セイコー“ツナ缶”が愛される理由。ユニークなデザインと高性能の秘密

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2025.02.04

セイコーのダイバーズウォッチのひとつ、通称“ツナ缶”は、そのユニークなデザインと高い性能から、長年にわたり多くの時計愛好家に支持されてきたモデルである。この愛称は見た目に由来しつつも、プロフェッショナル仕様の堅実な性能が裏付ける信頼性と相まって、ブランドの象徴的存在となった。本記事では、ツナ缶の魅力を歴史や設計思想、進化の過程からひもとき、時計選びに役立つ情報を提供する。

セイコー ツナ缶


セイコーの“ツナ缶”とは? ユニークな愛称の由来

 セイコーの“ツナ缶”という愛称は、その独特な外観に由来している。ケース外側を囲むプロテクターが、まるで缶詰のツナ缶を連想させる形状であることから、時計愛好家たちの間で自然とこの名が定着したのだ。

 この特徴的なデザインは単なる装飾ではなく、機能性を重視した設計の産物である。外胴プロテクターと呼ばれるこのリングは、ケースを保護し耐久性を高める目的で取り付けられている。

 セイコーがこのモデルを初めて市場に送り出したのは1975年。プロフェッショナルダイバーが求める過酷な環境下での使用に応えるため、外胴プロテクターを含む耐衝撃構造を採用し、優れた信頼性を提供した。結果、このユニークな時計はその愛称だけでなく、時計業界全体からも評価されることとなった。

ツナ缶誕生の歴史と進化の過程

セイコー「プロフェッショナルダイバー600m」6159-7010

1975年に登場した、世界初のチタン製ワンピースケースを搭載した「プロフェッショナルダイバー600m」6159-7010。長時間に渡る飽和潜水に耐え得る安全性、耐久性を実現。このモデルには外装だけでも、特許や実用新案、意匠登録された多数の独自技術が採用されている。

 ツナ缶が誕生した背景には、深海探査や飽和潜水といった特殊な環境下での使用に対応する時計を開発したいというセイコーの挑戦があった。1975年に発売された初代モデル「プロフェッショナルダイバー600m」6159-7010は、600m防水性能を備えた当時としては画期的なダイバーズウォッチであった。

 その後もセイコーは、時代の進化に合わせてツナ缶の技術や性能を向上させてきた。そして、ツナ缶は単なるダイバーズウォッチに留まらず、セイコーの技術力を象徴する存在となっている。

 現在では、一般ユーザーにも使いやすい多様なバリエーションが展開されており、プロフェッショナルユースと日常使いの両方で高い評価を受けている。このように、ツナ缶は時代の変化に柔軟に適応しつつ、常に進化を遂げてきた時計であると言える。

ダイバーズウォッチとしての設計思想

 ツナ缶はその名に象徴される外胴プロテクターをはじめ、ダイバーズウォッチとして徹底した設計思想を反映している。特に、防水性能と耐久性の向上において、このモデルは群を抜いている。プロテクターリングは、ケース全体を衝撃から守るだけでなく、深海での高い圧力にも耐えうる頑丈さを提供する。この工夫により、時計内部への水や塵の侵入を防ぎ、過酷な環境下での使用において信頼性を確保している。

 さらに、視認性もツナ缶の特徴である。ルミブライトを使用した針やインデックスは、暗所でも一目で時刻を確認できるほどの明るさを誇る。これにより、深海だけでなく、夜間のアウトドア活動や災害時の使用にも適していると言える。また、ケースサイズが大きめであるにもかかわらず、着け心地にも配慮されており、多くのユーザーから高い評価を得ている。

 こうした設計思想は、単なる機能の追求に留まらず、使用者の安心感を提供することに重点を置いている。ツナ缶が、ダイバーだけでなく、冒険家や時計愛好家にも支持される理由がここにあるのではないだろうか。

他のダイバーズモデルとのデザインの違い

外胴プロテクター

時計の側面を覆うツナ缶を思わせる特徴的な外胴プロテクターにより、高い耐久性を誇る。

 ツナ缶は、セイコーのダイバーズウォッチシリーズの中でも、他のモデルとは一線を画す独特なデザインが特徴だ。特に注目すべきは、ケースを取り囲む外胴プロテクターだ。このパーツは、ケース全体を衝撃から守るだけでなく、視覚的なインパクトも大きい。ダイバーズウォッチの中でも機能性を優先したデザインでありながら、時計としての美しさを損なわない点が人気のひとつである。

