ドミニク・ブシェ トーキョー(東京・銀座)/この世ならぬ美味のクリエイター

2025.01.06

銀座にありながら、パリのグランシェフの味を堪能できる「Dominique Bouchet Tokyo」。ドミニク・ブシェ氏が絶大な信頼を寄せるエグゼクティブ シェフの伊藤 翔氏の想いに迫る。

パルマンティエ ドゥ オマール

パルマンティエ ドゥ オマール
アッシ パルマンティエという牛挽き肉とマッシュポテトで作るグラタンのような素朴な家庭料理を、2種のソースとブルターニュ産のオマールブルー、キャビアによってグランメゾンにふさわしく昇華させたメニュー。輪郭あるソースながら、優しさと軽やかさが印象的。ディナーのスペシャリテコース「MENUHERITAGE」(2万8000円)から。
外川ゆい:取材・文 Text by Yui Togawa
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
[クロノス日本版 2025年1月号掲載記事]


技と心を継承するソースが紡ぐ系譜

「手紙や電話ではなく、やはり目を見て想いを伝えたくて……。拙いフランス語を丸暗記するようにしてパリの『Dominique Bouchet』の扉を叩きました。それが、ドミニクシェフとの始まりです」。それから7年後、伊藤 翔氏は「Dominique Bouchet Tokyo」のエグゼクティブ シェフを任されることとなった。

伊藤 翔

伊藤 翔 Sho Ito
1989年、秋田県生まれ。高校卒業後、横浜の「霧む 笛てき楼ろう」にて7年間研鑽を積む。2015年に渡仏し、パリの「Dominique Bouchet」にて本場の味を学ぶ。16年、帰国後「Les Copains deDominique Bouchet」のオープニングスタッフに。翌年、シェフに就任。22年より現職。

 麗しく仕立てられた 「パルマンティエ ドゥ オマール」は、伊藤氏がパリでの修業時代に印象に残っている一皿であり「フランスで古くから愛されている料理を、ガストロノミー版にして表舞台に出し、継承していく」というブシェ氏の信念を象徴する料理でもある。「エストラゴンやアニスで清涼感を出したビスクソースは、オマールと煮詰めて絡めることでオマールの存在感をアップ。酸味を効かせたブールブランソースは、キャビアが塩味と深みを加えています。美しくもシンプルで、皿の上にのるものすべてに意味があります」。料理を説明する伊藤氏は非常に丁寧で、中でもソースを語る口調からは想いの深さが感じ取れる。「地味で丁寧な作業が生み出す、奥深い味わいのソースは、 皿の上の主役にも負けない、どんな付け合わせより最強の脇役。さまざまな食材とワインを結びつけて華やかなマリアージュを生み出す。ソースとはなんてロマンチックなのだろう」とはブシェ氏の言葉。料理を「Dominique Bouchet」の料理たらしめるのは、継承されるソースの存在だ。

 最後に、ブシェ氏に伊藤 翔という料理人について尋ねると、次のようなメッセージが寄せられた。「パリの『DominiqueBouchet』でおどおどしていた10年前を振り返ると、なんという変貌ぶりだろう。翔の信念、誠実さ、ぶれることのない夢が、現在の彼を作り上げた。繊細で緻密な仕事ぶりに、良い意味での負けず嫌いが表れる。持ち前の優しさ、そして、謙虚さと敬意を忘れず、地に足をつけて努力をすれば、必ずグランシェフの道が開ける」。

 私たちの前に置かれる一皿には、脈々と継承される技術と信条が潜んでいる。「Dominique Bouchet」を訪れる度に感銘を受けるには、単に美酒美食への賛美にとどまらず、その一皿が秘めた物語にも心が揺さぶられるからだ。

Dominique Bouchet Tokyo(ドミニク・ブシェ トーキョー)

Dominique Bouchet Tokyo(ドミニク・ブシェ トーキョー)
友人を自宅に招くようにお客様をレストランに迎えたい、という想いからパリのアパルトマンをイメージ。プライベート感を大切に配された客席には、凛とした非日常と心和む居心地のよさが共存する。

東京都中央区銀座1-5-6銀座レンガ通り福神ビル2F
Tel.03-6264-4477
水曜定休
12:00~15:30( LO13:30)、18:00~23:00( LO20:00)
ランチ1万1000円~、ディナー1万8000円~(サービス料12%別)


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