2024年新作モデルから、傑作クロノグラフウォッチを5本厳選!

2024.12.15

2024年新作モデルのうち、特筆すべきクロノグラフを5本選出して紹介する。完成度の高い新型ムーブメントを搭載するモデルや、人気の高い歴史的名作を基としたモデルばかりであり、いずれも魅力的なものに仕上がっている。

佐藤しんいち:文
Text by Yukaco Numamoto
[2024年12月15日掲載記事]


ヘリテージを再解釈したドレッシーな新作 カルティエ「プリヴェ トーチェ モノプッシャー クロノグラフ」

 カルティエの長い歴史の中で数多く存在するヘリテージを基とした「カルティエ プリヴェ」コレクションも今回で8作目となる。今年は、1912年に登場した「トーチュ」を現代的に再解釈したモデルが発表された。

 今般取り上げるのは「プリヴェ トーチュ モノプッシャー クロノグラフ」だ。掲載する18Kイエローゴールドモデルのほか、プラチナ製モデルが同時に発表されている。

 トーチュのモノプッシャークロノグラフモデルは、1998年に「コレクション プリヴェ カルティエ パリ」として発表された歴史を持つ。本作は、この1998年のモデルのデザインを踏襲しつつ、クラシカルなデザインにまとめられている。

 文字盤はグレイン仕上げで、アイボリーカラーをベースとする点がクラシカルな印象を強めている。同時に発表されたプラチナケースモデルはシルバーオパリン文字盤でモダンなテイストであったのと対照的だ。

 ケースおよび文字盤はシンメトリーな仕立てで、3時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンドを備える。搭載される手巻き式クロノグラフムーブメントは新規設計のCal.1928 MCで、トーチュのスタイリングを守るために薄く設計されている点が特徴である。結果、本作は時計の仕上がり厚さが10.2mmに抑えられている。

カルティエ プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ

カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」
手巻き(Cal.1928 MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KYGケース(縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。778万8000円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00


初めて宇宙へ携行されたオメガを復刻した「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」

 クロノグラフモデル全体の中でもアイコンのひとつとして挙げるべきオメガの「スピードマスター」。宇宙へ携行され、数々のミッションを支えてきた実績を考えれば、その人気も当然のものである。

 今般発表された「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」は、初めて宇宙へ携行されたオメガであるスピードマスターのセカンドモデル「Ref.CK 2998」を復刻したモデルだ。同名のモデルは2012年に発売されていたが、惜しまれつつも生産終了となっており、この度、コーアクシャル脱進機を搭載したマスター クロノメータームーブメントを搭載して再登場することとなった。

 本作のデザインは、ディティールに至るまでオリジナルのRef.CK 2998に忠実である。リュウズガードを持たないシャープでシンメトリーなケースシェイプに、CVDによるブルーグレーダイアルが組み合わされる。12時位置の立体的なロゴと、アルファ型時分針、焼け色を思わせるインデックス、ヘサライトクリスタルを彷彿とさせるドーム型のサファイアクリスタル風防などが、オリジナルモデルの趣を伝えている。

 搭載されるムーブメントのCal.3861はマスター クロノメーターであり、1万5000ガウス以上という非常に高い耐磁性能に加え、磁場の中、姿勢変化、巻き上がり状態からパワーリザーブが約1/3となった状態など、さまざまな条件での精度検定が行われたうえで出荷されている。かつてのミッションを支えたアイコンのルックスに、現代基準で最高峰の信頼性を備えるモデルが本作なのだ。

スピードマスター ファースト オメガ イン スペース Ref.310.30.40.50.06.001

オメガ「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」Ref.310.30.40.50.06.001
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径39.7mm、厚さ13.4mm)。50m防水。121万円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087


原点回帰したデザインに現代的なブレスレットモデルが追加 ブレゲ「タイプ XX 2067」

 2023年にオリジナルモデルのデザインに回帰して刷新されたブレゲのパイロット用クロノグラフは、本年にバリエーションを増やしてラインナップの拡充が図られている。今回紹介するブレスレットモデルもそのひとつだ。

 現在のブレゲのパイロット用クロノグラフは、1955年から1959年にかけてフランス空軍に納入されたモデルの復刻となる「タイプ 20 2057」と、民生用として販売されたモデルをベースとした「タイプ XX 2067」に大別される。前者はふたつのインダイアルにペンシル型針を持つことが特徴で、後者は3つのインダイアルにアルファ型の時分針、12時間表記を備えた両方向回転ベゼルを有する点が特徴である。

 ムーブメントは、フランス空軍の要件かつ機能的なアイコンとなっていたフライバック機能の搭載を前提として、2023年の刷新にあたって新開発されたCal.728(タイプ 20はCal.7281)だ。フライバック機能とは、クロノグラフによる計測中に機能を停止させずにリセットさせ、再計測を可能とするもので、高速で飛行する航空機においてパイロットが自機位置を割り出すために必須とされていた。

