オメガ、空へ再び―小ぶりでプロユースに向けた「スピードマスター パイロット」が登場!

2024.12.10

航空界と宇宙探索の歴史に深く関わりながら進化を続けてきた、オメガの「スピードマスター」。新たに発表された「スピードマスター パイロット」は、そんなオメガの歩みをさらなる高みへと押し上げるモデルだ。これは1957年に登場した初代スピードマスターのデザインを受け継ぎつつ、最新技術と機能性を融合した野心作。その狙いは、パイロットにとっての欠かせないパートナーとなることだ。

オメガ スピードマスター パイロット

オメガ「スピードマスター パイロット」
自動巻き(Cal.9900)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40.85mm)。100m防水。146万3000円(税込み)。
吉江正倫:写真
Photographs by Masanori Yoshie
広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[2024年12月10日公開記事]


初代スピードマスターへのオマージュ

 新作「スピードマスター パイロット」のデザインは、1957年のスピードマスターに範を取った「スピードマスター '57」にほぼ同じである。加えてベゼルには、初代スピードマスターの象徴である「ドットオーバーナインティ(DON)」と「ダイアゴナルトゥセブンティ」のタキメーター採用することで、ファーストモデルとのつながりを強調した。

オメガ「スピードマスター '57」Ref.332.10.41.51.01.001
手巻き(Cal.9906)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40.5mm、厚さ12.99mm)。5気圧防水。146万3000円(税込み)。

 ケースサイズはスピードマスター '57の40.5mmに対して、わずかに大きな40.85mm。しかしムーブメントは、スピードマスター '57が載せた手巻きのCal.9906ではなく、自動巻きのCal.9900に改められた。オメガはすでに自動巻きのCal.9900系を搭載した「スピードマスター レーシング」をリリースしているが、ケース径は44.25mmと、お世辞にも小さくない。大きな自動巻きクロノグラフにもかかわらず、ケースをコンパクトに改めたのがスピードマスター パイロットと言える。また、初代スピードマスターへのオマージュなのか、裏蓋もスピードマスターの象徴であるシーホースのメダルが刻印されたソリッドバックに変更された。

 さらに防水性能は、スピードマスター '57やスーパーレーシング、ムーンウォッチの2倍以上となる100m(330フィート)となった。直径32.5mmのムーブメントを40.85mmのケースに収めて、100m防水はかなりの高性能だ。

オメガ スピードマスター パイロット

ケースバックのメダリオンは、はかつてのスピードマスターを思わせる、“SPEEDMASTER”のロゴとシーホースのみの、シンプルな意匠となっている。


パイロットのニーズに応えるデザイン

 この時計の特徴は、小さなケースに加えて、パイロットウォッチらしさを強調したデザインにある。とりわけ目を引くのが、航空機の操縦席からインスパイアされたスモールセコンドだ。3時位置の60分・12時間表示の同軸積算計はインジケーターを思わせる仕上がりとなっており、9時位置のスモールセコンドにはターゲットビューをイメージしたブルーの水平線が描かれている。さらに、オレンジ色の飛行機を模したクロノグラフ針がアクセントを加えている。今のオメガらしく、それぞれの色使いは非常に良好である。表面が均一で、しかも発色が鮮やかな文字盤は、品質の改良に努めてきたオメガならではの個性と言える。

オメガ スピードマスター パイロット

3時位置のインダイアルは12時間積算計と60分積算計が同軸となっている。9時位置はスモールセコンドだ。

 もっとも、デザインだけでないのはさすがオメガだ。強い光源下でも視認性を高めるために、ケースの上面やベゼルの外周、プッシュボタンまですべてマット仕上げに改めている。従来のオメガならば、プッシュボタンはポリッシュにしていたが、本作では全面ツヤ消しに変更された。文字盤も同じくマット仕上げ。下地のエンボス処理を強くすることで、やはり強い光源下でも白濁しにくいよう改められた。文字盤のブラックはガルバニック加工、時分針とクロノグラフ秒針には、PVDコーティングのマットブラックを施している。

オメガ スピードマスター パイロット

従来のスピードマスターよりも、蓄光塗料の占める割合が大きい時分針。また、クロノグラフ秒針の先端には、ニス塗りされたオレンジカラーの飛行機があしらわれている。

 針とインデックスに施されたスーパールミノバも今までとは大きく異なる。太く視認性が高いのは、ルミノバを流し込むのではなく、ルミノバのブロックを削り出して、インデックスと針に接着するためだ。塗りに比べて体積が大きいため、理論上は発光量が大きく、発光時間も長くなる。プレスリリースが説明するとおり、夜間飛行中でも、この時計は極めて良好な視認性をもたらすだろう。


使い勝手に優れる同軸積算計

 搭載するコーアクシャル・マスター クロノメーターCal.9900は、METAS認証を受けた自動巻きクロノグラフである。最低1万5000ガウスもの耐磁性能を持つ上、ショックに強く、等時性の高いシリコン製のヒゲゼンマイを持つこのムーブメントは、コックピットや宇宙空間といった過酷な環境でも信頼性を発揮する。加えて、12時間と60分の積算計を同軸で配置することで、高い視認性を持つのも特徴だ。一目見て、時間単位で計測時間を把握できるのは、同軸積算計を持つCal.9900系の大きなメリットである。


意外にも軽快な装着感と多様性

オメガ スピードマスター パイロット

直径40.85mmと、スピードマスター '57よりわずかに大きい程度だが、厚みのあるケースを持つ。

 サイズをコンパクトにまとめ、しかし自動巻きのCal.9900を搭載した「スピードマスター パイロット」は、ヘッドの重い時計である。しかし、装着感は意外と悪くなさそうだ。少なくとも慣れれば使える着け心地と言えるだろう。加えてブレスレットには、オメガ独自のコンフォート・リリース・アジャストメント・システムが備わっている。同梱されたケブラーで補強されたグレーのNATOストラップを使えば、より一層軽快な着け心地が楽しめるだろう。ケブラーの補強は過剰すぎるほどだが、過酷な環境を考慮したのだろう。


オメガと航空界の深い絆

オメガ スピードマスター パイロット

スピードマスター '57と異なる仕様として、ベゼルの「TACHYMETRE BASE 1000」がオレンジに彩られていることが挙げられる。

 オメガが航空界でその名を轟かせたのは、第二次世界大戦中のこと。オメガは英国国防省に11万個以上の時計を納入し、空軍や海軍のパイロットを支えた。中でも耐磁性に優れた「CK2292」は、スピットファイアやハリケーンを操縦するパイロットたちの間で高い評価を受けた。評価を決定付けたのは、1957年の初代スピードマスターである。このモデルは宇宙飛行士だけでなく、アメリカ空軍のパイロットたちに愛用され、それは1969年の「フライトマスター」に結実した。同年、コンコルドの初飛行が行われた際には、オメガの計時機器が複数のコンコルドに標準装備されたことも、オメガと航空界の深い絆をうかがわせるものだ。


パイロットだけでなく、普通に使える時計

 新しい「スピードマスター パイロット」は、オメガらしい機能性を強調しつつも、良質なツールウォッチとして仕立てられたモデルだ。とりわけ、直径40.85mmという相対的には小ぶりなケースは、大きく重いCal.9900搭載機を避けてきた日本のユーザーにもアピールするはずだ。また10気圧という防水性能も、日本のユーザーには歓迎されるだろう。パイロットや冒険心に溢れる人々だけでなく、良質なツールウォッチが欲しい人に向くこのモデルは、オメガの今の底力を示すタイムピースなのである。



Contact info: オメガ Tel.0570-000087


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