グランドセイコーと言えば、メカニカルやスプリングドライブが注目されがちだが、世界トップレベルの性能を誇るクォーツの「9F」系ムーブメントも忘れてはならない。今回は、グランドセイコーのクォーツモデルより、編集部が本当に欲しい5本を紹介する。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年12月3日公開記事]
職人技が満載の高級クォーツムーブメント「9F」
日本が誇る高級時計ブランド、グランドセイコー。グランドセイコーは、メカニカル、スプリングドライブ、そしてクォーツの3種類のムーブメントを使い分ける技巧派ブランドだ。今回は、その中でもクォーツムーブメントを搭載したモデルにスポットを当て、5つのモデルを紹介する。
グランドセイコーが搭載する「9F」系は、同ブランド専用に開発された究極のクォーツムーブメントだ。瞬時に切り替わるカレンダー機構や、太く重い針を動かすことのできるツインパルス制御モーター、精度調整を可能とする緩急スイッチなど、優れたスペックを追求するための機構が備わっている。さらに、保油性を高め塵の侵入を防ぐための特殊構造を有しており、その複雑さからクォーツムーブメントとしては珍しく、組立は職人の手作業によって行われている。
また、外観はゴールドカラーに仕上げた上でストライプ装飾が施されており、審美性も高い。一部の限定モデルを除き、基本的にソリッドバック仕様であるため、その姿を拝むことは難しいのが残念だが、裏を返せば目の届かない部分にもきっちりと気を配っているということだ。日本が世界に誇る究極のクォーツムーブメント、それが9F系なのだ。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGP001
1967年に登場し、「グランドセイコースタイル」を確立した「44GS」のデザインを受け継ぎつつ、現代的にアレンジしたモデル。平面を主体に構成されたケースは、ザラツ研磨を施すことによって歪みなく仕上げられている。特に広い平面であるラグ上面は、まるで鏡のように周りの風景が映りこむほどの仕上がりだ。
グランドセイコーが得意とする、シャンパンカラーのような厚銀放射ダイアルにも注目だ。まるでシルクのような繊細な放射模様は、グランドセイコーのクォーツモデルが製造される信州の地が、かつてシルクの一大生産地であったことに敬意を表したもの。
ダイアルには、多面カットによって煌めくバーインデックスと、ドーフィン型の時分針が組み合わされている。秒針は、熱を加えることによって青く色づいた、テンパーブルー針を採用。鮮やかで均一なブルーを実現するため、針の1つ1つが職人の手作業によって制作されている。
搭載するCal.9F85は、日付表示付きのシンプルな3針クォーツムーブメント。時針を単独で可動させることが可能であり、タイムゾーンが異なる地域へ移動する際に、簡単に時差修正ができるという特徴がある。
「44GS」の現代デザインを採用したモデル。やや黄色味がかった厚銀放射ダイアルが華やかな印象だ。時針の単独可動によって、時差修正を簡単に行うことができる。クォーツ(Cal.9F85)。SSケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。10気圧防水。46万2000円(税込み)。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX355
グランドセイコーと言えば、自然に着想を得た多彩なダイアル表現も魅力の1つ。その中でも根強い人気を誇るのが、まるで雪のような繊細なパターンを施した“雪白ダイアル”だ。本作は、そんな雪白ダイアルをコンパクトなケースに収めたクォーツモデルである。
白いダイアルに浮かび上がるのは、雪面に吹き付ける風が描く風紋。驚くべきは、このダイアルが、ホワイトの塗装ではなく銀めっきによって表現されたものであるということだ。グランドセイコーのクォーツモデルが誕生する信州 時の匠工房から遠くに望む穂高連峰で毎年冬に見られる自然の芸術が、ダイアルに閉じ込められている。やや細身のインデックスが雪面の繊細さを強調し、テンパーブルーの秒針が雪の白さに浮かび上がる様子は、見る者の心を雪原へと誘ってくれる。
直径37mmの小ぶりなケースは、ブライトチタン製。軽く耐腐食性や抗アレルギー性に優れるというチタンの性質はそのままに、白く輝く審美性も兼ね備えている。