 一方、一般的なダイバーズウォッチは、丸みを帯びたケース形状に加え、薄さや軽量性が求められることが多い。それに対し、ツナ缶は大きめのケースと厚みのあるプロテクターリングを採用しており、視認性や耐久性を重視している。また、リュウズを4時位置に配置することで、手首の動きに干渉しにくい構造となっている。この設計は、プロフェッショナルダイバーが長時間使用する際の快適さを考慮したものであり、実用性を最優先したデザインと言える。

セイコー ツナ缶

初代ツナ缶から継承されている4時位置のリュウズは、装着時に手首を動かしても甲に当たりにくく、非常に実用性に優れている。

 さらに、一般的なダイバーズウォッチがスリムなベゼルを採用することが多いのに対し、ツナ缶はしっかりとした厚みがあり、操作時のグリップ感が向上している。これにより、グローブを着用した状態でも扱いやすくなっており、プロフェッショナルの使用を前提とした設計思想が垣間見える。このように、ツナ缶は他のモデルとは異なる独自性を備えつつも、実用性に根ざしたデザインを追求しているのだ。

セイコー“ツナ缶”のケース構造

外装は気密性と水密性に優れたL字型ガラスパッキン、Oリング(オーリング)からなるリューズパッキンを縦横の四方向から押圧するリューズツインサイドシールド構造、ねじリングガラス固定構造など、密閉度を高め、過酷な環境下に耐えうる防水性・安全性を実現している。

クォーツモデルから現行モデルへの展開

 ツナ缶は、初期モデルからクォーツ化を経て、さらに技術革新を重ねて進化してきた。1978年に初めてクォーツ式の飽和潜水仕様の600m防水ダイバーズが誕生し、機械式時計に比べて高精度である点が評価された。このムーブメントは、長期間にわたり安定した性能を発揮するという特長がある。クォーツモデルは定期的なぜんまいの巻き上げが不要で、深海での過酷な条件下でも年差レベルの正確な時刻を保持することから、プロフェッショナルダイバーだけでなく、一般ユーザーにも支持された。

 こうしてツナ缶は、プロフェッショナル仕様から日常使いまで対応可能なモデルとして進化してきた。これにより、時計愛好家だけでなく、多様なライフスタイルを持つ人々にも広く受け入れられている。その一方で、初代モデルのデザインや機能を踏襲した復刻版も人気を博しており、歴史的価値を再認識するきっかけとなっている。このように、ツナ缶はセイコーのダイバーズウォッチシリーズの中でも、技術と伝統の融合を体現する存在である。

エイプリルフールのユーモア溢れるツナ缶ネタ

セイコー ツナ缶

2017年のエイプリルフールにセイコーウオッチは、時計にツナを内蔵した“ツナ缶”時計を発表。さまざまな企業がウソネタを披露した中で、Webメディアが記事に取り上げた“ネタNo.1”となり、話題となった。

 セイコーのツナ缶は、独特のデザインと実用性で高い評価を受けているだけでなく、その愛称も時計愛好家の間で親しまれる一因となっている。この愛称は、セイコー自身も公式に認めており、ブランドとしてもツナ缶のユニークな側面を積極的にアピールしている点が興味深い。

 その一例として挙げられるのが、2017年のエイプリルフール企画だ。この年、セイコーは公式に「究極のダイバーズウオッチ『ツナ缶』」を発表し、時計業界やファンの間で話題となった。この企画では、ユーモラスな商品紹介が行われ、時計そのものが缶詰として販売されるという、架空の設定が披露された。この取り組みは、セイコーが時計製造における真摯な姿勢だけでなく、遊び心やクリエイティビティも持ち合わせていることを象徴した出来事だった。

 このエイプリルフールの取り組みを通じて、ツナ缶の親しみやすさがさらに強調される結果となった。こうした活動は、セイコーがブランドとしての信頼性を損なうことなく、愛好家との距離を縮めるきっかけを作る良い事例と言えるだろう。このように、ツナ缶という時計は、性能やデザインだけでなく、その名称に込められたストーリーによっても、多くの人々に愛され続けているのである。


