入できないのだが、どうやら日本からの注文が今のところ最も多いという。そのあたりの人気の秘密が、実際に着用すればもうちょっと分かるかもしれない。
「1968」のケースサイズは41㎜。現行時計では標準的なサイズだ。ただ、僕は普段、アンダー40㎜の古時計を中心に着用しているので、ヴィンテージ風の時計としては、ちょっと大きいかなというのが第一印象だった。腕に軽くのせた後、実際に着用してみる。あれ、意外なほど大きさを感じないな。というより軽々としている。目方を測ると約60gだった(ストラップ含む)。
ストラップはイタリア製のカーフスキン。パンチングが空いているのは好みが分かれるところで、僕は正直に言って余り好きではないのだが、200ドルなので特に文句はつけないことにしよう。しかし、レザー自体はとてもスムースで腕なじみが良い。ケース自体はやや重心が高いので、腕からケースが浮いたような感じになるのは気になるところか。ラグをもう少し曲げれば、腕にほどよく沿うようになるのではないか。
ケースと一体成型のラグは、先端を直角に切り落としたデザインだ。往年のユニバーサルなどを思わせるこのデザインは好感が持てる。裏蓋には3Dで「迷路」をエングレーブしたメダリオンが付いていて、別の愛用者からは「このメダリオンが腕に当たって違和感を覚える」と言っていたが、僕は全然気にならなかった。気になるとしたら、なぜこの時計の裏蓋に迷路のエングレービングがあるのか、という素朴な疑問だけである。
前回書いたが、この時計にはNATOストラップが付属している。色はブラック。ブラウンのカーフスキンにやや違和感を感じていたので、早速付け替えてみる。着脱はバネ棒に付いている突起をスライドさせるだけ。あっけないほど簡単なインターチェンジャブル方式だ。人後に落ちない不器用ぶりで知られる僕でさえサクッとできたので、おそらく戸惑う人はいないだろう。やっぱり黒のNATOストラップの方が、よりカジュアルで気安い雰囲気が出るから良い!もちろん、装着感も良好だ。
積算機能のないクロノグラフについては、はっきり言ってほとんど使う機会はない。ただ、機械式のように振り落ちを心配することもないので、永久秒針として動かしておくのも一興か。何せ、スモールセコンドは、(当たり前だが)クォーツの無機質なステップ運針なのだから……。
ケースや文字盤、ストラップなどの質感、着け心地、機能性などを総合的に評価すると、ダン・ヘンリーの「1968」は、200ドルの廉価なクォーツ時計以上の価値があるということができる。しかし、この記事をお読みになってダン・ヘンリーの時計に興味を持った方は、おそらく1968以外のモデルを購入した方が良いだろう。他のモデルの方がよりオーセンティックで古時計のニュアンスを上手に伝えているからだ。
僕はというと、大学に入学したばかりの甥の入学祝いにセイコーの自動巻きを積んだダイバーズモデル「1970」を同時に購入した。回転式のインナーベゼルの操作性が良好なモデルで、価格はちょっとだけ割高な、でも250ドルで買える良心的な1本だ。さて、この1968、この夏に使い倒したら、高校受験を控える息子に譲ろうかと考えている。こうして、時計は次の世代へと受け継がれていくのかな?