 タイプ XX 2067は、3時位置に15分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを備える。特に15分積算計は、タイプ XXの第2世代以降に加えられたもので、左右非対称かつ3分毎に大きく目立つインデックスが与えられた特徴的なデザインを持つ。その内部に搭載されるムーブメントは現在のブレゲらしい先進的な仕立てで、シリコン製のヒゲゼンマイ、ガンギ車、アンクルによって磁気の影響を受けにくくし、かつコラムホイールにブラックのDLCコーティングを施して外観を引き締めつつ、作動性を高めている。

ブレゲ タイプ XX 2067

ブレゲ「タイプ XX 2067」Ref.2067ST/92/SW0
自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。336万6000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211


「ロンジン スピリット フライバック」にエレガントなマットグリーンカラーが追加

 フライバック機能を語るうえで、ロンジンの存在を外すことはできない。ロンジンは1925年という早い段階からフライバック機能付きのクロノグラフを製造し、1936年にその特許を取得した歴史を持つ。今般取り上げるのは、この歴史をトリビュートし、往年のクロノグラフモデルを思わせるデザインを持つ「ロンジン スピリット フライバック」の中で、マットグリーンをベースに18Kイエローゴールドを組み合わせたモデルだ。

 文字盤は中心に向かってイエローの色調を持つマットグリーンのグラデーションを帯びており、リュウズやプッシャーには18Kイエローゴールドが用いられ、華やかさが加えられている。インデックスを含む各種表記と針もイエローゴールドカラーとなる。

 アラビックインデックスやペンシル型針、リュウズガードを持たないケースにより、往年のクロノグラフモデルを思わせるデザインにまとめつつ、セラミックス製のベゼルインサートなど、現代的な質感が加えられている。また、フライバック機能を持つクロノグラフムーブメントのCal.L791.4は、シリコン製ヒゲゼンマイに約68時間のパワーリザーブ、C.O.S.C.公認クロノメーターと、現代基準で高い実用性を備えている。

ロンジン「ロンジン スピリット フライバック」Ref.L3.821.5.53.2
自動巻き(Cal.L791.4)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SS×18KYGケース(直径42mm、厚さ17mm)。10気圧防水。95万4800円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350


クロノグラフの傑作「903」が刷新! 「903.St.B.E.Ⅱ」として登場

 プロフェッショナルなパイロット向けウォッチの中でも、回転計算尺を備えるナビゲーション・クロノグラフの傑作であるジンの「903」シリーズが本年刷新された。903シリーズは、発売以来ベースデザインを変更せず、長きに渡ってラインナップされてきたコレクションであり、ジンおよび時計業界の歴史と深く関わる特別なモデルとして人気を博してきた。

 特筆すべきは、刷新にあたり、よりオリジナルモデルに近づいた点だ。初代から継承されてきた回転計算尺は、時間や距離、航空機が飛行する際の燃料消費量を計算を可能とするもので、機材が未発達であった時代に、多くのパイロット達を支えてきたものだ。従来モデルでは、回転計算尺と防水性能を両立させるために回転計算尺を操作するリュウズが時刻合わせ用リュウズと別に用意されていたが、新作モデルではオリジナルにより忠実な、ベゼル操作によるものへと改められた。この変更により、ケース外部から風防内の回転計算尺を操作することとなり、防水性能を確保しにくい構造となったが、ケース設計の刷新によってスムーズな操作性を実現しながら20気圧防水を実現している。また、外周部に凹凸を設けたベゼルも初代から受け継がれてきたアイコンのひとつである。

 今回の刷新では、レギュラーモデルとしてブラックモデルの「903.St.Ⅱ」とダークブルーモデルの「903.St.B.E.Ⅱ」が用意された。掲載している903.St.B.E.Ⅱは、彩度を抑えたダークブルーと、回転計算尺の外周をアイボリーにまとめ、わずかに焼けたようなカラーの蓄光塗料を用いることでクラシカルな印象にまとめている。インデックスと時分針は、高濃度の蓄光塗料を使用したハイブリッド・セラミック製で、立体感を持ちつつ高い輝度で発光し、質感と視認性を両立している。

ジン「903.St.B.E.Ⅱ」

ジン「903.St.B.E.Ⅱ」
自動巻き(LJP L110)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.5mm)。20気圧防水(DIN8309準拠)。ホースレザーストラップ仕様:77万円、ブレスレット仕様:84万1500円(ともに税込み)。(問)株式会社ホッタ Tel.03-5148-2174



【時計オタク向け】現代クロノグラフの進化を、歴史的ムーブメントとともに理解する

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