セイコーのおすすめダイバーズモデル

 セイコーのツナ缶は、その独特なデザインと高い性能によって愛されているシリーズである。セイコーにはほかにも高性能なダイバーズモデルが多く存在している。

 そこでここでは、Ref.SBBN047とRef.SBDX023について詳しく紹介しよう。これらは、それぞれ異なる特徴を持ちながら、セイコーの技術力とデザイン哲学を体現している。

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBBN047

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」SBBN047

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBBN047
クォーツ(Cal.7C46)。7石。Tiケース(直径49.4mm、厚さ16.3mm)。1000m飽和潜水用防水。39万500円(税込み)。

 Ref.SBBN047は、1000mの飽和潜水用防水性能を備えたプロフェッショナル仕様のダイバーズウォッチである。このモデルの最大の特長は、外胴プロテクターを採用したユニークなデザインと、その実用性の高さにある。ケース素材にはチタンを使用し、セイコー独自のスーパーブラックダイヤシールドコーティングが施されている。これにより、耐久性が向上すると同時に、軽量化も実現している。

 ムーブメントは、高精度で定評のあるCal.7C46を搭載している。このクォーツムーブメントは平均月差±15秒の精度を誇り、約5年の電池寿命を持つ。また、カレンダー機能を備えており、日常使いにおいても非常に便利である。サファイアガラスが採用されているため、傷つきにくく、視認性も良好である。

Cal.7C46

Cal.7C46は、セイコー初のクォーツダイバーズ「1978 クオーツダイバーズ」に搭載したCal.7549から、さらなる進化を遂げたクォーツムーブメントである。優れた耐磁性能を持ち、約5年の電池寿命、平均月差±15秒の高精度、高トルクで夜光の載った太い時分針を駆動する。

 デザイン面では、49.4mmという大きなケースサイズが目を引くが、チタン素材の採用により、重量は118.5gと軽量である。ルミブライトを使用した針やインデックスは、暗所での視認性を確保しており、深海での使用にも対応可能である。性能とデザインを両立させたモデルとして、プロフェッショナルダイバーから一般層まで幅広い層に支持されている。

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBDX023

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」SBDX023

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBDX023
自動巻き(Cal.8L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径44.3mm、厚さ15.4mm)。300m飽和潜水用防水。35万2000円(税込み)。

 Ref.SBDX023は、セイコープロスペックス「マリーンマスター」シリーズのひとつであり、300mの飽和潜水用防水性能を持つダイバーズウォッチである。このモデルは、ステンレススティールケースとセラミック製ベゼルを組み合わせた堅牢な作りが特徴で、傷つきにくく、美しい外観を長く維持する。

 ムーブメントは、セイコーの高級機械式ムーブメントであるCal.8L35を搭載している。このムーブメントは、約50時間のパワーリザーブを持ち、高い精度と耐久性を兼ね備えている。ねじ込み式リュウズや逆回転防止ベゼルといったプロフェッショナルダイバーズウォッチとしての基本機能も完備しているので、過酷な環境下でも信頼できる時計である。

 デザイン面では、ブラックの文字盤に大きなルミブライトを施したインデックスと針を配置し、暗所での視認性を確保している。ケースサイズは44.3mm、重さは約222gと存在感のある設計ながら、バランスの取れた装着感を実現している。また、ステンレススティール製のブレスレットにはダイバーエクステンダー方式の三つ折れプッシュ式中留が採用されており、実用性が高い。

 Ref.SBDX023は、セイコーが培ってきたダイバーズウォッチの伝統と最新技術を融合させたモデルである。その性能やデザインは、プロフェッショナルダイバーのみならず、時計愛好家にも高く評価されている。


ファンに愛されるセイコーの“ツナ缶”を手に入れよう

 セイコーのツナ缶は、独特なデザインと高性能を兼ね備え、時計愛好家からプロフェッショナルまで幅広い層に愛されているダイバーズウォッチである。その名の由来ともなった外胴プロテクターを中心に、耐久性、視認性、防水性能など、過酷な環境にも耐えうる機能が凝縮されている。

 ツナ缶は、セイコーの革新性と技術力を象徴する存在であり、その一本を手にすることで、日常や特別なシーンでのパートナーとして長く愛用できるだろう。



Contact info:セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


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