スイス・ルツェルンに拠点を置くカール F. ブヘラが、旅行に最適な腕時計「ヘリテージ ワールドタイマー」を発表した。どこか懐かしいデザインのこの腕時計は魅力的である。ムーブメントはペリフェラルローターを搭載し、COSC認証を受けたCal.CFB A2020を採用。直径39mmのケースはステンレススティール製、もしくはローズゴールド製(世界限定88本)だ。
“ジェット族”のための50年代の腕時計を、現代の技術を用いて復刻。自動巻き(Cal. CFB A2020)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径39mm, 厚さ10.25mm)。3気圧防水。価格要問い合わせ
[2024年12月5日公開記事]
50年代のワールドタイマーを現在の技術で復刻
カール F. ブヘラから「ヘリテージ ワールドタイマー」が発表された。この新作はカール F. ブヘラのアーカイブされたオリジナルモデルを、現代的に再解釈した腕時計である。とはいえ、若干の改良点を除き、オリジナルに忠実なデザインを採用したものだ。1950年代に発表されたオリジナルからは、留まるところを知らない楽天主義と、旅行への渇望という時代精神を感じ取ることができる。
時代の要請から生まれたワールドタイマー
その造形感覚は、同時代の建築に見受けられるジェットエージやグーギーと呼ばれるデザインと通じるところがあるだろう。前者はジェット旅客機による移動の時代に適したモダンなデザインであり、後者は当時の郊外のロードサイドで見受けられた、目を引く装飾が特徴的なデザインだ。その両者に共通する要素のひとつは、未来的な造形感覚である。20世紀半ば、原子力は飛躍的な生産性をもたらすと期待され、急速に発展する宇宙開発は、人々にやがて訪れる未来に楽観的な期待を抱かせていた。これらの造形感覚はその時代の産物なのだ。
ジェット機が登場する以前、地球は今よりもずっと広かった。地球を半周するだけでも何週間も必要としたのだ。ジェット機はこの状況を大幅に塗り替え、時間帯をまたいだ旅行は容易になり、そのスピードは以前とは比較にならないほどだった。
そうして複数の時間帯を認識できる腕時計の必要性が高まり、1950年代半ばにはデュアルタイム機構や、ワールドタイマー機構の開発が行われたのである。カール F. ブヘラのワールドタイマーは、9時位置にあるリュウズを介して、都市名が記されたディスクを動かし第二時間帯を表示させるという仕組みを採用したものだ。新作の「ヘリテージ ワールドタイマー」も、同様の機構を用いている。
新「ヘリテージ ワールドタイマー」の仕様
新作のケース径は39mmであり、防水性能は3気圧防水だ。ケース素材はステンレススティールとローズゴールドの2種類でのラインナップとなる。ローズゴールド製モデルの文字盤はサンレイ、もしくはヘアライン仕上げが施されたシルバーカラー文字盤であり、ローズゴールド製の細い針と、アプライドバーインデックスが配されている。ステンレススティール製モデルの文字盤はシルバーカラー、もしくはブラックカラーでの展開となり、それらに合ったロジウムメッキされたインデックスとの組み合わせだ。
ローズゴールドをケースに採用したモデル。自動巻き(Cal. CFB A2020)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径39mm, 厚さ10.25mm)。3気圧防水。世界限定88本。価格要問い合わせ。
文字盤中央には、オリジナルモデルにあったWATERPROOFと17 JEWELSの代わりに、CHRONOMETERと33 JEWELSと表記されている。また、巻き上げと時刻調整に用いる3時位置のリュウズと、9時位置の都市名ディスクを回転させるためのリュウズは人間工学に基づいたものに改良されている。
ディスク上に記された都市名はオリジナルとは異なり、入れ替えられてしまった都市もある。フランス・パリはスイス・ルツェルンに変更となり、イラク・バクダットはロシア・モスクワに変更となった。また、インドの都市名は消え、隣国のパキスタン・カラチとバングラデッシュ・ダッカへと変更。東アジアに目を向ければ、香港は北京へと変更になった。
金属製ストラップを備えたモデル。ステンレススティールケースを採用したモデルは、テキスタイル製ストラップも選ぶことができる。自動巻き(Cal. CFB A2020)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径39mm, 厚さ10.25mm)。3気圧防水。価格要問い合わせ
ストラップはレザー製ではなくテキスタイル製。おそらく皮革製品の利用に抵抗のある新たな顧客への配慮と考えられる。ステンレススティール製ブレスレットを選択することも可能だ。
ペリフェラルローター搭載ムーブメントCal.CFB A2020
ヘリテージ ワールドタイマーに搭載されるムーブメントは、COSCの認証を受けた自社製のCal.CFB A2020を採用。外周部分に配されたペリフェラルローターを搭載したムーブメントだ。このためにムーブメントが薄くなっただけでなく、ブリッジの可視部分は広がった。なお、パワーリザーブは約55時間である。
カール F. ブヘラのネオ・ビンテージ路線
この新作はカール F. ブヘラの象徴的なアーカイブモデルの復刻である。同じデザインテイストの「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」と合わせて、ネオ・ヴィンテージ市場での同ブランドの立ち位置を確かなものにしたと言えるだろう。