グランドセイコーの中でも根強い人気を誇る、雪白ダイアルをまとったモデル。直径37mmのコンパクトなケースは、男女問わず使いやすい。クォーツ(Cal.9F62)。ブライトチタンケース(直径37mm、厚さ10.6mm)。10気圧防水。53万9000円(税込み)。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX265
現代の名工にも選ばれたデザイナー、小杉修弘氏によるシンプルなデザインが魅力のベーシックモデル。ブルーのダイアルは、光の当たり具合によってさまざまに表情を変える。ブルーの他、ブラックやシルバーなどのカラーバリエーションも存在し、好みに合わせて選ぶことが可能だ。多面カットが施されたインデックスは、6時、9時、12時位置のみ太いものが採用され、優れた判読性をもたらす。
ケースは直径37mm、厚さ10mmと、控えめなサイズ感。過度な主張もなくシャツの袖口にスッと入るため、ビジネスシーンでの使用にも適している。グランドセイコーの中では比較的安価なモデルだが、ケースには細やかなヘアラインと歪みの無いポリッシュが施され、高級時計らしい上品な佇まいだ。
3連のステンレススティール製ブレスレットによって、季節や天候を問わず着用可能だ。スクリューバック仕様の裏蓋には獅子の紋章が刻まれ、所有者のみがその雄々しい姿を鑑賞することができる。
ムーブメントは、Cal.9F62を搭載。年差±10秒の高精度と瞬間日送り機構を搭載した、9F系のスタンダードなムーブメントだ。
グランドセイコーらしいデザインと上質な仕上げを堪能できるベーシックモデル。爽やかなブルーダイアルは、老若男女問わず使いやすい。クォーツ(Cal.9F62)。SSケース(直径37mm、厚さ10mm)。10気圧防水。30万8000円(税込み)。
グランドセイコー「エレガンスコレクション」Ref.SBGX347
「エレガンスコレクション」に属する通り、ドレッシーなデザインが特徴。直径34mmの小ぶりなケースにノンデイト仕様のダイアル、ステッチのないクロコダイルレザーストラップの組み合わせは、まさに王道のドレスウォッチだ。
ホワイトのダイアルには、わずかにザラついたような質感が与えられ、光を受けて煌めく。小径なダイアルだが、多面カットが施されたインデックスや太い時分針によって、視認性は抜群だ。
ケースのデザインも特徴的。ラウンド型のクラシカルなケースに、細身のラグが伸びる。ベゼルも細めに設定され、ボックス型のサファイアクリスタルが柔らかな印象を与えている。
装着されているクロコダイル製のレザーストラップは、ややグレーを帯びており、フォーマルシーンだけではなく、日常使いにも着用しやすい。フォールディングバックルではなく、すっきりとしたピンバックル仕様であることも、本作のデザインにマッチしている。
なお、今回紹介した他のモデルに比べ、若干防水性に劣るため、荒天時の着用には気を付けたい。
ドレッシーなデザインが魅力の「エレガンスコレクション」。直径34mmのケースサイズは、現行モデルとして貴重な存在。クォーツ(Cal.9F61)。SSケース(直径34mm、厚さ10.7mm)。日常生活用防水。47万3000円(税込み)。
グランドセイコー「スポーツコレクション」Ref.SBGN027
アクティブなデザインが魅力のGMTウォッチ。グランドセイコーらしさを残しつつ、全体をスポーティーにまとめ上げたデザインが特徴だ。「スポーツコレクション」の中ではコンパクトな直径39mmのサイズ感は、腕が細めの男性や女性にとっても使いやすい。
ケースとブレスレットは、ヘアライン仕上げが主体。固定式のステンレススティール製ベゼルには、24時間表記が直接彫り込まれている。ねじ込み式のリュウズは4時位置に配され、装着時に手首を動かしても干渉しにくいよう配慮されている。レジャーシーンでも安心な20気圧防水を備えている点も魅力だ。
ダイアルは、ブラックとシルバーのGMT針がコントストを成す。時分針とインデックスには蓄光塗料が塗布され、暗所での視認性を確保する。フランジにも24時間表記が配され、昼夜を判別するために、ツートーンに色分けされている。
搭載するCal.9F86は、運針を止めることなく時針を単独で可動させることができるGMTムーブメントだ。海外渡航の際に、簡単に時差を調整することができる。
「スポーツコレクション」に属するGMTウォッチ。直径39mmのコンパクトなケースにねじ込み式リュウズを備え、20気圧防水を達成している。クォーツ(Cal.9F86)。SSケース(直径39mm、厚さ12.3mm)。20気圧防水。47万3000円(税込み)。